1 空蝉

夢と違和感

  ○ ○ ○


 スマートフォンからいつもの音が流れる。目覚ましだ。

 いつもの様に布団を出て、いつもの様に着替え、鞄を持ってダイニングへと向かい、いつもの様に朝食を食べる。歯を磨いたら、いつもの様に外に出て自転車に乗り、駅へと向かう。駅に着くといつもの友人がホームに立っている。その友人とは、同じ学校の同じクラスに所属している浅見あざみ 俊人としひとである。「なぁ、俊人?」と呼ぶと。――何? と言ったような顔で、こっちを向く。

「今日さぁ、変な夢見たんだよ」

俊人は――へぇ と言った目でペットボトルのお茶を飲みながらこっちを見て、ペットボトルのキャップをまず閉めてから口を開いた。

「んで、どんな夢見たんだよ」

「うーんと、確か……そうだ! なんか、図書館? みたいな場所にいてさ、本棚の前で本読んでたの。そしたらなんか紳士って感じの奴がなんか話しかけてきたんだよ」

「へぇ、その紳士はなんで言ってたの?」

正直、なんて言われたのかは、曖昧でよく覚えてはいない。ただ、これだけは覚えている。

「確か、夢で読んでた本の内容に関する事を訊かれた。あと、俺の名前呼ばれた」

「あとは覚えてないの?」

「うーん、雲だか絵の具だかそんな感じだった気がする」

と言い俊人の方を向く、すると俊人はメモを取っていた。

「え? 俊人? なんでメモなんて――」

「あぁ、ネタ帳だよ。ほら、絵の」

 そういえば覚えがある。確か俊人の夢は、芸術家だったっけな。

「白本、夢の事何か思い出したら言ってね。なんか面白そう」


――俊人の雲、今は橙色かな?

 違和感を感じた。違和感どころの話じゃない。雲? 色? なんの事だ? なんで俺はそんな事……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る