葉桜の君に~虹を渡れば~

水木レナ

プロローグ

「そうか、おまえが自分で決めたことだ。それが大事だ、桜子」

 先生は言ってくれた。

 私は一生涯、それを忘れえない。

 人生でただ一回、おそらく初めての決意に、そういってくださったのだ。

 今、私は夢への階段を昇ろうとしている。

 連絡はまだ来ない、こない。

 奇跡は起こらない、夢はいつか醒める。

 かつては、そう自分に言い聞かせてきた言葉。

 いいや、だからこそ、私は夢をみる。

 ほんのわずか、絶望に塗りこめられた雲間から見える、その光をとらえてみせる!

 私は、私は……この一瞬に、命を注ぐ。

 どろにまみれようとも、地べたをはいずろうとも。

 私は血と汗を知らない人間にはなるまい。

 締め切った窓の外に見えるであろう、散り急ぐ花は見ない。

 ただ力強く、この背を押してくれた、あの手を信じる――

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