夏美とデート②

 俺が夏美をデートに誘い訪れたのは、高校生ならほとんど知ってる思うが、ロンドワンという大型レジャー施設である。


 ここにはUFOキャッチャーやメダルゲームは勿論のこと、カラオケやボーリングが出来る場所で一日中過ごしていられる。


 他の店舗には、バスケやサッカーなどほかに出来る施設があるらしいが、今日は近場の所にしたのだ。


「ねぇねぇ、このぬいぐるみ可愛いと思わない?」


 夏美がUFOキャッチャーの景品を見て俺に問いかけてくるが、可愛いのは夏美の方なのだが口には出さない……出せない。


 そんな俺は、冷静さを装ってすまし顔で夏美の問いに答えた。


「どれどれ、可愛いと思うけど春夏には敵わないな」

「もう、ハルったら親バカみたい。今頃、鳴いちゃってるかな」


 もう、夏美が天然級の発言をしてくるのには十分に慣れたのでいいか……って思う訳ないだろうが!


 周りの人達が『え、嘘でしょ』『あり得ないでしょ!?』など驚愕の表情を浮かべているのは解っていて、それが誤解なのも判っている。


 今の発言を周りが言葉にするならば『子供を蔑ろにして夫婦で遊ぶなんて』って思ってそうで怖い。


 いや、景品はぬいぐるみだから、そんな風に思うのは凛姉くらいだろうな………この場にいなくて本当に助かった。


「ねぇ、ハル?」

「どした、何か欲しいものでも見つけたのか?」

「う、うん。これなんだけど。ハルキの相手にと思って」

「なぁ、ハルキってまさか……」


 この流れ……確実にそうなのは判っているけど聞かずにはいられないのは何故だろう……怖いもの見たさなのか?


「前にハルがくれたぬいぐるみだよ。名前があった方が愛着が出ると思って♪」


 か、可愛すぎだろうーーーー!何この子、天使なの?


「だからね、ハルキの隣にこの子がいたらいいなって思って」


 そんなことを言われたら、男は喜んで『任せて下さい』と口をそろえて言うだろうが、俺はそうはいかない。


「よし、俺が取ってやる」


 む、無理に決まってるじゃん!今の夏美には拒否をさせてくれないほどの笑顔があり、俺に期待が込められているのが一目で分かるくらいに。


 結果、笑顔が見たかったのか運が良かったのかは分からないが、一発で取れてしまい、周りが無駄に騒いでいた。


「ハル、ありがとう♪一発で取るなんて凄いね」

「偶然だよ、俺だってミスったって思ったらアームがあんなところに引っ掛かるんだから」


 一発で取れたのは、本当に偶然で俺自身が取れるとは思ってなかったが、アームが変な所に引っ掛かって弾いたところに欲しいぬいぐるみに思いっきり当たり、そのまま落下しただけの事。


 けど、取れたことには変わりないので安堵した俺もいた。


 夏美は、俺が取ったぬいぐるみを大事に抱えていて、まともに夏美を見るのが辛かったのは、嫌ではなくて見ると心臓の鼓動が異常に早くなるからである。


 デートに来て、メダルゲームをするという阿呆なことはしたくないので、エレベーターで3階に上がって、記入シートに必要事項を書いていくと。


「何度か来てるだけあって書くの早いね」

「別に適当に書いてるだけだよ、これでよしっと」


 記入欄といえば名前くらいなので、誰でも出来ることなので早いものない。


 記入したシートを受付に持って行くと、少しだけ待つようなので周りを見て回っていると夏美があるものに気付く。


「ねぇ、あれってなに?」

「あれはダーツだな。俺も何回かやってみたことはあるけど中々面白かった」

「そうなんだ」


 少しだけ、投げている人達を見ていると掲示板に自分達の番号が表示されたので、再度受付を向かう。


「はい、ご来店ありがとうございます。当店のご利用は初めてですか?」

「いえ、もう何度も来てるので」


 店員さんから、番号プレートを受け取るとボウリングをするための靴を選ぶ。


「夏美、自分のサイズに合う靴の所でこうやってボタンを押せば出てくるから」


 俺は、夏美にやり方を教えてプレートに掛かれている番号の場所まで向かうと夏美は、俺にこんなことを言ってくる。


「ハル……これ、投げて届くの?」

「俺も初めてボウリング場に来た時は同じこと思ったよ」

「思いっきり投げないと届かないよね……」


 全く、投げる前から弱気というか暗い顔はやめて欲しい……まぁ、あれが出れば笑顔になるのは判っているんだけどな。


 暗い顔を笑顔に戻すために、俺は優しくこう説いた。


「誰って初めてはそうゆうもんだよ。大丈夫、ちゃんと教えるから」

「分かった、ハルを信じる」

「ありがとう」


 貴重品だけを持って、次に向かったのは投げる為に必要なボールである。


 ボールには、5ポンド~15ポンドまであって子供~大人という形となるが、持ってみて自分が辛くないボールがその人の基準となる。


 因みに、俺が選んだのは15ポンドで重さで言えば6kgほど。


 俺が選び終わり、一度ボールを自分達の場所の置き場に置き夏美の所へと戻ると。


「ねぇ、君の友達も一緒に俺達とボーリングでもしようよ、いいでしょ?」


 ……またかよ……夏美と一緒にいると毎回の流れになりそうで怖いが、今一番怖がっているのは夏美なので、俺は。


「あの、俺の連れに何か御用ですか?ナンパしてるように見えたけど」

「なんだお前、邪魔する……と……」

「ん、なんか言ったか?早く行かないと上から投げつけるぞ」


 俺は、15ポンドを肩に担ぎあげていて、いつでも投げれる準備が出来ているのを見たナンパ男共は。


「あ、あいつ。本気だぞ!」

「す、すいませんでしたー」


 あ、呆気ない……ハッタリと担ぎ上げてただけなのにな~


 使わないボールを基の場所に戻し、夏美のそばに向かうと。


「うう……なんで、私なんかに色んな人が寄ってくるの……」


 なんでって、それは夏美が美少女だからである……って本人は無自覚だから仕方ないか。


 前回と今回を経て、思ったことは夏美を一人にしてはいけないということだった。

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