記録14 母娘のリラックスバスタイム

「あぁ~暖かい~のび~ん・・・」

乳白色の湯船に、薔薇の花弁が浮かぶ。

そして黒髪を緩く結ったクローチェが気持ち良さそうに伸びている。


ここは魔王城のバスルーム。

広くてぴかぴか。

黒、赤、金で統一されたゴージャスなお風呂場だ。

薄暗く、ダウンライトで落ち着いた雰囲気を出している。

あちこちに置かれているキャンドルの光がゆらゆら揺れて幻想的だ。


湯船に浸かるクローチェの地肌もつやつや、ぴかぴか。

メイド(主にフィク)と魔王代理のケアのたわものです。

そんな美しい肌を持つクローチェの肩に一枚の薔薇の花弁がついている。



「あらあら、肩に薔薇の花弁がついてるわよ」

クローチェの背後で声が聞こえ、クローチェが後ろを振り返る前に肩に誰かの手が触れ、そして、そのまま、クローチェの首筋から頬へと撫でられる。


「ひゅわっ!?」

予期せぬ動きにクローチェはびっくりして変な声が出てしまう。

そして、慌て後ろを振り向き、そこに居たのは・・・


「お、お母様・・・びっくりした。突然、首筋とか撫でないで下さいよぉ・・・」


薄暗く、光源はキャンドルのみに等しいこの空間、蒸気で少々、見にくかったが、クローチェと同じ様に漆黒の髪を緩く結い、何も身に纏わない、クローチェと同様に色白な裸体を伝う水滴がキャンドルの光に反射して艶かしい。

そして、クローチェじゃ到底及ばない、ふくよかな胸・・・


クローチェの母こと、魔王代理はクスクスと笑う。

「うふふ、クローチェを見たらつい、触りたくなっちゃったわ」

そう言って、魔王代理はクローチェの側に近寄る。

しかし、クローチェは、すすすっ・・・と魔王代理から距離を離す。

「あら?なんで離れるの?」

「だ、だって・・・お母様の手が!めっちゃ私を触りたそうな感じで、ぐっぱぐっぱしてるんだもんっ!!」

クローチェの言う通り。

魔王代理の手はクローチェを触りたそうにわきわき~ぐっぱぐっぱと動いている。

「しょうがないじゃない。クローチェ可愛いんだもの~」

そう言って、魔王代理はしゅばっと動いて・・・

むぎゅうぅぅうっ!と、クローチェを抱きしめるっ!


「むぎゃっ!?」

「クローチェかっわぃい~」

なでなでなで~

「んにゃあっ!?変なところ触らないでっ!?お母様っ!!」

クローチェは何とか魔王代理から距離を離す。


「てか、何でお母様がここにいるのっ!?仕事は!?」

「既に終わらせたわよ?」

魔王代理はちょっとどや顔。

「おぉ・・・いや、でも何でここに?」

「決まってるじゃない。クローチェと一緒にお風呂に入りたかったのよ」


数秒の沈黙。

魔王代理はにこやかだ。


「いやいやいやっ!?もう私、17歳なんですけど!!お母様と一緒に入るとか恥ずかしいからっ!!!」

「え~、いいじゃない。親子なんだし、最近は勇者が期間をあまり空けないで魔王城に攻めてくるから、臣下たちと作戦会議とか、事後処理とかで忙しくってクローチェとなかなか関われなかったし~」

「そうだとしても・・・やっぱり恥ずかしいし・・・」

クローチェ、ズブズブと湯船に沈む。


しかし、魔王代理は薄暗い空間でもよくわかる様な輝かしい笑みを浮かべる。

「せっかくだし今夜はクローチェと一緒に寝ようかしら」

「え!?」

湯船に沈みかけていたクローチェは勢いよく飛び上がる。

「クローチェってちょうど抱き枕にいいサイズなのよねぇ。最近、眠りが浅いみたいなのよ。クローチェを抱き枕にして寝たら、きっとよく眠れるわ」

しかし、クローチェは全力で首を横に振る。

「駄目!絶対に駄目っ!!」

「あら、どうして?」


「それはもちろんっ・・・私が死にかけるからですっ!!!」


忘れもしない。

あれは7年前。

クローチェが10歳の時の出来事だ。


その日は雷が酷く、クローチェは1人で寝れず、魔王代理の寝室に向かい、一緒に寝る事にしたのだ。

魔王代理は優しくクローチェの抱きしめて、一緒に寝たのだが・・・

身長の問題で、クローチェは魔王代理のあのふくよかな胸に顔を埋める形で寝る事になってしまい・・・


「お母様のその!立派で!ふくよかな!胸に顔を圧迫されて!窒息しそうになったんですぅう!!それにお母様ってば、一回、私を抱きしめると、なかなか離さないんだもんっ!!」

クローチェの叫び声がバスルームに木霊する。

「あら・・・そうだったの?私ったらつい・・・それは御免なさいね。あ、じゃあ、クローチェがお母さんを抱き枕にして寝ればいいんじゃないかしら?」

「なるほど、お母様を抱き枕にして寝れば、確かに、窒息の心配はなくなるって・・・いやいやいや!?1人で寝てくださいっ!私も1人で寝るからっ!」

クローチェは再び、首を全力で横に振る。



親子水入らずのバスタイム。

しばらく、バスルームからはクローチェと魔王代理の楽しげに話す声が聞こえたり・・・


きっとクローチェと魔王代理は日々の疲れを癒した事であろう。

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