第8話 タダ喰い女子高生

【前回の『イノシシ 少女あらわる』復習】

「あぅ…あ、あぁ…」

私は、激しく動揺した。私は正義の味方をやっている、戦隊ヒーロー集団の紅一点だったから。


「びびんなっ!!おばちゃん!」

女子高校生は、言葉にならない音声を壊れたように紡いでいる私を叱咤した。

そして、私は何も言えずにボロボロ泣いた。


「泣くなっ!」

更にくそ生意気な女子高校生は私に向かって振り回したカバンで腰を叩いた。


「ひぃっ!」

私は、この高校生が怖くなっていた。


【自己紹介】

私は、変身ヒロイン、キザキ・アカネ二十三歳!(稀崎明音)

私は、正義の味方として、日常をクズみたいに生きるんだと決意した『わるもん』を自宅に軟禁している女の子!頭がハゲてて額に流血しながら部長の泣き落とし作戦に成功!


無断欠勤した会社から定時退社!混んだ電車で痴漢にあって、助けてくれた女子高生から怒られたわ!!








で…。

末広がりの第八話。



私は、イオンモールのフードコートにイノシシ のような女子高校生に拉致され、説教されていた。なんなん?この状況!!


私は、女子高校生に怒鳴られて泣いてしまったことが恥ずかしかったし、いちいち、この子が言うことが理にかなっているからイライラして、拉致されている間中、終始泣きはらした目をテーブルの隅の角っこを見つめながらムッとして過ごした。



幾度となく心の中で「 k u s o g a 」と呟いた。



最後は女子高校生は「おばちゃんには何を話しても無駄みたいね!ばーか」と言って、そのまま帰って行った。

あの子、自分が頼んだパフェとショートケーキのお金払って帰ってなかった…。




フードコートを出た後、五月雨が降ってきた。


駐車場の街頭に小さな雨粒が無数に落ちてくるのが照らされている。


唇を軽く噛んだ。




腹から喉元に膨大な感情を伴って言葉がせり上がってきた。


「なんなのよ!みんな!なんなの!?」


膨大な感情はあっても、それが表現されることなく、稚拙に子供のように泣き叫ぶだけだった。






私は、その一言を全力で叫んで、外灯を力一杯蹴り倒した。


外灯はへし折れ、危うく駐車されてる車の上に倒れ込むところだったけど、あわあわと支えて一般市民の財産を守ることに成功した。




成功したけれど、外灯がへし折れたので、携帯の正義アプリから修復依頼をかける。五分とかからずJAFのような作業着に包まれた修復さんが来て、魔法のような手順で、まるでなかったことのように外灯を修復させていった。




無駄口を叩かずに、修復を終えた彼らは「修復終了総員撤退」とだけ告げると、闇の中に消えていった。




「プロの仕事だなぁ」とため息まじりに呟いたら、泣けてきた。


足を引きずるようにして帰宅する…。




部屋の鍵を回そうとしたら、開いていた…。




いろいろあったので、記憶が飛んでたけれど、そうだ。


私は、『わるもん』をかくまっていたのだ。


かくまってはいたけれど。


『わるもん』は、私が部屋で変身スーツのメンテナンスをして変身した瞬間に怯えていたので、多分もういない…。




ドアノブを回してドアを開ける。


おそるおそる中を伺うように「ただいま…」と声をかける。


私のベッドの下が主に『わるもん』のねぐらだったので、そっとそこに目をやると、まだいた!


きちんと二匹!


二匹?!


いなくなるどころか、増えていた…!


「はぁ?!」何増えてんのさ!」と愕然とした声で問いかけると『わるもん』は答えた。



「我は、個にして全。全にして個。互いに同じ意を持つ種族であるぞ。心しておくが良い…だが、何かと識別に不便であろうから、そちに、この我のともがらの名付けを所望したい…」


「お前にも名前つけてねーしっ!!」


「我名は!雑魚キャラオブザイヤー!」


キラキラとした目をしながら宣言するように言う。


引きつった笑い声入りの低音サイコ声だ。

相変わらずだ。


声高に胸を張って宣言するので、どうもその名が気にいっているらしいし、隣の『わるもんB』も羨ましそうにキラキラした目で、その名乗りを聞いている。


なんなんだ、こいつら…。


私は『わるもんB』に、「おまえ『タダ喰い女子高生』な…」と名前をつけた。


わるもんBは、喜んで抱きついてきて、口を開いた。

「我は『ただ喰い女子高生』であるぞ!そなたの未来に幸あれかし!」

ヒステリックな魔女声!!だった…


「おまえメスかよ…」

私は『わるもん』をつがいで飼うことになってしまった…。

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