第42話 王様にお仕置きよ

 俺様の気持は最悪そのものであった。

 七つの大罪の仲間であった彼女達を捕縛するとは何事だと。

 彼女達が本気を出せばこのミリーシャ王国は崩壊したも同然だという事に気付いていないのだろう。


 なので僕が気づかせてあげよう、七つの大罪ではなく唯の1人のランク外冒険者がさ。

 

 相変わらずボンバー魔王は空中に浮かびながらキャッキャ言っている。

 ちなみに僕の透明の腕で宙に浮かせている。

 宙に浮いている腕は100本を超えている。

 それは魔力操作の腕輪のお陰でもある。


 俺様の隣には冥王がいる。彼は毒毒の剣と錆色の剣の二つの剣を扱う二剣流の達人でもある。

 反対の隣には玄武がいる。彼は元々巨大だったタートルマウンテンであり、大賢者でサブでは魔法書製作の達人でもある。


 冥王のレベルは14000を超えている。

 玄武のレベルは10000を超えている。

 そして目の前にいる兵士達はレベル100にも到達していない。


 後ろでは勇者山中と超能力者玲子がいた。

 

 沢山の兵士達が群がってくる。

 それを見て俺様はただ一言いう。


「殺すな」

「「承知」」


 冥王と玄武が右と左に散ると。俺とボンバー魔王がそこに立ち向かう。


「な、なぜ赤子をおおおお、おしっこをばらまくなああああああ」

「こっちにぴーがきたぞおおお、ぎゃああ、くせえええええええ」

「あの赤子何ものだ」


 そんな感じの使い方があります。


 ボンバー魔王という赤子が暴れている中、

 俺様は100本の腕で片端から敵を掴む。

 その見えない腕を見る事は特殊な何かを使わない限り無理だろう。


 

 もう両腕を手に入れる事は無い。

 両親から貰った大切な体をもう手にする事が出来ない。

 懐かしい右腕の感覚、切ない左腕の感覚、もう僕にはそれを触ることも振れる事も出来ない。


 

 前まではいらいらしたり苦しかったりすると俺様のようになって頑張った。

 頭を使ったり冷静になる時は僕になって考えた。


 最近ではその2つが混合して訳の分からない状態になってきている。

 それでも僕と俺様は1つのリュウケンという人間である事を思い出す。


「ぎゃあああああ」

「なんか言えないけどやばいいいい」


「ふ、こっちは老人だぜ、ご老体あああああああ、手がでけええええええ、てか亀えええええ」

「に、にげろおおおお、バケモンだぞおお」


「こっちは生意気そうな男性が、おいそこの男今すぐみ、右腕がないいいいいい」

「血が止まらないぞおお」

「って凍ってるしいいい」


 3か所では地獄絵図が繰り広げられていた。


「ったくあいつら無茶はするなって言ったのに」


「ふ、腹の虫の居所が悪いのは何もリュウケンだけではござらぬ」

「ふぉふぉ、老人を怒らせたら怖いという事を教えてあげただけじゃわい」

「じゃあ城に突撃と行きたいが、そう簡単にはいかないようだね」


 そこには救出した約1000人がそれぞれ縄で縛りつけられて逃げられないようにされているし、至る所にそれがいるので、そこにいる兵士達は戦いやすいだろう、時折奴隷達を人質にするそぶりを見せるのだから。


「うぉい、お前、そこのお前、この作戦を考えたのは誰だぁ?」


 俺様の冷たい呟きに、その兵士は身震いをしながら答えるのだ。


「ジ、ジスフォード皇太子であります」


 ぶちぶちぶちと脳味噌が切れるような音を歯ぎしりですると。

 

「じすふぉおおおおおおおおおど」


 大きな声で怒鳴る。


「冥王と玄武は動くな、お前らの攻撃だと人質に当たる」


「承知」

「任せるのじゃい、わし等は何もしないのじゃい」


 1000人の奴隷の人質達、彼らを殺されたくなければ投降しろとまでは言わない、言っていればこいつらを簡単には殺すつもりでは無かった。


 右肩と左肩には腕は存在しない、

 そして右肩の1本の透明な手にはボンバー魔王を掴ませ、浮かせている。

 ボンバー魔法は赤ん坊のようにぐっすりと眠っている。

 こんな状況なのに眠れる事がある意味すごい事だと思った。


 空中を寝ている赤子がふわふわとしているので、敵の兵士がざっと500人はびくびくとしている。


 周りの兵士達は赤子に見とれていた。



 俺様は武器を構える訳でもなく、とりあえず目の前に向かって走り出す。

 敵の兵士達は唖然としてしまう中、ボンバー魔王がひたすら空でふわふわしている中、1人の異常者は敵の懐に跳躍して見せる。



 それは単なるジャンプ力、レベルが非常に高いし、ステータスも高いお陰で使用出来るジャンプ力なのだ。


 風から体を守るように、透明な腕をぐるぐる巻きにすると、

 そこに着地した瞬間。


 全てが片付いていた。


 透明の腕を利用して周りにいる敵兵士達をがんじがらめにして動けなくさせる。

 100本の腕では足りないので、首を少し圧迫して気絶させようとしていた。


 少しの誤差もあるが500人の兵士がぶっ倒れると。

 奴隷達は涙を流している。

 そこに勇者がやってくると、1人また1人と解放される。

 彼らはどうしていいか分からない顔をしていた。


「みんな付いて来るか? 王城へ殴り込みにいこうぜ」


 俺様は少しめちゃくちゃな事を言うと、周りにいる奴隷達は爆笑の渦を上げた。

 その結果城に入る時、奴隷達も入る事になった。



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