第20話  レジェンド級モンスター【ボスクラス】

「うらっらっらららららららららああああああ」


 叫び声から始まった俺様の神仏のメリケンサック、

 その犠牲となるのは中型種のモンスター達であった。

 竜国オーガや爆発トロール等、

 その他は見た事もない化け物達ばかりであった。

 毎回鑑定眼鏡を使用する訳にもいかないので、


 全てを無視して、

 即座に瞬殺して見せている。


 レベル12000は伊達ではなかった。

 風が吹き上がり、中型種の後ろから最強種がやってくるのだろう、

 魔王よりは弱いはずだが、

 それでも沢山いられるとこちらが困る。


 中型種のモンスター達は俺様のメリケンサック連撃で全てが塵となっている。

 拳を構えながら、モンスターの死体の上を踏みつけて歩いてくる人形のモンスターがやってくる。

 

 そいつはどのように形容すればいいのか難しい、

 それでもありえないくらいの気圧を感じる。

 体がとてつもなく重たくなってくる。

 まるで一歩また一歩とそいつがこちらに近づくだけで、

 地面にめり込んでしまいそうだ。


 そこら中に転がる死体、

 七つの大罪の仲間達も倒してくれたモンスター達、それでもまだ他のモンスターと戦っている。


 彼女達の本気を無駄にしたくない、

 それでも目の前の化け物を俺様は恐怖の眼差しで見ていた。


 そいつが歩く程、死体が蒸発していく、

 その蒸発した魂をそいつは吸い込む。


 俺様は恐る恐る鑑定眼鏡をぶるぶると震える右手で持ち上げて、

 耳にかけた。

================

名前:ブランディ―(レジェンド級)

職業:冥王


レベル14000

攻撃力32000

防御力20000

素早さ15500

器用さ15500

知力 13000


スキル 不明

================


 

 俺様はその鑑定結果を見た。 

 次の瞬間、鑑定眼鏡をしまうと、

 俺様は気付いてしまう、

 この冥王を倒せるか倒せないかは戦い方次第、

 なぜならレベル差があまりなかったからだ。


 これなら可能性は消えていない。


 ブランディーという名前、隣にはレジェンド級と書かれている。

 つまり伝説級という事なのだろう。

 冥王って、神に近いだろとは突っ込まないけど、


 そいつは興味深そうにこちらをじっと見ている。

 

 全身が青白いのに、体中の防具はシャツとズボン一枚で、

 頭にはツノが2本生えている。

 まるで鬼族かと間違ってしまうだろうが、

 奴は何族なのだろうか?

 モンスターなのだろうけど。


 


 そいつは腰から下げている2本の武器を抜き取った。

 右の剣は毒々しい色がしている。

 左の剣は錆びがひどい色をしている。

 本当に変わった剣だと思いつつも。


 俺様は恐怖で立ちすくむ、

 目の前に巨大な敵がいるのだ。

 そいつを倒せるか、倒せないかは、叩き方次第と何度も何度も頭をループさせながら考えているのに、

 足が前に突き進む事が出来ない、


 なぜなのか、

 早く前に突き進めと心の声が叫んでいるのに。

 心の声がどこか遠くに行ってしまいそうなほど、

 俺様は久しぶりに恐怖を、絶大なる死を感じていた。


 それはゴミ魔王を倒した時が懐かしいと思える程、

 今の目の前の冥王はありえなかったのだ。


 奴はこちらをじっと見ている。

 そしてにかりと笑うと。


「お前は強いのか?」


 その発言に俺様はびくりとする。


「いつもオレの事を見ると人々は逃げて行く、皆と殺し合いがしたいだけなのに、モンスター達が逆に従ってしまう、どうしたら殺し合いを楽しめるのかな?」


「そ、それは」


「君だけだよ、オレを前にして立っているのは、では殺し合おう」

「結局そういう事になるんだよなぁ」


【前世最強】【最強武芸】【肉体強化】を発動させる。


 前世最強は前世の力を一部開放する。

 最強武芸は全ての武芸の達人となる。

 肉体強化は肉体の力を最大限にまで上昇させる。制限時間は15分間リキャストに30分かかる。

 武器は竜魔人の剣を鞘から引き抜いて、

 最強武芸のお陰で剣術の様になってきている。

 両手には神仏のメリケンサックを装備し、

 背中には俊足神の弓を背負っている。

 いつもは背中には怠惰のベリーがいた。

 弓を少しずらしてベリーを背中に背負っていたものだ。


 今では7人の美少女達は、モンスターになり、

 敵のモンスター達を蹂躙して行っている。

 彼女達が目の前の冥王と相対すれば、

 確実に七つの大罪は崩壊するだろう、


 その為にも俺様はここで退く訳にはいかない。


 武器を構えて、前へ前へと突き進む、

 冥王は銀色の髪の毛を払いながら、

 口元は右頬だけ吊り上がり、 

 スピードを上げていく、

 2人がぶつかり合うまさにその時、

 沢山の衝撃波となりて、


 2人の攻撃がぶつかったのだ。


 俺様は竜魔人の剣を振り落とす。

 そこに毒のような剣で防ぐと、きつい鼻がまがりそうなほどの臭いがする。

 錆びのようなもので、左わき腹をえぐり取ろうとする。

 俺様は竜魔人の剣で抑え込みながら、

 空中に跳躍する、とはいえバク転のような要領であった。


 竜魔人の剣と毒の剣がぶつかり合う事によって、

 地面がまるで地割れでも引き起こすかのように、

 割れて行った。


 激しい地震のような物音を響かせながら、

 まるで噴火の時がやってきたとばかりに、

 きっと今なら沢山の街人達は逃げまとってパニックを引き起こしているだろう。

 それでも俺様は冥王の後ろに着地する。

 そして竜魔人の剣で背中を思いっきり両断するはずだった。


 それは冷たい雨のような物だった。

 それが俺様の汗だと気づいた。

 圧倒的なレベル差で敵を倒していた時は、 

 まるで毛虫を潰すかのようだった。


 しかし今、

 俺様は死を感じている。

 ゴミダンジョンに追放された時よりも、

 遥かに死を感じている。


 それでも、


「俺は……」


 毒の剣が顔面を捉えた。

 考える暇など無かった。


 背中に向かって斬りかかった。

 武人としてならひどい奴かもしれない、

 でも俺様は武人ではない、冒険者だ。


 だが冥王はくるりと回転するのではなく、

 表と裏を無理やり変えた。

 カードで表になる時は捲る必要があるだろう、

 だが目の前の化け物は、捲る事すらせず、表と裏を同化するかのように入れ替えた。


 そして毒のような剣で顔面を斜め上から下へと両断され、


 衝撃で、ぐるぐると回転しながら、吹き飛んだ。


 全てが終わった。

 これから俺様は死ぬのだろう。


 意識が暗くなっていく、

 それは本当の一瞬、

 そこにはモンスターとなっていても家族がいたのだから。

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