第二章(1)以洋、ピーナツバターサンドを作る
翌朝、
「
朝食の後、出勤しようとしていた
「ん~、それもそうかも……」
昨日の自殺が自分の目の前で起こった、のは、別に自分のせいじゃないはずだ。……ということは、何やってんだと
「じゃあ……ちょっと帰ってみるよ」
「送っていくよ。急いで準備して」
笑顔の
少しだけ
無意識のうちに
大きく息を吸い込んでから後部座席を振り向いた
「どうしたの?」
振り返った後部座席には何もいない。
これは
状況だけ見れば、
でも、死者達と交流ができるようになった今は、もうそんなことは起きないし、怯えることもないと思っていたのに。
「君が何をしたいのかわからないけれど、言いたいことがあるなら言いなよ。そんな風にしてないでさ」
いい加減腹が立ってきて、空っぽの後部座席に向かって
しばらく待ってみたが後部座席には何の反応もなく、ますます
この手のいじめっ子みたいな幽霊に会うのは実に久しぶりだ。更に気にくわないのは、なんで自分がこんな奴に脅かされてあんなに怯えなければならないのかということだ。
「怒らない怒らない。生きた人間にだって悪い奴がいるんだから、幽霊ならもっとそうだろ?」
「うん……」
なんとか笑みを浮かべて頷き、シートベルトがきちんと装着できていることを手早く
「よし、急ごう。でないと遅刻しちゃうでしょ?」
「心配ないよ。今日は遅れても問題ないから」
笑ってそう答えた
以前に
でも……脅かされた相手が死ぬほどショックを受けているのを見るのはそんなに楽しいんだろうか? ……
例えば
そして、大叔父さん……。大叔父さんの霊が求めていたのは、
なら、あの自殺者の幽霊は? あの幽霊が
あの幽霊が怖いのは、あの幽霊が何をしたいのかが、
あの幽霊は、
しかし、それはいったいなぜなのか? それがまったくわからない。
考え込んでいる間に、車はもう
「あ、着いたね、ありがとう」
笑顔で
「夜は帰ってきてご飯食べるでしょ? 午後に買い出しに行く予定なんだ」
「うん。何事もなければ七時前後には帰るよ」
「うん、じゃあ夜にまた」
笑って手を振った
家に入ると、
ちょうど
「ストップ!」
一瞬呆気に取られた顔になった
「帰ってきたのか」
「ピーナツバターなんて食べないでよ。すぐにに朝ごはん作るから待ってて」
手を洗い始めた
「ピーナツバター食べたいって
笑ってそう言った
「そうなの? じゃ、それも作るね」
八面六臂の勢いで
スクランブルエッグにベーコン、焼き立てのフレンチトースト、それからジャムとピーナツバターとバターを挟んだ三層のサンドイッチ。
「なんでこんな朝早く来たんだ?」
「あ、ははは……なんにもないけど顔が見たくなって」
そう言いながら
「今度は何をやらかした?」
「やってないって……。あれは僕のせいじゃないし」
口を尖らせ、考えながらそう答えを補足した
「昨日自殺した人がいて、その人が落ちてきたのがちょうど僕のすぐ後ろだったんだよ……」
「昨日、ニュースでずっとやってたあれか?」
「うん……それで驚いちゃって……。人が死ぬところって今まで見たことがなかったんだよね……」
「大丈夫だよ。忘れちまいな」
ダイニングチェアの上で膝を抱えた
「お前、その自殺者の霊を見たのか? その場で?」
「その場では見てない……。けど……ずっとついてきてるって気がするんだ。ただ、姿が見えなくて」
「お前に見えない幽霊? そんなことあり得るのか?」
「その幽霊、何かしたか?」
「うん……ううん、何もしてない」
昨夜のことを思い出し、幾分気恥ずかしくなって
「単にそんな気がするだけ」
ぽつりとそう付け加えた
「手ェ貸してみろ」
急いで
「見た感じなんともないな。なんか問題があったら、
「うん……」
どこか不機嫌そうに見える
「リビングの掃除してくるね。ゆっくり食べてて」
「そんなに忙しくしなくてもいいんだぞ。俺も片付けるし」
「大丈夫だよ。ちょっと掃除するだけ。どうせ事務所にはそんなに急いで行かなくてもいいんだし」
答えながらもうリビングの方へ行ってしまった
「何に腹立ててるんだ?」
「あのチビ、何かに守られてる。俺にも全部は見通せないけど……。たぶん
「あいつのことを守ってくれてるものがあるなら、それでいいじゃないか。あいつが
「……だから俺はなんにも言ってねえだろうが……」
笑いながら
「俺も掃除を手伝ってくるよ。せっかく帰ってきたのに忙しく働かせてちゃ悪いだろ。お前も食べ終わった後はあいつとしゃべってるといいよ」
立ち上がった
一人になった
しかし、それは絶対に
だったら少なくともあのチビの命は心配しなくていいってことだよな……。
むっつりとした顔で、
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