召喚士VS黒い幻想英雄1

 ライトはこのゲームを考察して、攻略を試みることにした。

 幸い、趣味がチェスだったり、これまでゲームキャラである幻想英雄たちと関わってきた経験もあり、ぼんやりとだが全体像を掴んでいる。


 1・勝利条件は、オータム・バグズを倒すこと。

 2・観客たちに見られていて、戦い方などによって好感度が増減する。

 3・扉が消えたので逃げ出すことはできない。


 というところだろうか。

 1の勝利条件を満たすためには、2の観客による好感度を上げなければならない。好感度が圧倒的な付与効果をもたらすからだ。

 3の逃走についてだが、これは最初から逃げ出す気はなかったので問題はない。一応、【脱出魔法:アナデール】が通用するかもしれないが保留だ。好感度が下がる可能性が高い。


 もう一つ裏ワザ的なモノを思い付き、念話して四人で情報共有もしたのだが、コレもリスクがあるために保留だ。


 となると、観客たちからの好感度を上げて力を戻して、オータム・バグズを倒すというスタンダードな戦法がベターだ。

 たぶん好感度の最大値は100だろう。

 城内のNPC全員の好感度を上げてから、ここにやってきたのだから間違いなさそうだ。


【ライトパーティー:好感度60】【オータム・バグズ:好感度90】


 という現状だが、何か違和感があった。

 

「レオー、オータム・バグズの好感度が90なんだけど――」


「アレが向こうの最大値だ」


 ぶっきらぼうに答えたレオーだが、言い切ったということは確実な情報なのだろう。

 やはり、こちらが好感度100まで上げて、好感度90が限界のオータム・バグズを押し切るしかない。

 ライトはそう考えて、行動に移した。


「仲間が失礼を致しました、王よ。心よりお詫び申し上げます。私は宮廷召喚士団長ライマンの息子、ライト・ゲイルと申します。どうか発言をお許しください」


 ライトは名乗りながら、戦闘中にも関わらず跪いた。


「ほう、意外と礼儀をわきまえる奴もいたのだな。発言を許す」


「ありがとうございます。私がここにやってきた目的は、イズマイール国王から命を受け、連れ去られたソフィ第三王女を探しにやってきたのです。また、謀反を起こした最高司祭フッドマンの身柄の拘束も――」


「ふん、なるほどな」


 そのとき、観客たちの感情が動いた。

 ライト側の礼儀と正義を示すことによって、先の不意打ちもある程度は正当化されたのだ。


【ライトパーティー:好感度60→70】【オータム・バグズ:好感度90】


「たしかにソフィはオレ様の妃とするために、城に招待した。フッドマンは……まぁ、今のところは目的が一致している。客人とも言えよう」


「そのためにコロシアムを襲撃、そして兵や私たちを魔法で殺そうとして、あまつさえソフィ第三王女を連れ去ったのですね?」


「ふ……ふはは! たしかにその通りだ、認めよう! いいぞ、面白い! ここでの戦い方というモノをわきまえているではないか! ライトと申す者よ!」


【ライトパーティー:好感度70→80】【オータム・バグズ:好感度90→80】


 基本的に自分側の好感度を上げるような行動を取って、下げるような行動は避ける。

 相手に対しては逆に下げるような行動を取って、上げるような行動をさせない。

 これがこのゲームの基本的な攻略法となるだろう。


「ふん、だがオレ様にも理由がある。……〝真実の愛〟を得るためになぁ!」


【ライトパーティー:好感度80】【オータム・バグズ:好感度80→90】


「なっ!? 今の発言でオータム・バグズの好感度が上がった……!?」


 真実の愛を得るという個人の目的が、一国を敵にして、殺人未遂を犯し、王女を連れ去る罪に叶うというのだろうか?

 ラブロマンスならまだしも、実際にやっては悪となるだろう。

 王というカリスマなのか、それとも何か理由が――


「さぁ、問答は終わりだライト。互いに正義があるのなら、あとは戦って雌雄を決するしかあるまい。人数差はハンデとしてやる」


「わかりました、王よ――いや、オータム・バグズ! コロシアムでの借りを返してやる!!」

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