第20話 空気嫁の帰還

「ちょっと待て!!シグマーノの主だと認めたら、俺を護衛するんじゃなかったのか??」

「そんな任務あるわけがない。貴様は我らの敵だ。」


話が急に見えなくなった。。

さっきまで、シグマの使いとして主を政府?から護衛しに来たと言っていたのに、いざ俺がシグマの主だとわかったら、俺を拘束すると言い出した。


「鈍い男だ。つまり、我々は政府。貴様が創造せし、シグマーノと対立している国家勢力だ。」

「ルイさんが政府!?つ、つまり。。俺を騙していたのか!?」

「そうだ。今にも負けそうな我ら政府軍だが、革命軍リーダーの親にあたる貴様を人質に取ることによって形勢逆転をはかる。わかったら大人しく人質になれ!」

「い、嫌に決まってるだろ!!」

「ふっ、では仕方ない。」

政府軍ルイは、プクりとした唇を真っ赤な舌で舐め、裏拳をくりだした。


ズビュン!!!


風をきる拳の音でわかる。

俺の意識を刈り取るには、充分過ぎる攻撃だ。

裏拳が顔面に近づくにつれて、反射的にまぶたが閉じてしまう。


。。。

あれ。。?

首が飛ぶほどの衝撃がこない。。

まだか?遅すぎる。

いや、待てよ。

人は死ぬ寸前、脳がフル回転して走馬灯なんていう、人生のフラッシュが見れるそうじゃないか。

きっと、今まさに俺は脳がフル回転し、世界がスローに感じているに違いない。

つまり、今死ぬ寸前ということだ。

皆今までありがとう。また会うことができたら、言葉にして伝えるよ。


トスン!


ん?何かが後ろに落ちた。


「お~い!スズキーノ~!?」

この音の周波数を細胞が求めていたかのようだ。目を見開いて、後ろから聞こえたその声に、飛びつくように振り向く。


「大丈夫?スズキーノ?」

そこには夕日を背に仁王立ちする165cm奇跡。

シグマの姿があった。


「あぁ。もう大丈夫だよ。シグマ。。」


危うく涙が出るところだった。

裏拳が怖かったからじゃない、シグマの顔を、また見れたからだ。

ようやく帰ってきたシグマを堪能するように見る。

やぱっりシグマは美しい。

美人は3日で飽きるというが、彼女を飽きることはないだろう。

裏拳をくらった衝撃で見た幻ではないといいけど。。


「ん?裏拳!?」

そういえば、ルイさんはどうなったんだ?


振り返ると、50mほど先にこちらを睨みつけるルイさんが見えた。

「いつの間に、あんな遠くに。。」

「私が空から降りてきたのに気付いた時よ。」

「お前飛行能力搭載してたっけ?」

「あはっ!そんなのないわよ。ただの跳躍。」

「はっ…ははは…」


シグマに聞きたいことや話したいことが溢れていたが、今はルイさんに集中しよう。


ザッザザザザ!!


ルイさんが凄いスピードで、こちらに向かってきた。

ダチョウみたいに速い。

「シグマ。彼女はお前の敵らしいぞ。」

「ちぇ~!せっかく、スズキーノと久々に会えたのにな~!」


シュン!!!!


え?シグマが消えた?

まばたきの間に、シグマがいた場所には夕日の光が満ちていた。


スドーーンン!!!


凄まじい音に振り返ると、

腹にシグマの掌底が深々と入った、ルイさんの姿が目に入った。










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