第23話-サイレント・ゼロ

魔法陣マジックサークル――沈黙・零式サイレント・ゼロ!!」


 フリード先生が一瞬で詠唱すると、ざわついていた教室が急に静まり返った。

 どうやら人を黙らせる魔法を使ったらしい。


「クラスΩの問題点は全くもって協調性が無いところだ。現に、今も人の話を傾聴せず、私語を慎まない。これでは戦場では早死するぞ。クラスという集団でどこまで強力し合えるか。そして、その中の各グループでどのように連携を取るか。生活一つ一つ全てに携わっている事を忘れるな! 人の命は脆い。脆いのだ。例え、貴様らがプロの魔法使いになったとしてもだ! 特別高等魔導師だろうが高等魔導師だろうが、急所を狙われば終わり。一瞬の判断ミスで死ぬ。その弱点を補うのが集団の連携だ。人は一人では生きていけない。理解したかボンクラ共!!」


 みんなの目は丸くして驚愕している。

 どうやら、これもこれで一大事らしい。


「そこでだ。まず、最初にチームを作った。フリーレン、ライトニング、如月の三人チームだ。これから共にチームとして訓練する仲間だ。そして、外部からの依頼や天聖魔導軍からの援護依頼はチームで行ってもらう。貴様らの将来にも影響するぞ! 只でさえ扱いにくい貴様らは外部から必要とされていない! 飢死になりたくなければ今すぐチームを組め! 人数は四人から五人だ。午後の授業はチームによる実践訓練を開始する。一時間後に魔法訓練室αに集合しろ! あと如月、お前らのチームは別メニューだ」


 フリード先生は言い終わると、颯爽と踵を返して教室を出て行った。

 廊下に反響するこつこつと靴の音が遠ざかっていく。

 しばらくすると、教室内はザワツいて、雑談が始まった。


 「うっわ。マジで恐かったわフリード先生」


 でも、言ってることは正しいような気がする。 人間は一人では生きていけない。それはどんな人でも同じだ。


「こ、ここまで先生がお怒りになられたのは、始めてかもしれませんわ……」


 リープが絶句するのも無理はない。

 ――先生は本気で指導をしている

 いつ生徒たちが幻獣種に襲われても、大丈夫なように護身法を身につけさせたいと思っているに違いない。


「如月君はフリーレンとライトニングとどういう関係なのー!?」


 先生がいなくなってから、教室内のざわめきが元に戻った。

 転校生だからだろうか。みんな興味津々に見つめ質問してくる。


「えっと――」

「あたしとあきらは一緒の部屋で暮らす関係だわ!」


 フィーネは腰に手を当てて、ちょっぴりと膨らむ胸を強調させて自慢気に言う。


「えええええ!! も、もしかして! もう、Cまで行っちゃったのおおおお!?」


 きゃーっきゃーっ。

 ほんとほんとー?


「C?」


 フィーネは不明そうに首を傾げた。

 どうやらその意味が分からないらしい。


「待て待てみんな、俺とフィーネはCどころかAもないぞ」


「え? そうなの?」


 あれ? 隣からゴゴゴゴと赤き炎のオーラを纏うフィーネが。


「ま、まままままた胸の話をしてたのね!CどころかAもないのね! そうなのね! そうなのよねっぇぇぇぇぇぇぇぇ! この淫獣変態王!!」


「おい、胸の話じゃ――ブォァ!!」


 側頭部を横打ち後、俺の股間に上げ蹴りしやがった!


「いってええええええええええええええ!」


 俺は床にゴロゴロと左右に転がる。

 痛った……。

 なんでフィーネはこんなに凶暴なんだよ……。

 大人しくしてれば可愛いのに。 ん?  これは、水玉――


「あ、あ、あんた……ついにここまで計画的な犯行をするようになってしまったのね」


 今俺は、フィーネを下から見上げている状態だ。

 故に、スカートの中の水玉模様が入った可愛い生地が見える。


一重陣魔法マジックサークル・シングル――」


 もう勘弁してくれよ。俺は何回気を失えばいいのですか。


「フリーレン、私闘での魔法の使用は禁止されてるよ? 使ったらまたフリード先生が」


 「ちっ」


 フィーネは舌打ちして魔法杖を懐にしまった。


 「あきら、命拾いしたわね」


 そういうと、フィーネは教室へ出ようとしたのかドアへ向かう。


 「ちょっ、どこ行くの?」


 「デリカシーなさすぎ」


 と、言い残してフィーネは教室を後にした。


「フリーレンやっぱりこわー。ハーレム王は凶暴な子がタイプなの?」


「いや、俺はお淑やかで優しく清楚な女性がタイプだ。あと、ハーレム王じゃない」


「ふーん。じゃライトニングは如月君とどういう関係なの?

 優しくて清楚でしょ?」


「ほぇ!? そ、それは――」


 一瞬で赤面したリープ。


 お嬢様の学園でこのような話はあまりされないのだろうか、耐性がなさすぎる。


「そ、そうですわね。毎日、わたくしの御飯を食べたいって……

 言われた関係ですわっ」


 一呼吸して、クラスメイト全員が黄色い歓声を上げた。


「「「「えーーーーーー」」」 」


「ぷろ、ぷろぽーずされたの!?」

「あぁ、私も運命の人出来ないかなー」

「ハーレム王はもう二人を完全に手篭めにしているわね」


……もうこれ、収集つかないな

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