第6話 「くすぐる歌」

荒地に水仙が咲いていた。

看板も朽ちてしまった灰色の地面に、黄色が三輪。

ひと株から、それぞれがすっくりと立っていて、

仲良く並んで、ラッパの自慢をしている。

まるで、越してたきたばかりの、家族のよう。


見渡すと、離れたところにも、また黄色。

敷地の奥にも、ぼつり、ぼつり。

だんだん、ご近所さんが増えていく。

ああ、ここは黄色の街になるんだね。


わたしの乾いた胸の底にも、

まだ根っこは残っているだろうか。

揺さぶったら、目を覚ますだろうか。


ラッパのフリルに、そっと触れてみると、

待ってました、とばかりに頷いて、

『プ、プププ』と歌いだした。


指先が、くすぐったかった。


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