第14話 不思議と事故は少ない

 僕の地元長野県に住む農協の職員Mさんの体験談である。


 Mさんは大のカードゲーム好きで休日などはゲームショップに入り浸り、夜遅くまで対戦をしているそうだ。


 その日も友人とゲームに熱がこもり、もう夜も遅い時刻になった。深夜も十二時を回りそうになった。


 切りの良いところでゲームを止め、車に友人を乗せ、夜の道を帰路についていた時だった。


 田舎の夜の道は街灯も少なく闇が深い、ライトを頻繁にハイビームに切り替えながら、真っ暗な闇の中を切るように進んでいった。


 ふと信号のない交差点に交通整理の人が立っていた。白いヘルメットに青っぽい服装、手に赤い旗を持ってこちらに掲げている。Mさんはすっとブレーキをかけ止まった。


 しばらくすると、白い旗を掲げたのでMさんは車を走らせた。


「何してたん?」と隣の友人が唐突に言った。「えっ? 何って?」Mさんが聞き返す。


「だからなんで急に止まったん?」と言うので「交通整理の人いたじゃん」と言うと「誰もいなかったで」と友人は言う。


「えっ!?」となった。言われてみればおかしい、普通に考えればこんな時間に交通整理など人がやるはずがなく、そもそもそこは工事なんてしていなかった。もちろん事故でもない。片側通行などもなく、車線は両方開けていた。


 あれって何だったんでしょうね。とMさんは言う。

 

 信憑性の薄い噂話では、昔工事中に事故で死んだ交通整理のおじさんがおり、その人が出るという話を、同じ職場で聞けたのだが、いつのどんな事故だったのかは、はっきりとしなかった。


 不思議とその交差点、事故は少ないそうである。

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