第9話 あの有名人の死相

 K子さんは某有名コメディアンの大ファンでした。彼が出ている番組は逃さず見ていましたし、そのユーモアに溢れたお笑いも好きでしたし、人柄も大好きでした。


 ある日のこと、いつもの様にその有名コメディアンさんの名前を冠した動物番組を見ていると、そのコメディアンさんの顔色がおかしいのです。最初は妙に白いなと思いました。


 メイクが変なのかしら? それとも照明の関係かな? とあまり気にせずそのまま見ていると、白さはドンドン増し、頬の肉がドンドンこけていくのです。


 あっ! と思ったときにはそのコメディアンさんがまるで骸骨の様な顔になったと言います。


 しばらくはそのまま、目を閉じ瞬きを何回かして改めて見ると、顔色は普通に戻っていました。


 あれは何だったんだろう? 妙な不安が頭をよぎります。


 流行り病によってそのコメディアンさんが亡くなったのはそれからすぐの事でした。


「たぶん……死相が見えたんじゃないかと思います」K子さんはそう言います。


 偉大なコメディアンさんの冥福を祈り、彼に感謝したとK子さんが言うのを聞いて、僕もいつも楽しい時間をありがとう、とそっと祈りを捧げました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る