第4話 少女の花占い


 少年と少女達が、遊具で遊んでいますね。

まだ小さな子供達の足元には、何度踏まれても、何度でも芽吹く小さな黄色い蒲公英が咲いています。

 子供達の元気に負けない生命力の持つ蒲公英と少女の恋心、そんな物語。


「ねぇ待ってよ!!!」


男の子についていくのに必死な女の子は、少しずつその距離が開いて行き、追いつく事ができなくなります。


「もぉ!!!!」


地団駄を踏みながら、女の子は感情を表します。

すると、1人の男の子が、少女に駆け寄ってきました。


「遅いんだよっ、早く来い」


そう言いながら、手を伸ばしてきます。

小さくも、その優しさは少女の心に大きく作用します。

しかし、少女はまだ子供、負けん気の方が勝ってしまうのです。


「ふんっ、知らない!ほっといて!」


ついつい意地を張ってしまうのです。

困った男の子は、頭をかきながら


「こないのか?置いていくぞ?」


少し、寂しげな表情を浮かべながらもそう言います。


「好きにしてっ!」


「はぁ、じゃあもういい先行くからな!後で泣いても知らないぞ!」


そう言いながら、男の子は他の男の子の元へと去って行きます。


「もぉ!もぉ!もぉ!」


本当は、一緒に行きたかったのにと少女はへそを曲げて座り込んでしまいました。

頬を膨らましながら、瞳は少しずつ視界を滲ませて、今にも溢れそうになります。

すると目の前に、小さな花が咲いています。

溜まった涙を袖で拭い、花を引っこ抜いた少女は


「好き、嫌い、好き、嫌い....」


花びらを一枚づつ、ちぎりながら、さっきの男の子を思い浮かべて数えていくのです。


「好き...嫌い...」


「嫌い」


花びらは無くなってしまいました。

少女は、また頬を膨らまして辺りを見回します。

すると、少し離れたところにまた同じ花が咲いています。

再び手に取り


「好き...嫌い」


と、数を数えていきます。

大人になれば、パッと見るだけで分かってしまうほどの花びらの数を必死に数えながら、男の子を思い浮かべ


「嫌い...好き....嫌い」


また「嫌い」で終わってしまいます。

少女は何度でも繰り返します。

自分が納得するまで、その言葉で終わるまで、何度でも花をちぎって想いを乗せていきます。


「好き...嫌い...」


「おいっ!何やってるんだよ」


すると、男の子はやはり少女が心配なのか再び戻って来てしまいました。


「あっ、なんでもないっ!!」


少女は慌てて、その花を捨て、男の子の方を見ます。


「ほら、行くぞ!手出せよ!」


男の子は、また手を伸ばして少女を連れて行こうとします。

少女も、気持ちが落ち着き、手を伸ばしその手をギュッと握り立ち上がりました。

それを引っ張る様に、男の子は力を入れて 

みんなの元にと連れて行く。


「何してたんだよ、花ちぎりながら」


「なんでもないっ!知らない!」


少女は、頬を膨らませるも、その頬は赤く染まり、握った手は繋いだまま駆けていく

捨てられた、たんぽぽの花には、一枚の花びらを残してーーーー

やがて、たんぽぽは綿毛になり、それが芽となり、冬を越え、またこの季節に黄色い花を沢山咲かせるように、少女の小さな恋心は、小さな男の子に運ばれ、その心に芽吹き、いつかその恋が花咲く時までゆっくり季節を超えてゆくーーーー

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る