第1話 ダブルチーム


「そいつに渡すな!!」


相手の監督が、指示を送る。


相手はボールが入る前も厳しくマークしていた、ボールが入った瞬間にはもう一人寄ってきた。いわゆるダブルチームの形。

(ダブルチーム=2人で1人の選手を守ること)

しかし、次の瞬間、テツはいとも簡単にゴール下でバンクショットを決めていた。


「よし、それでいい!テツ、グッシュー!グッシュー!」


監督が叫ぶ。


グッシュー=good shootの意味らしい。

(ナイッシュー=nice shootが一般的だが、監督は独特のイントネーションでグッシューと叫ぶ)


「ナイス、テツ!」


パスをいれた主将のゲンとハイタッチをかわす。


「たりめーよ!パスが良い。」


と自陣の守備につきながら笑顔で返す。


「ハハッ、たりめーよ!てか、相手のサイズがないから入れやすいわ。」

【テツ=嵐 哲(あらし てつ) 物語の主人公】

【ゲン=間宮 源(まみや げん)】


テツは中学校三年の時点で187cmの身長があった。


「簡単に持たすな!!」


相手の監督が叫ぶ。相手のディフェンスは決して悪くない。


ゲンのカットインから、ふわりと浮かせた優しいパスに空中で合わせシュートを決める。


「グッシュー!グップレイ!」


二人を監督が称える。


「二人とも調子良さそうだね!」


チームメイトのヨネが声をかける。

【ヨネ=米津 幸太郎(よねづ こうたろう)】


「たりめーよ!」


ゲンとテツ、二人揃って答える。


しかし、本当にここってタイミングでパスが来る。練習通りの形とはいえ、試合で簡単に決まるとは。関心してしまう。



「ビーーーー!」



「タイムアウト!白!」



相手は、たまらずタイムアウトを取った。


「いいか、あいつには最初から二人つけ!他にやられる分は仕方ない。」


相手の監督が早めのダブルチームの指示を出す。


「いいか、疲れたら交代できる。あいつに好き勝手させるな。」


シンプルなディフェンスの指示だった。


再開後、相手チームの3ポイントシュートが決まった。


マークが甘かったと、ヨネがボールを取り悔しがっている。


「早く出せ!!」


ヨネに声をかけた。

相手のディフェンスの良い二人がダブルチームで守る。そのダブルチームをかいくぐって、


ゲンが受け取った。


「バックコートからダブルチーム!まだ1クォーターだぜ!」


と、言いながら嬉しそうにドリブルを開始し、二人をかわした。

その綺麗で俊敏な身のこなしに、正直、味方ながら、目を奪われた。


「テツ!」


一瞬動きが止まっていたのだろう。

ゲンに声をかけられ、慌ててゴールに向かう。


ゲンはテツのマークマンを引きつけ、ノーマークのテツがシュートを決めた。


「よーーーし!グップレイ、ゲン!」


監督は手を叩き、そのプレイを称賛した。

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