むかし むかし あるところに…

息子が3歳ぐらいからずっと、



寝かしつけるために昔話や童話を読んでいた。



最初は本を読んでいたが、


部屋が明るいと子どもは眠れない。


そこで、布団の中に入って息子に添い寝しておはなしをした。



桃太郎や浦島太郎や赤ずきんちゃんなど、


自分の知っている昔話や童話を


次の日も次の日も、


そのまま次の日もおはなしをしていた。




「はい、おしまい」



話し終えると決まって



「もう一個、おはなし」



と言い出す。



「あと一個でおわりな」



そうやって、


毎晩のようにおはなしはつづく。



問題が発生する。



ネタ切れだ。






仕方がないので、




前に一度聞かせた話をはじめると



「前にきいた。ちがうの」



と言ってきた。



ちゃんと子どもは覚えていた。




これは困った。



そこで



「むかし むかし あるところに


おじいさんとおばあさんが・・・・・」



「また、ももたろう」息子が言った。


「いやいやちがう」



「おばあさんが 川で洗たくしていると



どんぶらこどんぶらこ


大きなたまごが流れてきました」



一気に息子は興味を取りもどして



「それから それから」




息子は頭を持ちあげて、私を急かした。



夜毎、そのたまごからは



恐竜、宇宙人、ヒーローが生まれてきた。



息子の喜ぶ顔が見たくて、




今夜もたまごを生み落とす。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る