第20話 オーパーツ

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」

「カ、カワ島ー!もうやめれー!」


 カワ島は各テーブルに残された物を今も狂った様に食い漁っている。レストスペースは既に物が散乱しぐちゃぐちゃだ。スタジオ利用者は我先にと出口に急ぎ、スッポンの男子大学生を最後に全員姿を消した。なおスタッフのゴスリス姉ちゃんは頬杖をつき笑いながらこの劇を眺めている。


「モット…モットーーーー!!」

「きゃはは、汁捨て箱のやつも飲んでいっすよ〜」

「おい!こら!リス!」


 ゴスリス姉ちゃんの言葉に反応したカワ島は狙いを汁捨て箱に狙いを定め”ドシン!ドシン!”と進撃して行く。そして汁捨て箱を”ガッ!”と掴み縁を口に付けた!


「や、やめろーーー!それをやったらもう俺はお前に何て声を掛けてやれば分からーーーんー!!」


”ゴク!ゴクっ!ゴク!ゴクっ!”


 俺の叫びも虚しく”ゴクゴク”だけが鳴り響いた。俺達はもう何も出来ずにこの悲劇を見るしかない。

 捨て箱を逆さにする事数秒、ほぼ残りがなくなったのか縁から口が離れ最後の一滴が落ちてカワ島の口の中に吸い込まれた瞬間 ”ピューーーー!” と音と同時にカワ島のサイボーグの半身から蒸気が勢いよく吹き出した。次に直立不動になったかと思いきやそのまま”ドッシーン!”と床に倒れ込んだ。


「カ、カワ島ーーーー!?」


 カワ島の側まで近寄ってみたが意識はない。思っ切りビンタもしてもうんともすんともしない。こいつはヤバそうだ。


「姉ちゃん!すまん!ツケで!」

「おいっす〜。弁償分もおなしゃす〜。払わなかったら訴えるよ〜」


 俺達はカワ島を担ぎ瞬時に退散した。


 動かない半サイボーグの体の大きいカワウソを運ぶ俺達の姿は、道中、電車内にて沢山の動物達から異様な目で見られた。やっとこさで帰宅出来たものの意識が戻らないカワ島に俺達は頭を傾げた。


「…起きんな」

「やっぱ病院か?」

「ふむ」


 ネズミ病院に駆け込むか考えたが治療費が勿体ない。解決の糸口も見つからず腕組みをしながら頭を悩ませているとカワ谷がある事に気が付いた。


「…カワ島のサイボーグ部分って何か見覚えないか?」

「…言われてみれば」

「デジャヴ」


 今まで深くツッコミを入れなかったけど、カワ島は左半身がサイボーグなのだ。”俺達フェス”の爆発より左半身が吹っ飛ぶという普通は生きている事すら叶わないイベントがあったにも関わらず、ネズミ総合病院の謎技術の粋を集結させ生還を果たすというクレイジーな体験をしているカワウソこそこのカワ島である。そしてその半サーボーグの体は現代でも製造不可の技術であろうのはズブの素人の俺達でも分かりえる。正にオーパーツ。

 だが破損した装甲板の隙間から覗くパーツに俺達には何やら見覚えがあった。


「…これって…いやまさか」


 そう言いつつも俺は押し入れの奥から外装が半透明で取手や中身の段々が青紫色のボックスを持って来た。そしてボックスのストッパーを開けて中から一つのパーツを取り出しカワ島の中のそれと見比べた。


「あああ!や、やっぱり!これミニ○駆のギアだ!!」

「だよな!!」

「レ○スティンガー」


 驚いた事にカワ島にはミニ○駆のパーツが使用されていた!装甲板が外れている他の部分も見てみるとやはりミニ○駆の物であった。間違いない、カワ島の左半身はミニ○駆のパーツで構成されている!そうと来れば話は早い。


”カチャッ、カチャカチャ”


「ここはこうで…こうすればいいのか?」

「いや違うだろ、シャフトはこの位置に持っていってだな」

「ギア比も変えてみるか」


”カチャッ、カチャカチャ” 


「ん?これモーターだ」

「おいおい、狼モーターじゃねぇか。こんなんすぐに焼き切れんぞ」

「安定性持たせる為にア○ミックチューンモーターに変えるぞ」


”カチャッ、カチャカチャ”


「破損した装甲板はどうすればいい?」

「ZMCパテで整形すっか」

「肉抜きして熱も逃しやすい様にしておこう」


 そうして4時間が経った…


「か、完成した」

「本当に動くのか?」

「パワーオン」


 緊張の一瞬…カワ島の乳首スイッチを捻る!


「ウィーン、カワ島再起動イタシマス」

「やったー!」*3匹


 モーターの変更と冷却性向上からその後のカワ島のドラムは抜群の安定性を勝ち得た。

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