7.カフェとブラウスの膨らみ

 少女との「夢」での再会は、早速その夜に訪れた。今回は文字通りの「夢」らしく、眠っている間に彼の眼前に現れた。


 今回は、背景まではっきりと見ることが出来た。その場所は、カフェであった。


 彼女はそこでエッグベネディクトを注文したようで、小動物のように頬を膨らませながら、はむはむと頬張っていた。


 高い位置で二つに結わかれた巻き髪が、彼女の動きに合わせて揺れる。


 そして、彼女はその幼さの残る顔に似合わず、服の上からでもわかるほど豊満な胸の持ち主であった。


 白いブラウスの奥から二つの丸く柔らかな肌が盛り上がり、押し上げている。


 重くて肩が凝るのか、テーブルの上に胸を乗せるのが彼女の無意識の癖のようだ。


 それとも、ひょっとしてわざとやっているのだろうか、とも思った。自分の気を引こうとして、意識的に?


 しかしどちらにしろ、現在の俺(もしくはカフェにいる自分)は彼女の胸元に視線が落ちていくのを感じた。それを必死に振り解いて、少女の目を見つめて話そうと心掛ける。


「あ、もしかして」


 こちらの視線に気が付いたのか、彼女が何かを言いかけてきた。ぎくり、と心臓が鳴る。だが、続けられた言葉は予想とは違うものだった。


「一口、いります?」


 えっ、という声が口から洩れる。返事を待たずに彼女は、食べていたエッグベネディクトをフォークで小さく切り取った。


「はい、あーんして下さい」


 えええ、まじか。すごく恥ずかしい。

うさぎのようなくりくりの瞳が、こちらをじっと見つめている。


 周りの目が少し気になり、ちらりと辺りを見回す。誰もこちらを見ていない。それならいいか、と甘酸っぱい気持ちに身を任せて、俺は小さく口を開けた。


 ソースが垂れないように片手で皿を作りながら、少女は身を乗り出してくる。屈んだ際に襟元から、彼女のより深いところの肌が見えかけて、思わず目を逸らした。


 エッグベネディクトを刺したフォークが口の中に挿入される。


 ぱくり。おそらく自分は今、かなり真っ赤なんじゃないかと思われる。もぐもぐと咀嚼はしているが、味などほぼ分からないに等しい。


「美味しいですよね」


 にっこりと花が咲くように微笑まれる。そんなことをされたら「そうですね」としか答えようがない。


 正直照れ臭くて、もう目を合わせるのですら一苦労だった。それでも彼女の方を見ると、彼女も淡く頬を染めているようだった。


カフェの照明に照らされて、彼女の笑顔も輝きを増していた。


 そして、そうこうしているうちに、またいつもの靄が目の前に広がっていった。


 「夢」はそこで終わり、はっと気がつくと俺は、見慣れた天井を見上げていた。


 ぼんやりする頭をふらふらとさせながら、ベッドから起き上がり、コップに水を注いだ。


 手を動かしながらも、まだ景色にはうっすらと彼女の姿が浮かんでいた。


 走馬灯のようだった。

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