舞台裏②

「サボって眺めた桜の感想は?」

「満開。人も少なくて、最高」


 春川と出会った週の金曜日。昼休み。

 美術室で休憩していると鈴木が訊ねてきた。


「昔の恋に想い馳せちゃったか? ええ?」

「……生徒に会った」


 ウザったい絡みの鈴木に春川と遭遇したことを白状すると、腹を抱えて笑い始めた。本当にいい性格してるな、こいつ。


「あはは! それは仕方ない! 地元なんだから! ヒヒッ! しょうがない! 秋田先生だけの聖地って訳にはいかない!」

「ズッキー先生、うざーいっ」

「ひぃ、ひゃっ、ひゃっ! 君は私の生徒か?」


 ここまで大ウケしてる鈴木はなかなか収まらない。物凄くウザいがここは我慢だ。頼みごとがあるんだから。


「……鈴木、ちょっと調べて欲しいことがある」


 ひとしきり笑い、大人しくなった鈴木におもむろに頭を下げる。


「……ふぅん?」


 見えなくてもその表情はわかる。聞こえないはずの口角を釣り上げる音が耳を撫でる。頼れる不良教師は楽し気に笑った。

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