第39話 青い春から続く気持ちを優しく呟く。

私の名前は青山いちご。生徒会長を目指す高校1年生。

周りからは天才といわれることが多い。

実際に言うと私は頭は良くない。頭が良いと言えるところまで持って行っているのだ。

つまり、人一倍に努力をして、今の地位を保っている。

私は憧れの先輩を目指しこの高校に入学して、その先輩の背中を追い続けてきた。

思いもしなかった。その憧れの先輩と争うことになるなんて。


放課後はよく図書室で勉強をする。参考書もあるし静かだし、勉強をするのには好条件の場所だ。

参考書を探していると、あるカテゴリー名が目に入った。

『恋愛』

今、私には好きな人がいる。今のところ勝ち目は見られないけれど、アタックしていくしかない。

恋愛に関しても頭が悪いと言えるため、こちらも勉強していくしかなさそうだ。

周りに人がいないことを確認してから、そのカテゴリー内の本を一冊手に取る。

『恋愛成就のためにするべきこと10選』

人気の本なのか、それとも古いのかどちらかわからないが、その本はすごくボロボロになっていた。

たった10選で恋愛が城主するわけないとは思いつつ、少しページをめくり読み進める。

するとその本の内容は驚くべきものだったのだ。

私は表紙ともう一度見直した。

「中身が違う・・・?」

そう、本の中身が違っていたのだ。

その本の内容はこの学校の体育祭の後夜祭にまつわるジンクスが記されていた。

そのジンクスの内容と、おそらくそのジンクスを行ったであろう歴代のカップルと思わしき人たちの名前までもが書かれていた。

以前までの私なら、すぐにその本を回収し、先生に届けてたであろう。

私はその本の内容をしっかり頭に叩き込み、元あった場所へ―――いや、少し見つけづらいような位置へと戻した。

やはり私は頭が悪いようだ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「赤海先輩、寝ちゃったんですか?」

「・・・」

反応なし。すっかり寝入ってしまっているようだ。

一人先輩を教室に置いていくのは気が引けるが、これからジンクスを実行しに行く。


私は人気のないところにただ一人、花火が打ちあがるのを待った。

その間、私は彼のことを考えていた。

誰かのことをここまで想い、傍にいたいと思ったのは初めてのことだった。

私が声をかけたあの日から、私の日常は彩り始めた。あの人のおかげだ。

経験するはずのなかった痛みや悲しみもあったし、これからもあるだろう。

けれどそれ以上の喜びや幸せが待っていると確信している。

だって今この瞬間がそうなのだから。

もし彼の隣に私がいない未来が待っていたとしても、あの時彼に声をかけなければと後悔することは決してないと断言できるほどに今、凄く楽しい日々を過ごせているのだ。

もし負けてしまったとしても、後悔だけは絶対にしたくない。勉強も恋愛も全力でやってやるんだ。

てか、らしくもなく弱気になってるな、私。

いや、本当の私はいつだって弱いのだ。それを隠すようにいつも強く見せようと振る舞っているだけなのである。

私にとってその弱い部分も見せられる唯一の存在が、彼なのである。


これまで勉強ばかりしてきた私だったが、この感情はやはりうまく言葉にすることができない。

語彙力皆無、文脈はぐちゃぐちゃ。

これはしょうがないことなのである。だってこんな感情を答える問題なんて、今まで出会ってこなかったのだから。

そして恐らく、この答えが載っている参考書や問題は存在しない。

だから自分の目で、心で、自分自身で答えを導き出さなきゃいけないのだ。

今の私の語彙力で、知能で表すのだとしたら―――

「好きだよ。駿兄。」

花火が打ち上げられ空を彩る。夜の空を飾るその花はとてもきれいだった。

「ジンクスこれでいいのかな・・・。結構恥ずかしいけど・・・。」

『~後夜祭ジンクス~ 好きな人へのあふれ出る想いを、噛みしめるように、優しく届けるように【呟く】!!!』

「もっと勉強しなきゃな。今のじゃ全然、足りないや。」

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