第14話 日曜日がゆえに女子とお出かけ。午前

日曜日。今日は白谷さんとお出かけだ。

9:40 噴水公園 噴水前

昨日は綾音に

「待ち合わせで女の子を待たせるなんて禁忌だよ!遅くとも10分前には集合場所についてなきゃ!」

と言われたので、電車の都合で少し早くなったがこの時間に到着。

てか今考えたら家向かいなんだから一緒に来れば良かったことね?

もう公園着いたし別にもういっか。

まあ、白谷さんが来るまでもう少しかかるだろうから適当に時間をつぶすか。

スマホゲームでも・・・。あっ。

「いい?お兄ちゃん。スマホなんていじっちゃだめだからね?相手に『私といる時間退屈なんだ』って思わせて傷つけちゃうから!」

とかも言ってたから、今のうちからスマホと距離を置くか。

マナーモードにしておこう。

たまには外の風景を眺めるのもいいかもな。


とんとん。ボーっとしてると肩をたたかれる。

「く、黒川くん・・・。おはよ・・・」

「わあっ!は、白谷さん!・・・おはよう!」

ボーとしすぎたためかなりびっくりして大きな声を出してしまった。

「ご、ごめん。驚かせちゃったね。」

「いやいや、俺がボーっとしすぎたからさ!」

「そ、そう。てか黒川くん早いね。まだ15分前くらいなのに。待たせちゃった?」

こういう時に返す言葉は決まってる。

「いや、今ところだから大丈夫だよ。」

実際、本当に今来たとこだが、1時間後に白谷さんが来てもこの言葉を返さなきゃいけないという、社交辞令のような言葉である。

「そっか、よかった。」

(実際私は2時間前には到着してて待ってたんだけど、トイレ行ってる間に黒川くんが来たことは内緒にしとこ・・・)

「それじゃあ少し早いけど行――!!」

白谷さんなんかもじもじしてる?そうだ、これはあれだ!

「白谷さん、今日の服装よく似合ってるね。」

THIS IS THE BEST ANSWER!!

まず女子は服装の感想を求めるんだ。よくラノベで

「今日はどうかしら?」

「ああ、いい天気だね。じゃあ行こうか?」

「もう馬鹿!」

「??」

みたいな鈍感野郎のイライラシーンをよく目にするからな。

俺は敏感。こういうことには気づいちまう。

まあ実際、お世辞抜きにしてもよく似合ってる。

フリフリの白のワンピース。ザ・清楚って感じで、お姫様感も感じられてめちゃめちゃ可愛い。

「っ!あ、ありがとう・・・」

(なに!どうしたの黒川くん!まずどの店行こうか考えてたらいきなり褒めてくるとか!確かに今日のために買った服だけど、不意打ちはずるいよ!)

「じゃあ、行こうか白谷さん。」

「うん。」


「白谷さんはどの店に行きたいとか決めてるのか?」

「う、うん、ある程度は。けどなかなか絞れなくて・・・」

「なら、行きたいとこ全部行こうぜ。俺は今日何も予定ないし。もちろん、白谷さんがよかったらだけど。」

「えっ!いいの?じゃあ全部行きたい!」

こういう時のためだったのか妹よ。

『女の子がどっちか迷ってたら両方してあげること!気を使わせないようにね!』

ありがとう綾音。白谷さんすごく嬉しそうだ。

「じゃあ、まず――」


1件目、ここは女子のファッションの最先端を取り入れている店らしく、どこを見回しても、女子、女子、女子。

(恥ずかしい・・・)

男は俺一人。そりゃ恥ずかしいに決まってるが、目の前の白谷さんのきらきらした表情を見れば「恥ずかしいから外で待ってる」なんてとても言えない。

「ねえ、黒川くん。こっちとこっちどっちがいいかな?」

「そうだな。どっちも白谷さんには似合うと思うけど右だな。」

両方共白谷さんが良いと思って選んだ服だ。どっちかだけを誉めず、とりあえず両方褒めてから選ぶ。これも綾音に教えてもらった。

「じゃあ、こっちにする!あっ、見て黒川くん!こっちも可愛いよ!」

「ああ、確かに可愛いな。」

全く、あのおとなしい白谷さんはどこに行ったのやら。

ホントすごくいい表情だ。てか、可愛いのはお前だよ。

「可愛いのはお前だよ。」ボソッ。

!?

やばい言葉にしちゃった!

俺は時々、思ったことをそのまま口に出しちゃうことがある。

「え?く、黒川くん、今、なんて?」

まずい聞こえてたのか?

店内はガヤガヤしてるしボソッといったからおそらくははっきりとは聞こえていない。

そう信じてごまかす。

「あ、ああ、か、可愛いのは前の方かなぁって・・・。そ、その手に持ってるやつ。」

「な、なるほど、さっき黒川くんが選んでくれたやつだね。私もそう思った。」

(黒川くんが私のこと可愛いのかと思っちゃったよ・・・。まあ、黒川くんがそんなこと言うわけないんだろうけど。)

(うまくごまかせたか?多分、大丈夫だよな?)

ブーッ。ブーッ。ブーッ。


「ありがとう黒川くん。おかげでほしかったの買えた。それに荷物まで持ってもらっちゃてごめんね。」

「いいからこれくらい。それよりまだ見たい店あるんだろ?」

「うん。次はね――」

「っとその前に、昼ごはん食べようぜ。お腹空いただろ?まだピークじゃないだろうし、待ってもちょっとだと思うよ。」

「えっ?あっうん。食べたい。」

(ちょっと期待してたけど、誘ってもらえるなんて・・・!嬉しい。)

「じゃあ、白谷さんの好きな食べ物でも食べに行こうか。」

「じゃあラ・・・」

(待って待って。ラーメンは女の子らしくないよね!?初デートに即答でラーメンってやっぱ引かれるのかな・・・?ここは我慢して、うまくごまかして・・・)

「ラ、ライスは朝食べたから、昼はパン系が良いかなあ・・・」

(意味わかんない!我ながら意味わかんない!けど、黒川くんになら多分ごまかせる。)

「そっか、なら、ラーメン屋とか?いや、女子と二人で食べるのにラーメンはちょっとあれなのかな・・・」

「いいと思う!」

「おお・・・、か、かなり乗り気だな。」

(しまった。嬉しくてつい・・・)

「いや、まあ、黒川くん食べたいみたいだし?服買うの付き合ってもらってるから、お昼くらい決めていいから!」

「おお、そっか、ありがとう。じゃあ、俺はハンバー・・・」

「さ、早く行こラーメン店!」

「あっ、はい。行きましょうか。」

どうやら白谷さんはラーメンが好きらしい。

敏感がゆえに気づいてしまった。けど、そんなの隠さなくてもいいのに。

「じゃあ、ここから近くて美味しいのは、龍の巣ってとこだよ。ここは味噌ラーメンがおすすめ。・・・って友達が言ってたよ!友達が!」

バレバレのウソ可愛いかよ。

「ああ、友達がか。じゃあ、そこ行ってみようか。」

「うん!」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「駿のやつ、全然電話でない・・・」

まさか先越された・・・?!

急いで駿の家に行く。

ピンポーン。

「はあい。あっふみちゃん?今開けるね。」

駿の妹の綾音。私の友達でもあり、強い味方でもある。

がちゃ。

「おはよー。ふみちゃんどうしたの?」

「おはよ綾音。駿は何してる?」

「今お出かけ中でいないよ。」

「それってやっぱり・・・」

「うん、女の子と、ね。」

「くうううう!先越された!」

「とうとう恋のライバル現れちゃったね。」

「そんなのんきなこと言ってる場合じゃないから!なんで引き止めなかったの!」

「私はふみちゃんだけの味方じゃないからね。あのどうしようもない馬鹿兄貴のことを好きになってくれてる全員の味方でありますのだ!第一、ふみちゃんがぼやぼやしすぎたんでしょ。お兄ちゃん実は人気あるの知ってるくせに。」

「私だけだと思ってたのに!てかそうだけどさ!でも、今までは言い方悪いけど、私の敵ではないって感じだったんだよね。」

「ホントに言い方悪いね。確かに、ふみちゃんは可愛いけど、今回の敵はかなり可愛いね。」

「だから焦ってるの!てか、何で知ってるの?」

「白谷さんて向かいの人でしょ?私と家出る時間一緒なことよくあるから、いつも見てて可愛いなって思ってたんだよねぇ。まさか、お兄ちゃんのことが、なんて思いもしなかったけど。」

「なるほど、じゃあ今日は陽花里と一緒てことね・・・。よし、綾音、私たちも出かけるよ!」

「ええ・・・、めんどくさいよぉ。」

「お昼ご飯ご馳走してあげちゃうけど?」

「行く!じゃあ、ママに言ってくる!」

綾音はホント子供っぽくて、素直で可愛いなぁ・・・。

まあ陽花里に先手とられたのは私がのろまだったのが悪いんだから、特に今日は邪魔はしない。陽花里も頑張って誘ったんだと思うし。

けど、すごくいい雰囲気で、キスまでしそうになったら・・・、ダメ!そんなの絶対ダメだよ!その時は遠慮なく邪魔してやるから!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る