第2話 はみ出し者たち①

 学校というシステムの不具合を語れば1日では語りつくせない。誰もが学校に馴染まなければならず、全員が同じでなければ異分子となる。


 例えばヤンキー。常に眉間に皺を寄せ、クラスメイトを威圧する。勉強など面倒臭い、授業などかったるいと言いながら同族同士でつるむ。


 例えばオタク。持ち物にアニメグッズを取り付け、アニメのセリフやネットのスラングを会話に織り交ぜてくる。それを気持ち悪いと笑われる。


 例えば個性。自分の中にある信念を隠さず、自分らしさを貫いた事で、周りがどう扱っていのか判らず孤立する。


 例えばぼっち。学校に馴染めず、かといって行かないという選択肢も無い。クラスからすれば居ても居なくても変わらない存在。


 自分ではそう思っていなくとも、周りの考えを全て統一できるはずもない。クラスメイトが向けてくるイメージを払拭する術を持たないのであれば、イメージ通りのキャラクターが出来上がって一人歩きを始める。


 そして、同級生のイメージを払拭できなかったクラスで浮いている4人が、意気投合し仲良くなるまで時間はかからなかった。


 最初のきっかけは、至って単純な事だった。授業で必ず1度は訪れる地獄。友達がいない人間にとっては、どんな暴言も霞みかねない教師の言葉。


「はい、じゃぁ4人1組になってディスカッションを始めて」


 英語の授業で告げられたその無慈悲な言葉。すぐさま男子同士、女子同士、男女混合のグループみが出来上がっていく。その中で出遅れたり組めなかったりした残り者の4人で編成されたのが初めてだった。


 その後は徐々につるむ様になり親睦は深まっていった。


 昼休み、いつもの様に空き教室に集まった4人。


 明村勝吾。鬼塚葵。久瀬敬輔。大関心志は昼食を取りながら適当に駄弁っている。


「いつもカップラーメンって身体に悪いんじゃない?」


 購買で買ってきたパンを食べながら、心志が聞く。


「そんなことないさ。スープは飲まないし、カップラーメンは学校でだけだから」


 そう答えたのは敬輔。ラーメンの湯気に曇った眼鏡を拭きながら笑う。その顔は成端で、黙っていればイケメンだと評価されるだろう。


 だが実際は、


「親に言っても認めてくれないからな。ヴィーナちゃんは日本に来た時カップラーメンに出会い、その美味しさに感動して学校でも家でもカップラーメンを食べているんだ。勿論、戦いの後にも食べる。あれは後世に残る神アニメだ」


 喋り出すと見事にオタクだった。


「つーか、お前もいつもパンだろ」


 コンビニ弁当をかきこみながら、短髪の銀髪を逆立たせた勝吾が心志に視線を向ける。


「僕は好きで食べてるわけじゃないんだけどね」


 両親の教育方針として、高校生になったならば生活にかかるお金は自分で稼げと言われているので、アルバイトで稼いだお金で昼食を買わざるを得ない。ならばお金のかかる物など買えない。


 遊行費の捻出も難しいため、いつの間にかぼっちになっていた。

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