第24話
時間というのはあっという間に過ぎるもので、とうとう、当日がやって来た。
「シュトュル様、とっても綺麗ですよ」
メイドにそう言われ、シュトュルは閉じていた目をゆっくりと開く。
「わぁ…」
思わず、感嘆の声がこぼれる。
ちょっと体を捻り、髪をみれば、スッキリと纏まった髪にはレイディエ殿下から頂いた金の蝶の髪飾りが光に反射して輝いていた。
シュトュルの心はソワソワとドキドキが入り交じる。
その後は馬車に乗って舞踏会の開催地である王宮へと向かう。
シュトュルは馬車から見える煌びやかな王宮をじっと見つめた。
(いつもは、気が重いだけだけれど…今日は気が重いと言うより、緊張と楽しみな気持ちがごちゃ混ぜだわ…でも、この気持ち、ちょっと心地いいかも)
シュトュルはふふっと笑う。
だから…
いつになく、静かで大人しいレヴィアタンの事などすっかり忘れていた。
王宮の一角。
そこはシャンデリアの光に照らされた淑女たちの色鮮やかなドレスが輝き、それぞれ個人の性格を現す香水の香りが漂い、大理石の床を歩く靴音、談笑の声、そして、奏でられる音楽が混じり合う。
(こういった煌びやかな場所はどうにも落ち着かないわね…)
シュトュルはそっとため息をつく。そして、ため息は他の音にかき消される。
今、目の前にある景色がキラキラ、チカチカ、手の届かない夜空の星の様に、何処か遠いものに感じたその時だった。
「シュトュル」
すぅっとシュトュルの耳に聞こえる声。
はっと振り向けば、そこに居たのは。
シャンデリアの光を受けてより一層まばゆく輝く蜂蜜色の髪に、神秘的な紫色の瞳、そして、白色を基調と礼服姿。
「レ、レイディエ殿下!ごきげんよう」
シュトュルは慌て、でも、優雅にそして可憐に挨拶をする。
そうすれば、レイディエ殿下はふっと微笑む。
たったそれだけで、シュトュルの頬は一気に熱くなり、顔も上手く見れず、視線を少し外し気味。
心臓は、レイディエ殿下にも聴こえるんじゃないかと思うぐらい、ばくばくとしていた。
(ど、うしよう…舞踏会、始まったばかりだって言うのに、レイディエ殿下の事、まともに見れないし、顔、絶対に真っ赤だわ…途中で倒れそう…!)
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