第18話

シュトュルは、無事、傷の治療が終わり自宅で安静にしていた。


(シュトー…守れなくてごめん。その美しい銀髪も少し切る事になったし…)

レヴィアタンは申し訳なさそうに呟く。

「髪は別に大丈夫よ、髪はまた伸びるわ。それに、レヴィアタンは私をレイディエ殿下の所まで導いてくれたわ。ありがとう、レヴィアタン」

(…それにしても、早く、元気にならないといけないわね。第二王子からデートのお誘いが来たんだから)

レヴィアタンがクスクス笑う。シュトュルは顔が少し赤くなる。

(ふふ、好感度の上げ所ね。あぁ、この恋を壊す日もいよいよ近づいてきたわね!楽しみだわ…)

その言葉を聞いた瞬間、シュトュルの心が痛んだ。

「…なんで、痛いの?」

(シュトー、何か言った?)

「…うぅん、なんでもない。私、少し寝るね…」


シュトュルはまだ、その感情の名前を知らない…



「あ~ぁ、おかしいなぁ…なんで、なんでっ!」

ネーベルは、枕を壁に投げつける。

その拍子にネーベルの影から何かが現れる。

(ネーベル、落ち着け。魔力が乱れているぞ…)

ネーベルの影から現れたのは金の瞳に黒い体のライオン。

「シャッテン…」

ネーベルが契約した魔獣だ。

ふわりとネーベルの体を包む。

「なんでなのよ…わざわざ狂暴な熊の魔獣を買ったのに!わざわざ魔獣除けをすり替えたのに!なんで、死なないのよ。なんで、レイディエ殿下がっ!レイディエ殿下の隣に相応しくないのにっ!」

(ネーベル…お前、どうしてそこまで、あの女を憎むんだ)

ギロリとネーベルはシャッテンを睨む。

「あぁ…そういえば、シャッテンは知らなかったわね。私は、昔から殿下の事を好きだった…殿下の為に殿下の好きな色とか、服とか、髪飾りとか、お菓子とか、趣味とか…なのに、爵位が一緒なのに!あの子が選ばれた!」

ネーベルは服の裾を握りしめる。

「あの子は、いっつもおどおどしてて!人との会話は最低限、いつも、人を避けて!あんな子、殿下の婚約者に相応しくないっ!同じ爵位なら、私の方が相応しい!私はあの子を許さないっ!」

(ネーベル…)


暗い部屋の中

シャッテンとネーベルの回りに渦巻く黒い霧にネーベルは気づかない。

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