クリスマス
街中が、なんだかソワソワしている。愛を歌う曲が流れて、街路樹に電飾が巻かれた。寒さを凌ぐように手を繋いで歩く人が増え、駅前に大きなクリスマスツリーが立った。雪だるまやサンタクロースの飾りが店先に並び、ショーウィンドウにな並ぶおもちゃはクリスマスプレゼント用にとでも言うかのように、プレゼントの箱や、子どものマネキン、赤や緑のリボンで飾られている。
そんな街の中を私は一人で歩いている。
街の色は華やかなのに、私の中はモノクロだ。コートの隙間から冷たい風が入ってきて、私を氷漬けにしようとする。あまりの寒さに手が悴む。今年は例年よりも寒いらしい。温め合う相手がいない時に限ってこんな寒さなんてあんまりだ。
こんなふうに言うと、ひとりが寂しいから君に会いたいのだと思われるかもしれない。でも、私が君に会いたいのはそんな軽い理由じゃない。
君が好きだからだ。
笑った時の顔が好きだ。目を細めて笑うその顔が好きだ。私を笑わせてくれるところが好きだ。面白い話をしてくれる時のおどけた表情が好きだ。優しいところが好きだ。君と一緒にいるだけでなんだかあったかい気持ちになれた。辛いことがあった時はずっと頭を撫でてくれた。不安な時は手を繋いでくれた。君と一緒にいるだけで、なんだか世界が輝いているみたいだった。なんてことない一瞬の全てが、宝石みたいだった。
だから、君に会いたい。
春はまだ遠く、風は冷たいままだ。目の前の景色が滲んだ。
早く、君に会いたい
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