Day11

明け方前、雨の音で目が覚めました。


暖炉の火は消えてます。

真っ暗なはずなのに微かに明るい。

見回すと、机に置いた水晶クラスターがぼんやり光ってます。

え?この世界の水晶って、光るの?


近づいて持ち上げたら消えてしまいました。

およ?何で?

机に戻そうとすると、またぼんやり光ります。


…何かに反応してる?

水晶を持ったまま動かしてみます。

置いてあった箱の近くが一番明るいようです。

これって焼き入れの時に使った核の粉じゃん。

箱の横に水晶を置いて、箱を開けてみました。


ギャーッ!!

Gとかおばけじゃないよ。

水晶が急に明るく光ったから、暗闇に慣れてた目が某大佐しただけ。


あー、びっくりした。

レベルアップのおかげか、すぐ目は明るさに慣れました。

すごいよ。部屋の中、煌々と明るいよ。

二階が無くなって太陽が真上にあるのかっていうくらい。

ちょっと明るすぎるので、水晶を箱から離してみました。

1mくらい離して、やっと前世の部屋の照明くらいになりました。


そういや粉売ってくれた鍛冶屋さん、箱開けっ放しにすると減ってくって言ってたね。

何か気化でもしてんの?


詳細に探ってみようと魔力感知を全開にしてみて分かった。

核の魔力が強すぎて分かりにくいけど、箱から魔力が漏れてる。

割と盛大に。

試しに討伐したスライムの核がストックしてある入れ物から半分に割れた核と3分の1くらいの核を取り出します。

じっくりと魔力感知で見比べると、漏れ出す魔力に差があります。

粉の箱を閉じ、箱の代わりに半分の核を置きます。

うん、ちょうどいい感じの明かりです。

3分の1くらいの核に替えると、ランタンくらいの明るさです。

1m離れてて。


………これ、大変なことに気付いちゃったのかも。

核と箱を片付け、自分の魔力を水晶に供給してみました。

まじかー、光るわー。

供給する魔力量で光量も変わります。


水晶のランプなんて見た事無いし、聞いたことも無いです。

うわー、えらいこっちゃだよ。

これ、新発見だとしたら世間への影響大きいよね。

この情報だけで大儲けできちゃう。

もし、発見されてるとしたら、秘匿されてるってことだからもっとやばい。

あー、どうしよう。


でも、発熱せず、明るく、酸素消費も無い明かり。

多分濡れても大丈夫。

しかも燃料は自分で手に入るスライムの核。

洞窟用に最適じゃん。

よし、一個だけ作って洞窟専用にして門外不出にしよう。

びっくりな発見に、完全に目が覚めてしまったし、これから作っちゃえ。

こんな時間なら訪ねてくる人もいないから、見られる心配はないもんね。


また鉄インゴットを出してきて、前回のミニランタンと同じように作っていきます。

ただし、下部構造はオイルランタンのタンク部を真似ます。

入れるの核だけど。

芯が通るはずの円筒形の部分に、横から穴をあけた円柱をぶっ刺します。

ローマ時代の金属バルブを真似てみました。


でも、また円です。構造も小さいので四苦八苦しながら調整です。

これはもう、円の作り方を練習しろと言う啓示か何かでしょうか。

水晶袋の中から適当な大きさのものを選び、円筒部の上に爪で固定します。

これで、タンク内の魔力がバルブを通して水晶に供給されます。

バルブで明るさも調整できる優れものです。

あ、折角発光部が耐水性なのに、筐体が鉄です。

錆びるな。

オイル塗っとこう。


いざ、テスト。

うん、いい感じです。

光量も最大だと、前世のキャンプ用LEDランタン並みです。

さっさと洞窟にしまいに行きます。

せっかく飾った水晶クラスターも、水晶袋と一緒に洞窟に隠します。

少しでも痕跡は隠しておこう。


外は明るくなっては来てますが、雨は降り続いてます。

あー、今日はお出かけ出来ないな。

雨だとね、足が小さくて接触面積少ない上に、体重軽くて摩擦抵抗低い私は滑りやすいんだよ。

さらに体温取られやすくて寒いんだよ。

親からも、雨の日は森に出ないように言われてたからね。


じゃあ、午前中は窓作りでもしよう。

お腹が空いたので、パンを咥えながら作業します。

仰ぎ窓を外し、それを材料に窓枠とガラス用の枠を作ります。

もぐもぐ。

木材加工は手慣れたものです。

枠を持って洞窟に移動。

もぐもぐ。


今更ですが、隠してる水晶、使っていいものだろうか…。

核を近づけられて光ったりしたらやばいよね。

もぐもぐごっくん。

試して見よう。

最初に作った部屋に置いてある袋から、小さな水晶をガラスに出来そうな量、取り出し、融合させます。

ぎゃー!融合させる魔力に反応して光ってる。

でも、かなり暗いな。

単なる魔力じゃなくて融合する力に変換されてると、反応弱いのかな。

しかも融合させてくと、光る箇所が減ってるよ。

ひょっとして結晶構造がまずいの?

水晶じゃなくて、ただの石英にしたらどうなるんだろう。

あちこちから光を発する透明な球をこねこね、こねこね。

わーい!光らなくなった!

ちゃんとした結晶構造じゃないと光らないんだね。

よかったー。


続いてもう一枚作製、こねこねこねこね。

二枚出来たので、枠に組み込みました。

よし、小屋に戻ろう。


鉄でヒンジ作って、横開きになるように取り付けます。

ついでに、内側にスライドバレルボルト(L字の棒をスライドするやつね)も取り付けて、完成!


ドアのロックも同じの(でかいけど)付いてるから、統一してみました。

これ、外からでも魔法使えば開いちゃうけどね。

外に出て、出来上がった窓を並べてにまにま。

ガラスに多少ゆがみが有るのが、かえって味があるね。


そうだ、ドアの横に石板取り付けて伝言ボードにしよう。

石筆見たことあるから買ってこよう。

留守の時、何度も来てもらうの悪いしね。


さて、窓が完成したので中でお茶しよう。

うん、今までは暖炉の明かりとランタンで生活してたけど、

日中はわりと明るくなったね。

にゅふふ。


窓が暖炉の反対側だから食料置き場にしてたけど、作業台を窓のとこに移動しよう。食料は食料庫へ!

作業台移動したら、オイルランタンなんかよりずっと明るい。

作業しやすいわー。

食料庫も、食料が入ったことで偽装度が上がりました。

いや、ただの食料庫らしくなったってことね。


じゃあ、秘密の入り口抜けて、水晶ランタン、初の実戦投入です。

いやー、明るいわー。

光色も太陽光に近くて、見やすいよー。

穴掘り最前線に向かう途中、晶洞の場所でふと足を止め、魔力放出!

ひょー!幻想的だわ!きれー!

私の周り、1.5mほどの水晶が発光してます。

ん?これって私の魔力影響範囲が1.5mってこと?

測定機になりそうだな。

ばらせないけど。


しばらく鑑賞してから穴掘りです。

ずごごごごご

うーん、結構石ってか岩?が出てくるな。

今まで、岩は、切断したい部分が砂になるようなイメージで魔法使って溝を掘って、溝を押し開いて割るようにしてたんだけど、

この黒っぽい岩、割れにくい。

なんか粘りがある気がする。


断面見てみたら、若干金属っぽい光沢が…。

しかも、金属粉っぽいのがくっついてやがる。

磁鉄鉱か!?

鉄抽出!

じわーって感じで、鈍銀色のものがあちこちから染み出してきます。


これで方位磁石が…いらないや。

いつでも山脈見えるもん。

夜の外出なんて自殺行為だからしないし。

でも、鉄が無料で手に入るのは嬉しいね。

どうせならクロム欲しいね。ステンレス欲しいから。

クロム抽出!

…出てこないや。

流石にそこまで都合よく無いか。

周りの黒い石から鉄を抽出して、こぶし大の塊出来ました。

結構含有率高いかも。


遊んでないで洞窟掘り進めよう。

私の目的は水脈だよ!

5m程掘り進んで、やっと磁鉄鉱エリア抜けました。

あの四角錐を底辺で張り合わせたような特徴的な磁鉄鉱も出てきました。

水晶クラスターの横に飾っとこ。

洞窟内だけど。

しかし、ほぼ水平に掘ってるのに色々な地層出てくるってことは、隆起した地層を直角に掘ってるってこと?

だと、この後また、磁鉄鉱エリアと水晶エリア出てくんのかな?


あー、お水欲しいわー。

早く水洗トイレ作りてー。

水を求めて更に掘り進みます。


ずごごごごご

ずごごごごご

ずご

ん?また岩か。

カットして……ぬお!硬ったい!

ほとんど砂にならない。なんだこりゃ?

見た目は鍾乳石っぽいな。

ちょっと周り掘ってみよう。

ん?下は掘れるな。

せっせと周りを掘ってみたら、出来かけの鍾乳洞の天井みたいにこぶが垂れ下がりながら硬ったい岩が続いてる。

なんじゃこりゃ?

あー、でも魔力心もとないな。

一旦鉄収穫して戻ろう。

洞窟内の小部屋の水晶クラスターの横に、磁鉄鉱の結晶と抽出した鉄の塊置いて、小屋に戻りました。


お、雨止んだな。

でも、地面ぐちょぐちょです。

飛び石置きたいけど、洞窟の存在ばらすようなもんだしね。

あー、靴、泥だらけだ。

扉の前で魔法で泥飛ばして入るのはいいけど、次、出る時、泥踏んじゃうよね。

そうだ、玄関ポーチ作ろう。

洞窟内からレンガ持ち出して、玄関前に並べます。

あ、ついでに伝言ボードも付けよう。

小屋の正面が一気におしゃれになるね。


伝言ボードは25x30cmくらいで、木の枠付けました。

ポーチは、屋根もレンガで作っちゃえ。

……やばい。一気に魔力が枯渇した。

さっきまで穴、掘ってたじゃんよー私。

あ、あかん。ちょっと寝よう。


zzzzz

ドンドンドン、ドンドンドン。

ドアを叩く音で目が覚めました。

魔力はほぼ回復してるね。


ドンドンドン、ドンドンドン。

うるさいなー。

たたき起こされるみたいで、その音嫌なんだけど…。

今度、呼び鈴も作ろう。


出てみると焦った顔のお兄ちゃんが立ってました。

雨で鉱山の一部が崩れてケガ人が多く出たらしい。

露天掘り怖い。

街に注文したポーションはまだ届いてなくて、ポーション足りないんだって。

でも、薬草無いからポーション作れないよ。


お兄ちゃん、私が東の森に行ってないの知ってて、わざわざ東の森で薬草摘んで来てくれてました。

20本くらい作れそうな量です。

薬草、感知出来ないのに、よくこれだけ集めたね。


おっと、緊急時なので、さっさと行動しなきゃ。

せっせとポーション作り。

お兄ちゃんはちゃんとポーチの所で待ってます。


「ありがとう、助かる!」


出来上がったポーションを渡すと、お礼もそこそこに、ダッシュで走り去りました。

うわ、さすがレベル7の兵士。飛ぶように駆けていきます。

私があんなことしたら、一瞬で泥ネズミだよ。

…ポーション、足りるといいな。


さて、気を取り直して穴掘りへ行こう。

あ、崖を足跡が往復してる。

これじゃ飛び石諦めた意味無いよ。

じゃあ、作っちゃうよ!

うーんとねぇ…。


よし、レンガも余ってるし花崗岩の砂利も山積みしてあるから、

左右レンガで道作って、砂利撒いて飛び石埋めよう。


で、食料庫に入ったら、魔力感知にスライム反応!

あいつ、職場放棄して逃げ出しやがったな!

剣を取って返って洞窟に侵入。

ていや!

ぬお!お前もか!

ていっ!

くっそー、2匹ともかよ。

どうやって逃げ出したんだろう?

マンホールの蓋開けて、確認に降ります。


……は?なんで居んの?

2匹とも檻に入ってビチャビチャ暴れてます。

およ?水晶ランタンの光はお嫌いかい?

なんか光り近づけると、めっちゃ暴れます。

オイルランタンの時は平気だったくせに。

そういえば、上の2匹、飛び掛かって来なかったな。

うーん…は!いかん!

脱走じゃないってことは沸いた可能性がある。

縦穴の中じゃ戦いにくい!

慌てて洞窟に戻ってきたけど、スライム反応は無い。


えー、どういうこと?

私の建設中新居、ダンジョンになっちゃったの?

そんなー。

一応、他にもいないか確認しなきゃ。

資材置きにしてる部屋とかは大丈夫。

じゃあ洞窟奥を確認。

また1匹居やがりました。

くらえ、水晶パワー!

全開の水晶ランタンの光を受け、ぽてぽてと逃げていきます。

……ねえ、このランタン、放射線とか出てないよね?

なんとなく気持ちいい光だと思ってたんだけど…。


ちょっぴりランタンにびびりながら逃げたスライムを追っていくと、

奴は行き止まりで右往左往してます。

ランタンの光、なんとなく怖くなって絞ったから、奥まで届いてないのに見えてます。

奥の壁、鍾乳石みたいなやつがぼんやり光ってます。

あれ、ダンジョンの壁じゃん!!

そりゃ、スライム生まれるよ!

掘ってた時はランタンの光で気付かなかったよ!


原因は判明しました。

対策は………思いつきません。

とりあえず、スライム殺しとこう…。


悩んだ末、ダンジョン壁から数m戻ったところに水晶ランプ置いときました。さっき狩ったスライムの核入れて。

これでダンジョンから発生したスライムは、奥に閉じこめられたままになる…といいなぁ。

で、念のため途中に壁を追加して封鎖しときました。


はぁ…、またオイルランタンに逆戻りか。

しかも、別方向に洞窟掘らないといけないかも…。

うん、気持ちが落ち込んだので、飛び石と砂利道作って忘れよう。


薄茶色のレンガに挟まれた白い小砂利の道に、ちょっと黒目の丸い飛び石。

いい感じに出来たんだけど、繋がる先がスライムダンジョン。

はあ…。

何か気持ちの切り替えがうまくいかないので、早めの夕食食べてふて寝します。


夜中、目が覚めました。

昼寝したし、早く寝たから当然だよね。

暖炉に薪を足して、お茶します。

静かだなー。

時々薪が爆ぜる音しかしません。

この静けさ、好きなんだよなー。


ゆったりと静けさを楽しんだ後、オイルランプを持って洞窟へ。

どうなったかは確認しないとね。


第一の封鎖壁、スライムは感知できません。

壁を撤去します。

第二の封鎖壁、やはりスライムは感知できません。

水晶ランタンが、しっかりスライム追いやってるのかな。


感知全開にしながら壁を撤去。

水晶ランタンは煌々と周りを照らしてます。

およ?スライムいないぞ?

なんで?

しばらくダンジョン壁を観察してたけど、何も起きません。

??ダンジョンも夜はお休み?夜勤しないの?

それか水晶ランタンの光は苦手なの?

試しに、水晶ランタン消して、オイルランタンだけにしてみます。

うーん、やっぱり変化はなさそうな…って、出た!

ダンジョンの壁からうにょーんってスライムの核が出てきた!

あ、核の周りに徐々にスライムのボディが出来てる!

あ、落ちた。

って、こっち向かってくるじゃん。

てい。

やっつけました。

しばらく観察を続けた結果、オイルランタンだと、時間は不定期だけどスライム生まれます。

水晶ランタンだと生まれません。

でも、光量かなり落とすと生まれます。


にしし、トラップタワー作ろう!

ダンジョン壁の下をじょうご(漏斗)みたいにして

管の部分をスライム1匹がかろうじて通る幅にして5mほど下に延長。

最下部は、牢屋みたいな籠。

あ、ジャンプしずらいように、底の内周に返し付きの小さな槍付けとこ。

そうだ、何匹溜まったか見れるように、管に縦スリット入れよう。

最下部の待機所には別ルートで来れるようにして、ダンジョン壁の下はぐるっと2cm間隔の鉄格子風に封鎖。


でけた。

試しに稼働してみよう。

水晶ランタン消して待機所で待つことしばし。

ドスッ!

やったー!スライム落ちてきたー!

内周に生やしたとげとげがいい仕事してる。

核は傷付けずにスライムのジャンプを阻止してる。


どうしよう、やっちゃう?

でも、溜まってるとこも見てみたいな。

よし、お前は刺さったままうごうごしてろ。


でも、調子に乗って落下式トラップタワー作っちゃったから、この先で水出たら水没しちゃうよね。

手前に横穴掘るしかないか。

磁鉄鉱の採掘がてら、横穴掘るかな。


あ、先に水晶ランタンの特性、調べたいな。

小部屋作って草とかと一緒に入れて観察してみよう。

よし、小部屋作ろう。

とりあえず、入口付近の洞窟の壁に小部屋をつくり、観察用に土製のプランターも作りました。

放置して観察する予定なので、専用に簡易水晶ランタンも作りました。

核の入れ物の上に水晶が固定してあるだけです。

では、小屋の近くで土と植物採ってきます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る