17話 剣士、アキネス②

「アキさんは、この世界に元々住んでたわけではないみたいなんですよ……」


 ファレルに心を読まれてしまったようで、僕が異世界から来たという嘘みたいな真実が公開されてしまう。

 でも考えてみれば別に誰かに言ったわけではない。

 異世界から来たという事を信じたとするならば右も左も分からない人間がこのパーティーに危害を加えるなどという事を出来るはずがないこと、さらに言えば信じなかったとするならただの脳内中二病であるだけ、ということ。

 どっちにしたって僕はこのパーティーに危害を加えるような人間ではないし、信用されないならこのパーティーには縁がなかったというそれだけだ。


「そんなことがあり得るのかどうかはともかくとして、新入りはどう思う?嘘かほんとか」


「えっ……?いや、真実です。信じてもらえるなんて思ってないですけど僕は日本という国から来たんです」


 何を言えば正解かなんて分からない。むしろ、どんだけ考えても正解にはたどり着けないような気がした。だから正直に言う。

 僕に出来ることはそれくらいだ。


「そう思っているのならそういう事なんだろう?俺らがわざわざ口出しすることじゃなさそうだ」


 アキネスは僕の心配していたことをバッサリと切り捨てた。

 本当にそう思ったのかそれとも面倒くさくなってしまったのかは定かではないが、少なくとも彼の口からこれ以上の言及は飛んでこないことは分かった。


「私も疑ってすみませんでした。異世界から来たという事象に対しては前例がないものですから……」


「僕も創作上のものでしか読んだことはありませんでしたし、実際にこんな事が起こるなんて想像していなかったので謝られるような事ではありませんよ」


 アキネス様々といったところだろうか。どういう理由にしろ、アキネスには感謝の他ないだろう。というか、エルティナがいたらさらに面倒な事になっていたような気がするしタイミング的にも助けられたといえるだろう。


「それにしても、異世界からなんて言えばいいんですかね……?来るときというか……」


「しっくりくる表現だと転生、になりますかね」


「そうですか。じゃあ、その転生したときはどんな感じだったのでしょうか?感覚とか、感情とか」


 感覚、感情……。どうだっただろうか?

 そもそもまるでただ眠りから覚めた時には転生していたというような感じだったので感覚も感情もなくなりゆきでいつの間にかこうなっていた、というのが正しいだろうか?


「じゃあ、転生する前の世界ってどんな世界だったんですか?」


 あくまで僕の住んでる国では魔法みたいなものは無くて技術によって魔法に近いような事をしていたのかもしれない、かな。

 ただ魔法より便利なところも不便なところもあるから一概には言えないけど。


「じゃあ、アキさんの……」


「心を読んで会話するのは割と恥ずかしいのですが……」


「あ、す、すみません!あの、心を読まれたくないときは私から目を逸らしてくださいね!?」


 ああ、目を合わせると心が読めるようになるのか……。

 ってことは、僕はずっと目を合わせてたってことか!?うわ、意識すると超恥ずかしい。こんな事を読まれるのは本当に恥ずかしかったので、必死に目を逸らしてしまう。


 まだ恋とかはしてない、けど女性と目を合わせ続けていたというのはそれだけでもこんなにドキドキしてしまう事なのか。

 ファレルの深緑色の目に吸い込まれないよう、注意しなくては。

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