エンジョイ勢は最強でした!

夏樹

1話 エンジョイ勢、アキ①

 白を基調とした美しい石造りの街。髪の色も目の色も様々な街ゆく人々。

 飛び交う談笑の声とほのかに香るいい匂い。まるで異世界みたいだ……。


 と、いうのがこの街に来た最初の感想。

 平和な中世ヨーロッパの都市を連想させるような明るさに僕は内心とてもワクワクしていた。

 左手に地図を握りしめ、景色と地図の場所をリンクさせていく。目的地は、少し行った大通りを右に曲がったところにあるそうだ。


「まずはギルドに向かって冒険者証を作ってもらわなきゃならないんだっけ」


 はやる気持ちを抑えつつ、ギルドという場所へと歩いていく。

 僕は最初の感想で「まるで異世界みたい」と言ったが、それは感想としては正しいのだが状況としてはまったくもって正しくはない。

 だって、ここは「まじで異世界」なのだから……。


 僕はギルドの受付にいき、いくつかの手続きを済ませて契約料としての少々のお金を支払った後、受付前のホールで待機しているように言われた。

 外の白い建物の印象とは打って変わって内装は落ち着きがある木材ベースのものになっていて、ホール後ろ側には掲示板に沢山のクエストが張り出されている。


 なぜ僕は異世界なんかに来てしまったのだろうか。それは、今から説明でもするとしよう。


 僕は長谷川 明喜あき。元々は大学2年生の男性で、生まれも育ちも立派に日本だった。

 小さいころから楽しいことに目がなかった僕は人生を目一杯楽しんでいこうと思って生きていたしそれは今でも変わらない。

 ただ、僕はその日にたまたま銀行に用事があって居合わせてしまったのだ。


「お、おい!手をあげろぉ!さもないと、……こうだぞ!」


 強盗は拳銃を所持していた。そして、威嚇射撃で撃ったのだろう弾は見事に天井を打ち抜き、照明が真上から降ってきたという所からは意識がない。

 つまるところ、威嚇射撃のはずが結果として威嚇ではなくなってしまうというもはや強盗もびっくりの事だっただろう。


 次に目が覚めたところは、病院ではなく小さな宿屋の一室だった。

 案外あっさりと転生してしまったためそれほどの驚きはなかった。驚くことがあるとすれば、旅人に転生していたようでメモと地図を持っていたことくらいだろうか。

 メモには「ギルドに行って冒険者証を作ること!」と書いてあった。今の僕にはナイスすぎるメモだったと思う。


 そんなわけで、僕長谷川アキはどうやら異世界に転生してしまったようだ。

 とはいえ、転生したなら転生したまで。こちらで目一杯楽しんでやろうじゃないか!

 と密かに決意をしていたのだった。

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