第36話 謎の女

 「それじゃあまた明日来るね。大翔君。」


 「うん。また明日。」


 試合観戦をした次の日、昨日は試合を観戦しに行っていたため、美零さんに会うのは2日ぶりのことだった。


 そしてつい先ほどまで、いつも通り美零さんが持ってきてくれたお菓子を食べながら1時間ほど話していたところで、そろそろ時間も遅くなってきたということで美零さんは帰っていった。


 「あぁ。今日の美零さんはいつも以上に可愛かったな。」


 そんな中、もし誰かに聞かれたら絶対に気持ち悪がられるであろう言葉が、つい大翔の口から出てしまった。

 

 (自分でもさすがに今のはどうかと思うけど、本当に今日の美零さんは可愛かった。)


 ここまで大翔がおかしくなったのは、昨日学校で偶然会った優佳さんと試合を見たと美零さんに言ったところからだ。


 大翔としては特に何も考えずに言ったのだが、美零さんはそのことに対して少し怒ってしまったのだ。


 なぜそんなことで美零さんが怒ってしまったのかというと、


 昨日試合を見た後、優佳さんは美零さんとご飯を食べに行ったらしく、その時に優佳さんが大翔と一緒に試合を見たことを自慢していたらしい。


 それが自慢なのか大翔にはわからなかったが、なぜか美零さんはそのことに少し怒っていた。


 もしかしたら美零さんは、大翔が思っていた以上に試合を見たかったのかもしれない。


 その為、昨日の話をしたり、優佳さんが話題に出たときは返事が少しそっけなくなっていた。


 その時の大翔は大翔で、『ふてくされてる美零さんも可愛い!!!!』と、いろいろと忙しかった。


 「はぁ。」


 美零さんが帰ってから時間もたち、大翔の頭の方もだんだんと冷えてきたので、昨日の試合の時に先生から出された宿題をすることにした。


 ノートを広げ、早速宿題を始めようとする。


 だが、久し振りの外出と午前中の藤咲さんとのリハビリのせいで、疲れがたまってなかなか進まない。


 (これはダメだな。眠すぎて全然集中できてない。気分転換にたまには下のカフェにでも行ってみようかな。)


 リュックに教科書やノートを詰めて、下のカフェに移動する。


 今使っているこの松葉杖も、藤咲さんとのリハビリのおかげで今では自分の手足のように扱えるようにまでなった。


 だが、下の階に降りるためにエレベーターに乗ろうとしたところで、筆箱を持ってき忘れていたことに気が付いた。


 ペンがなければ勉強をすることもできないので、仕方なく部屋に戻ることにした。


 (そういえば松葉杖を使い始めたばかりのころは、こんなちょっとの距離ですらだいぶ時間がかかってたんだよな。)


 少しづつ自分が成長してきていることに軽い感動を覚えているうちに、すぐに部屋に戻ってこれていた。


 だが、そこで大翔の病室の前に女の人が立っていることに気が付いた。


 (誰だあれ?スーツ着てるから大人の人だよな。でも、あんな人に心当たりはないぞ?)


 誰だかわからずに遠くから様子を見ていたが、もしかしたら部屋を間違えているかもしれないと思い、声をかけてみることにした。


 「あ、あのー。そこ俺の部屋なんですけど、俺になにか用でも?」


 「あなたが内田大翔さんですか。初めまして。牧原鈴音まきはらすずねと申します。」


 (え?なにこの人めっちゃ美人なんですけど!?こんな人が俺に何の用?)


 牧原鈴音と名乗った目の前の女性は、美零さんや優佳さんとは違ったタイプの、綺麗・美しいなどの言葉がよく合う女性だった。


 身長も女性にしては高い方なのか、大翔と目線がほとんど同じくらいだ。


 見た感じ、藤咲さんと年齢はあまり変わらなそうだが、スーツを着ているせいもあってか、とても大人びて見える。


 「こ、こんにちは。えっと、、、牧原さん?とは今まで会ったこととかありましたっけ?」


 「いえ。初対面です。ですが、私はあなたのことを知っています。」


 「初対面なのに?もしかして、俺の知らないところで牧原さんに何か迷惑でも掛けちゃってましたか?」


 「いえ、むしろその逆です。私はあなたに助けられました。」


 は?と、つい言葉に出てしまいそうになったが、ぎりぎりのところでこらえることができた。


 大翔には牧原さんを助けた覚えなど全くない。


 というか、牧原さん自身初対面だと言っていたのに、会ったこともない人をどうやって助けるというのだ?


 「はぁ。その様子だとは内田さんに、私のことは話していないようですね。」


 大翔が一生懸命自分の記憶を頑張ってさかのぼっていると、牧原さんの口から意外な人の名前が出てきた。


 「え?天音って、天音美零さんのことですか?」


 「はい。そうです。天音は内田さんに命を助けられたようで、それなのにこんなにも挨拶が遅れてしまってすいません。」


 「い、いえ。気にしないでください。それで、牧原さんは美零さんとはどのような関係ですか?」


 (まさか美零さんの知り合いだったとは、、、ていうか美零さんの知り合いが俺に何の用?)


 「・・・そうですね、今はあまり詳しくは言えませんが、簡単に言うと私は天音のみたいなものですかね。」



【あとがき】

 最近投稿頻度が低くなっていてすいません。


 勉強や部活が本格的に始まってきたので、時間がなかなかとれなくて、、、ですが、何度も言っていますが、途中で逃げ出すなんてことは絶対にないので、気長に待っていてくれると嬉しいです。


 コメント、フォロー待ってます!作品を評価してくれると嬉しいです。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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