姪の決意

「私は義姉ねえさんを守って死にますから」

「うん、とりあえず落ち着こうね」


 私は十分落ち着いているのにという顔に苦笑。暇潰しに見た邦画の所為だ。家来が君主のために敵の前に勇敢にも立ちはだかったが殺されてしまった。それ故に君主は逃げ切り、何とか全滅は逃れられた。それに感銘を受けた義理の姪の先程の発言。黒猫はこんな映画をうっかり選んでしまった自分を呪った。まぁ今更な事だけれども。


「今の時代、こんな事有り得ないって」


 治安の悪い街にいるならいざしらず、あの家に居る間は、三兄弟の言う事さえ聞いていれば安穏と過ごせる。


「だから義姉さんはあまあまなんです。義兄さん達は強いので特に問題ありません」

「あのね、その言葉、誰に教えてもらったの?」

「蒼龍兄さんです」


 蒼龍さんの馬鹿! 脳裏に浮かんだ彼はドヤ顔をしている。隣に座る彼女は無邪気に瞳を輝かせて何かを決心しているようだ。ああどうしようか。止めてみようか、自分に出来るだろうか。


「あのね、そんな事言われても嬉しくないから。もっと夢のあるね、」

「義姉さんは私の生き甲斐を奪うのですか?」

「……いや、うん、とっても嬉しいよ」


 前言撤回すれば、天使の満面の笑みを向けられる。とりあえず、先にあの喋る猛獣をどうにかしてみようか。

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