革命のせいで、姫から奴隷になったので、生きるために戦います。

@MARONN1387924

第1話プロローグ始まりと終わりの火

ここは、世界最大のムンス州に属するひとつの国、トゥリオーネス王国。


貿易業や、商業、観光業などで栄え、ムンス州最大の重商主義国家である。


そして、その国を収めるものが、国王、ペルキオ・ノワエ。

その国王の妃である、アステラ・ノワエ。


そして、そんな、2人の唯一の子であり、次期女王候補、王位継承権第一位のアウラ・ノワエ。





ここは、トゥリオーネス王国のとある貴族の家。

ここには家族の奴隷が働いている。

父である、ヴィクトゥル・ノーレス、母のセイド、兄のノックス……、

そして弟のレイヴである。


その家族は、レイヴが生まれた頃まで普通の平民の家庭だったが、とある貴族にはめられ、家を失い、財を失い、名誉をなくし、そして、人権さえ無くしてしまった。


それからは、家族皆、貴族に売られ、奴隷として飼い慣らされ、家畜と同価値の生活をしていた。


そしてレイヴの父であるヴィクトゥルは思った。


こんな酷い生き方は、もはや、生きているとは言えない。死んでいる。


ヴィクトゥルは、決心する。

死んでいるも同義ならば、せめて、一矢報いて死のうと、どうせ生き地獄ならば、あの憎き貴族どもまで地獄に引きずり下ろしてやろうと。


そして、あまりにもひどい仕打ちと、奴隷とて人間であるということを証明するため、レイヴの父、ヴィクトゥルは、立ち上がった。


まずはじめに、周りの貴族の奴隷と手を組み、貴族達に一揆を起こすことを計画する。


その動きが、やがて、貴族からの圧力がかかっている平民にまで及ぶ。

そして、その運動のリーダーに、ヴィクトゥルはなる。


そしてそして、更には、他の貴族から差別を受ける準男爵や、男爵からも支持を集め、いつの間にか小さな火は、一つの国を炎の海に変えるほどに、大きく、強くなっていった。


最初は、ほんの、数家の貴族に一揆を起こすつもりが、いつの間にか、国を相手にするほどの一揆に変わっていく。


そしてそれはレイヴが10歳の時だった…………。





その日、姫であるアウラは静かに本を読んでいた。アウラは本が好きなのだ。

城にいては見ることの無い景色を、書物を通じて見ることが出来る。


基本、姫は城から出ることを許されず、たびたび抜け出しては使用人によく怒られていた。

それだからこそ、感じていたのかもしれない。


異様な民の雰囲気を。


まるで、これから戦争が怒るのかと言わんばかりに滾っている。不穏な空気を感じる。


だからこそ、姫は最近あるものを作らせた。

短剣である。


もしもの時のために、なにか自衛する手段として短剣を作らせた。

その短剣の柄には、王家の家紋と、アウラ・ノワエ姫と彫刻されている。


これは別にアウラが、彫らした訳では無い。

職人が勢いで彫ったものだった。

それでも、切れ味抜群で、小娘に扱わせるのは危険な程によく切れる。


さびにくく、刃こぼれしにくくそして、研ぐ必要がほとんどない、とても高価で珍しい金属の短剣だ。


そしてそんな不安が的中する。


本を読んでいたアウラに使用人が血相を変えて走ってくる。


「あら?どうしたのかしら」

「大変ですアウラ様!民衆が!城に!」


使用人は焦っているのか、いまいち内容がよく分からない。

アウラは、ため息を着くと窓から白の外を見た。


「紅い……」


振り返れば使用人はいなかった。

状況が理解できない。

否。理解しているが、頭がそれに追いついてない。それも違う。本当はわかっているのに、現実から目を背けている。


外からは悲鳴が聞こえる。城の壁がぐずれる。

木製の倉庫が燃えていく。


そして、やっと逃げ場などないと理解する。


「燃えてる……城が……人が……嘘……」


しかし、そこからのアウラの行動は早かった。

履いていたドレスのフリルの部分をあの、よく切れる短剣で切り裂く。


そして、短剣とコソッと持ってきていた傷薬を持ち走る!


部屋を出て、城内を見ると大騒ぎ。

使用人は逃げ惑い、王家の軍隊も戦うことより逃げることしかしなかった。


アウラは走る!走って何とか逃げようとする。

そして、母と父を探す。


「母上!父上!」


城内の廊下で大声を出して叫ぶ。


それでも返事はない。

すると後ろから兵士がぶつかって、アウラが転ぶ。

アウラは兵士を睨む。すると兵士は


「どけ!邪魔だ!このクソガキ!」


アウラは唖然とした。

今までアウラに逆らうことすらしなかったただの兵士が、アウラに向かってどけと言ったのだ。

クソガキなどと暴言を吐いた。


そして、アウラは理解する。

皆、生きるために必死なのだと。

自分が生きるためには手段などは選んでいられないんだと。

そして、自分が生きるためには、そこにどんな命があれど、例え、一国の姫であろうと自分のことが可愛くて仕方ないんだと。


そう、この世界では、アウラなどはただの道端に生えた雑草でしかなかった。

一国の姫でなければ、女の子でもない。

ただの雑草なのだと。


アウラは1人の、燃える城内の廊下で膝を折る。

すぐにこの一揆を起こしたであろう平民共が中に入ってきてアウラは拘束された。


こうなれば王族も貴族も平民も奴隷も関係ない。

そして1人の平民がアウラに向かって言った。


「こんな弱い子には気が引けるが、これが俺たちの意思なんだ」


弱い子という言葉がアウラに響いた。

権力も、財力も、名誉も全て失えば自分は弱いのだと。今まで王族という、最強の矛と盾を持っていたが、それを無くせばただの小娘だと。


そしてアウラは悟った。

この世界を生きるためには強くならないといけない。


アウラ・ノワエ9歳の時である。


だからこそ決めた。

今度は強くなってやると。

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