『3』ごめんで済んだら警察はいらないよ

「おぉ、アユミ。ママが今買い物終わったから、帰るって連絡来たよ」


「パパ! 私が楽しみにしていたプリンがなくなったの!」


「えぇ? おかしいなぁ。今朝パパがヨーグルトを食べた時は、ちゃんとプリンはあったよ」


 ふむ。朝の時点ではプリンがあったのね。

 今は昼の3時。

 ということは、買い物に行くまではママも容疑者に入ることになる。


 兄ちゃんは一度大学に行くと言って朝8時頃家を出て、電車が止まってたから今日行くのやめると言って11時頃帰って来たから、その時に冷蔵庫を見て、プリンを食べたのかもしれない。


 パパだって、ヨーグルトを食べるついでに食べたのかもしれないし。 


「パパを疑っているのかい? パパは朝7時にご飯とヨーグルトを食べて、町内会に挨拶をしに行って、10時頃帰ってきたらママにゴミ捨てを頼まれてまた外に出て、後はずっと家にいたよ。アリバイは……ないなぁ。ママは昼の1時頃買い物に行っちゃったから」


 プリンはいつまで冷蔵庫にあったのだろうか。それによって、三人のアリバイを確認しないと。

 私は紙に、三人が家に居た時間をメモすることにした。


「パパは部屋で仕事の資料を作っているよ。アユミ、お前からもゲンタに言っておいてくれないか。ゴミの分別をきちんとしろって。今朝も分別ができてなかったから、お父さんが分別し直したんだぞ」


「えー、それこそお父さんから言いなよ」


「私から言うよりも年下のお前から言う方が、言われた方は恥ずかしいから、改めるんじゃないか?」


「お父さんもさ、年上の人にゴミ捨て注意するの、だるくない?」


「……、たしかに、だるいなぁ。パパから言うことにするよ。ごめんな」

 パパは笑って、2階に上がっていった。パパはきちんと話を理解しようとしてくれているから、話しやすい。兄ちゃんは言葉尻だけとらえて反論してくる。まだまだお子様なのよね。


「ほんと、プリンを食べた犯人も、ごめんで済んだら警察はいらないのよ!」



 ◆ひみつのキーワードB  「文」

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