第8話償い

「おーい!集合しろ!もう休憩は、終わりだ!」

「あのー、理蟹先輩。昔、ここで火事とかあったんですかね?」

手に付いたススと溶けた鉄のフェンスを見せながらたずねる。

「いや....。特にそんなことはなかったと思うが...。だがその燃えた痕から推測するに、ただのボヤで済ませるには広範囲かつ高火力すぎるな。この土地について、詳しく調べる必要がありそうだ。」


作業を再開してから30分後、富田が騒ぎ出した。

「なんかここの地面の上で飛んだら、ご~んって音がする。相棒みてくれ!」

ご~ん

本当だ。

その地面をよく見てみると、取っ手がついていた。

地面に取っ手?

なんだこれ?

取っ手を持ち上げてみると、地面が一緒に持ち上がり階段が出てきた。

地面にカモフラージュされた扉?

俺の隣で理蟹先輩は、顔を興奮した表情にさせながら言った。

「ここが今回の磁場の乱れに、関係しているのかもしれない!入ってみるぞ!」

そんな理蟹先輩を止めるように、間遠先輩が制止する。

「危険ですよ!安易に入るべきでは、ありません!」

「うるさい。どけ。」

そんな制止を振り切って、入っていってしまった。

「あ!ちょっと理蟹さん!」


中は、案外広く一つの大きな廊下を中心にして部屋の扉が複数あった。

鍵が閉まっていたためほとんど入ることが、出来なかった。

「なんだよ。どこも開いてないじゃないか!」

と言いながら理蟹先輩は不満げに、最後の扉のドアノブを回す。

ガチャリ

開いた。

部屋の中には、大きなコンピューターが一つと机が一つあった。

手元にあるユガミル試作機で磁場の乱れの方向を計ったところ、そのコンピューターに針が向いた。

これが原因?

それにしてもなんだ?この無駄にでかいコンピューターは。何の機械なんだ?

机の上には、なにかが置かれてある。

研究日記とかかれた手帳だった。その中を少し戸惑いながら開いてみた。

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西暦○○○○年○月○日

今日は生命体を生き返らせる研究を行うため、さまざまな動物を殺しては蘇生させるということを繰り返した。今回分かったことは、虫や魚の蘇生が成功する確率は高かったが、狐や牛や人間などの哺乳類は蘇生の成功率が格段に低くなるということだ。また、成功したとしても哺乳類の場合は、肉体ではなくなぜか霊体として復活する。さらにその霊体は、著しく知能が低下しており意思疎通がままならない。

西暦○○○○年○月○日

以前、私は人間の霊体を捕獲することに成功した。彼らは物理的な干渉をうけないため、非常に捕獲が困難だった。だが彼らをデータとして、コンピューターに保存することで捕獲することが出来た。これで最愛の妻を生き返らせるという目標のために、一歩近づいた。

西暦○○○○年○月○日

なぜだ。彼らを蘇生させることは、理論上は出来るはずなのに。どうしてだ。科学と黒魔術の力だけでは、無理だというのか?だが私は諦めるわけにはいかない。これまで犠牲にしてきたもののためにも、必ず成功させなくてはならない。

西暦○○○○年○月○日

もうこれ以上は耐えられない。私はこの世を去ろうと思う。無責任なのは、分かっている。今まで彼らにしてきたことは、地獄にいってから償いたいと思う。だが気がかりなことがある。娘のことだ。彼女は、私は家と共に燃えて死んだのだと思っている。そのことが原因で精神を病んでいるらしい。本当に申し訳ないことをした。償いきれないほどのことをした。

西暦○○○○年4月20日

全てがなかったことになれば良い。私の娘”恋”が幸せになりますように。


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ノートの一番裏には小さな文字で

理蟹 秀樹 と書かれていた。















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