村人たちに騙された桃太郎

乃木希生

情報操作された桃太郎の凶行

昔々、鬼ヶ島と勝手に名付けられた島に多くの人間が住んでおりました。

彼らは、隣の島に住む人間たちから「鬼」と呼ばれていることを知らず、島民たちは静かに暮らしておりました。

彼らが住んでいる島には、貴重で高級な資源が沢山眠っており、この豊富な資源を売る事で多少豊かな生活を送っておりました。彼らは自分たちが住んでいる島を「富裕島」と名付け、自らを富裕層と呼んでおりました。


富裕層は、隣の島へたまに自分たちの豊かな資源を売りに行き、代わりに沢山の米や野菜を手に入れておりました。

まさか隣の島民たちから「鬼」と呼ばれているとは夢にも思っておらず、むしろ貴重な資源を提供していることを喜ばれているとさえ思っておりました。


一方、隣の島の住民たちは自分たちの島を「貧困島」と呼び、米や野菜を育てながら、ひっそりと暮らしておりました。たまにくる「鬼ヶ島」の連中が持って来てくれる高価な資源に目がなく、なんとかして手に入れたいと思っている人たちが多かったが、手に入れるほどの資源を持っている島民はほとんどいませんでした。


貧困島に住む島民たちは、富裕島に住む人間たちを羨み、その羨望が妬みに変わり、いつの間にか自分たちの財産を奪っていく「鬼」だと決めつけ、鬼たちは来るたびに自分たちの財産を奪っていく悪いやつだと言い合うようになりました。


そんなある日、貧困島の山奥に住んでいた桃太郎という純粋無垢な青年を何とか使えないかと考えた貧困島の老人たちは、桃太郎の純粋さに漬け込み、富裕島にある財産を奪ってこさせる計画を立てました。


桃太郎が、いつものように山から下りて島民の畑仕事を手伝っている時、老人たちから隣の島に自分たちと同じ姿形をした鬼が住んでいて、たまにこの島を訪れては自分たちの財産を奪われて困っているから助けてくれないかと言われました。

「そんなヒドい事をされているなんて知りませんでした。僕がその鬼が住む島『鬼ヶ島』に出向き、鬼たちを懲らしめてきます。」


桃太郎は善は急げと思い、急いで家に戻り、おじいさんおばあさんに老人たちが困っているから鬼を退治しに行こうと思うと告げると、おじいさんが、

「それは良い。あいつら鬼は私たちと同じ姿形をしているが、中身は鬼だから騙されないように。何を言われても聞く耳を持たず、懲らしめてきなさい。」

と応援してくれ、おばあさんは、

「腹が減っては戦はできぬ」

と言って、お弁当を作ってくれました。


桃太郎は、お弁当を持って隣の島に向かうために船を持ち航海術を持っている友人、力自慢の友人ら3人を連れて、鬼ヶ島へと向かいました。



鬼ヶ島に上陸した桃太郎たちは、島にある最も高い建物を目指し一目散に駆け出しました。到着するなり、門番をいきなり殴り、門を壊し、大声を上げながら突入していきました。



桃太郎たちから奇襲を受けた富裕島の島民たちは、同じ姿形をした3人の人間が暴れまわっている姿に恐怖していました。そんな中、富裕島の中で唯一の力自慢が急いで襲われている家に駆けつけ、戦おうとしますが、殺す気で来ている桃太郎たち3人に勝てず、降参しました。


桃太郎たちに縛られた富裕島の島民たちは、

「なぜ、こんなひどい事をするんですか?」

と質問しました。桃太郎はおじいさんから『何を言われても聞く耳を持たず、懲らしめてこい』と言われていたので、質問には答えず、

「お前たち鬼は村人たちにとても悪い事をしてきてくれた。村人たちから奪った財宝だけでなく、お前たちが持っている財宝も全て私たちに差し出せ。そうすれば、命だけは助けてやる。」

と一方的に条件を押し付け、富裕島の島民たちが持っていた財産の全てを奪い取った。


「また、村人たちに悪いことをしたら、次は命を奪うからな。」

桃太郎は富裕島の島民たちに脅しをかけ、今後一切、豊かな資源をタダで村人たちに譲りわたすことを約束させた。


多くの財宝を手に入れて、貧困島へと帰還した桃太郎たちは、富裕島の島民たちに約束させた内容を老人たちに伝え、更に奪い取った財産を島民たちに配って歩いた。


その後、富裕島の人たちは桃太郎から言われた通り、自分たちの資源を無料で渡し続けた。そのおかげで貧困島の島民たちは、どんどん豊かになり、富裕島の人間たちを労働力として使い続け、自分たちは遊び呆けて暮らしたとさ。


めでたしめでたし。

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