キッドさんといっしょ。

ダイナマイト・キッド

第1話 フォークリフトと春の海

フォークリフトと春の海


今日、初めて実戦でフォークリフトに乗らせてもらった

前に免許だけは取ったし一瞬だけ入った会社でもちょっと乗ったけど

全然モノにならないわ、ワケわかんないわで

出来ればこのまま乗らないまんま過ごしたい、正直そう思ってたフォークリフト


でも今の会社に入って、そうも言ってられなくなった

滅多にないけどやっぱり乗る時はガンガン乗らなくちゃならない

私は今10万33歳、私ぐらいの人がガンガン乗って覚えていかなくちゃならない

せっかく習った技術も忘れちゃいけない

誰もが勇気を忘れちゃいけない

やさしい心も忘れちゃいけない

獅子の瞳が輝いたところで、会社がヒマなときに

「佐野、フォークリフトの練習してもいいぞ」

と言ってくれてたのだけれど、あんまり積極的じゃなかった


でも、昨今の情勢でいよいよやる事がなくなっちゃって、ヒマだから俺が稽古つけてやるよ、と言ってくれる人がいたので有難く乗らせていただくことにした。腹を決めてやってみようと思えたのは、本当に会社の人が自分を必要としてくれて、すごく期待してくれたのだと思ったから…こんな有難いことはない

前の会社ではどんなに数字を増やして休みを減らしても給料は増えず

「あいつはあんだけやらせて当たり前」ぐらいだった

少なくとも私はそう感じることが多々ある奴が何人か居た

だから会社員として過ごすことにもひどく億劫になってたし、暇ならヒマでいいや、と思ってた


で、今週の半ばから三日ぐらいかな。集中的に練習をさせてもらった

最初はホントにぎこちないのを通り越して危険な有様だった

よく道端でも「コイツ本当に免許持ってるのか!?」って運転をする奴いるけど

私のフォークリフトがまさにこれだった


まあーホントにわけわかんなくって

元来テンパりやすい性分なのもあってガチャガチャやってたんですが、それを怒鳴ったりイラつくことなくイチから丁寧に教えてくれて、ずっと付き合ってくれた会社の先輩方のおかげでなんとか恐怖心や億劫さは払拭出来ました

で、その矢先に

「佐野、今日から実技だ!」

と、実に「現場らしい言い回し」で実践投入されました。実践豆乳ならご家庭でもお気軽にって感じで美味しい豆腐も出来ましょうが、突然のフォークリフト実戦投入はビビります


とにかくゆっくりやれよ!

急ぐ仕事じゃねえし、置けりゃいいから!


いつもアドバイスをくれる人も、最近別の現場行ってた人も、みんなして応援してくれて、動かしながらも教えてくれて


なんとか荷物をトラックに積むことが出来ました

何度も積んで、また積んで、してると、やっぱり感覚が少しずつ、ほんの少しずつだけど掴めそうな気がして


元々大した数が残ってなかったのもあるけど、夢中でやってたらいつの間にか終わってました。他のみんなも積んでたし、そこに混じって私もおっかなびっくりやってたんだけどね


午前中から午後イチまでは別の作業して、これまた初めてのことだったけど無事に終われて

フォークリフトも乗れました


また来週も同じ作業があるので、その時も乗れるといいな

でもまだちょっと怖いな(笑)


ひとえに環境というか、心構えというか

前の会社がこんないい人ばっかりだったら、辞めなかったと思うなあ

上手く行かないもんだな。給料はそっちのがよかったもん(笑)


作業が終わって詰め所に戻ってきたら

「佐野ぉお前今日頑張ったなあ、コレやるよ」

と、いつも教えてくれる人がオヤツのチーカマを一本くれました

チーカマ大好物


凄く単純というか、仕事は厳しいけど普段は優しい、というだけのことで

でも、そうやっていつも優しいから仕事は厳しく教えてもらえてるし

今回の話に出てきたアドバイスくれる人、リフトの稽古つけてくれた人(三人いる)、チーカマくれた人、みんな別々で、みんな優しいです


今日はいい日だったと思ったのでエッセイに書きました

フォークリフトに乗って岸壁から見渡した

春の海はキラキラしていました

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る