超モテる美少女の恋を手伝うことになった『イケメンの友人キャラ』の俺……って設定ですよね?

緒方 桃

『イケメンの友人キャラ』って設定ですよね?

第1話 恋のキューピッド、始めます。

「ねぇ、藤澤くん」


 高校二年に進級した日、初めてのクラスに緊張しながらも、それを紛らわすために席に着いてラブコメのライトノベルを読んでいると、隣の席の女の子に話しかけられた。


「はっ、はい!」


 いきなりのことに驚き、声が裏返った。俺はパタンと素早く本を閉じる。

 だって相手は女子。しかも学年一モテる美少女──久住美唯くすみみゆさんなのだから。

 少し茶色がかったゆるふわボブカットと制服の下の桃色のカーディガンを萌え袖で身につけるのがお似合いの、ラブコメディのヒロインのように可愛い彼女を目の前に、俺は少しドキッとさせられた。


「ふふっ」


 そして俺の姿を見て、甘いニヤケ顔を見せる彼女に更に心が揺れ動く。

 女の子に惚れるってのは、こういう感覚なのかな。そう考え、つい浮かれた俺だったのだが──


「君の友達の雪村くんって、好きな人いるの?」


 あぁ、このパターンか。

 彼女の言葉に昂った感情が一気に冷め、彼女に心を動かされた自分が馬鹿らしく思えた。


 けれど女子がこのような質問をしてくるのはもう慣れっこ。『イケメンの友人キャラ』ってだけで美少女に話しかけられたのだから、このご縁に感謝するべきだよな──なんてことを自分に言い聞かせて、俺は苦笑しながら答えた。


「うーん……、ごめん。わかんないや」


 基本、俺の友達の雪村颯人ゆきむらはやとは恋バナなんてしない。というか、残念すぎるほど恋愛に興味無い。あと、鈍感。

 だから毎度、颯人のことが気になっている女子にはこう答えざるを得ないのだ。

 そして彼女たちは「そっか」と言い残してどこかに行ってしまい、それからの繋がりはほとんど無し。


「ふーん」


 きっと彼女も俺の元から離れるんだろうな。そう思ったのだが……。


「じゃあさ、明日までに雪村くんに聞いてくれないかな?」


 彼女は他とは違い、粘って食いついてきたのだ。

 よっぽど颯人のことが気になるんだな。


「わかった」


 ここは彼女の気持ちに応えて、恋のキューピッドとして協力しよう。そう思って、俺は彼女のお願いを躊躇いなく引き受けた。

 せっかくだからこれを機に、久住さんと仲良くなれたらいいな。隣の席だし。可愛いし。


「あっ、そうだ藤澤くん」


 これで話は終わりかと思ったが、久住さんはカバンから携帯電話を取り出した。


「LINE、交換してくれないかな?」

「えっ!? いいけど」

「やった。ありがと」


 彼女のお願いを聞くと、クスッと嬉しそうに笑った。

 マジかよ。知り合って初日で凄いアプローチだな。

 けれど彼女が好きなのは俺じゃないし、俺のことなんか「イケメンの友人」という便利な存在としか思っていないのだろう。

 それでも俺は、彼女の積極的な行動に胸をうたれた。


「えっと、なんで俺とLINEの交換を?」

「そりゃもちろん、雪村くんのLINEを教えてもらうため」

「ですよね〜」

「あとあと、もし雪村くんが私のこと話してたら、すぐに連絡してきて!」


 おぉ、なんて凄まじい執着心なんだ。

 俺は少々引き気味になりながらも、「わかった」と返事してLINEを交換した。


「それじゃあ、さっきの結果と連絡先、待ってるね?」

「あっ、うん」


 こうして流れるような速いテンポで美少女との距離が縮まった俺。


 だけど、忘れてはならない。

 彼女が好きなのは俺ではなく、友達の颯人。

 俺は二人を結びつける恋のキューピッドであることを。



【あとがき】


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 みなさん何卒よろしくお願いします!!!!


追記(2023年6月4日)

お久しぶりです。

約3年ぶり?くらいに新作を投稿させて頂くことになりました!!

元々は公募用に書いていた原稿ですが、今まで以上に面白い、完璧で究極な作品が出来上がりましたので、よろしくお願いします!!


タイトル

マネージャーを始めた俺、担当アイドルが元カノだった件

(本表題:プロジェクト・イカロス)


作品URL

https://kakuyomu.jp/works/16817330657697741321


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