異世界に飛ばされて敵と戦ったら正体は意外な人でした

咲良 真

第1話目覚め

目が覚めたら

そこは知らない部屋だった

…。



う~ん。フカフカしていい匂いだなぁ。

起きたくないくらい気持ちいいフト…ン?

『えっ?』

ガバッと飛び起きて、部屋を見渡すがまったく見覚えのない部屋の中。

見たこともないくらい大きいベッドで、何より屋根とカーテンが付いている。

部屋もめちゃくちゃ広くてお姫様の部屋みたい。

なんで私、こんな部屋で寝てるの?




コンコン


ドアのノックの音。

誰だろう?

知らない場所で頭が真白になっているのか、まだはっきり目が覚めていないのかすら自信がないくらい頭が混乱している。


『気がつかれたようで良かったですわ

お洋服は汚れていたしボロボロだったので、失礼ながら着替えさせていただきました』

自分を見てみると、今まで着たことがないフリルやレースが沢山付いた可愛いパジャマ姿になっていた。

『着ていたお洋服は洗ってお繕いして、お荷物と一緒にあちらに置いてございます』

『あ…ありがとうございます』

確かに洋服が綺麗に畳んでリュックと一緒に置いてあった。

あれっ?なんか変な感じがする。

でも何が変なのかはすぐにはわからなかった…。

それよりも自分も含めて、なんだかお伽噺に出てくる人みたいな服装だ。

お手伝いさんなんか、見た感じ日本人じゃなさそうなのに日本語が上手だなぁ。


『目が覚めたら、姫様がお礼に伺いたいと仰っております』

『お礼…ですか?姫様から?』

お礼されるようなことって何したっけ?

まったくわからない。


『お怪我をなさっていますので、ベッドの上でもかまわないとのことですがいかがなさいますか?

テーブルでお茶のご用意も出来ますわ』


怪我?

あまり痛みは感じなかったけど、確かに頭やら腕やらあちこちに包帯やガーゼがある。

腕を動かしても激痛ではないし、見た目程大きい怪我でもなさそうだ。


『軽く動く程度なら大丈夫なので、テーブルでお願いします』

いくら怪我人とはいえさすがにお姫様をベッドで迎えるのは気がひける。

『承知致しました。

着替えはせずこちらのお召し物を上から羽織る程度にしておきましょう。

軽症とはいえ怪我人ですから無理はいけません』

『はぁ…』

着替えをすることが無理とは思わないけれど、私は素直にそれを羽織るだけにした。

布団もだったけど、この服といいパジャマといい生地がとっても気持ちいい。

高そうな物ばかり。

こんな部屋があってこんな服を着ているお姫様かぁ。

どんな人かも気になるけど、それよりもここはどこなのだろうか。

なかなか聞けずにどうしようか悩んでいるうちにドアがノックされた。


コンコン


『失礼致します。姫様をお連れ致しました』

気付いたらもう1人いたはずのメイドさんがお姫様を呼びに行っていた。

いつの間に部屋から出てたんだろう。


『どうぞお座りください。お気がつかれて本当に良かったですわ。

私の名はノエル・クリスティア。

この国はリース国と言います。

こっちはメイド頭のイブ。

あなたのお名前は?旅のおかた』


やっぱりお姫様って綺麗な人なんだなぁ。

髪も羨ましいくらいサラサラでツヤツヤだ。

それにしても、私は旅人に見えたのか。

まぁ確かに怪我だらけで服も汚れていたなら仕方ないかな。でも、竹刀を持ってたはずなのによく怪しまれなかったなぁ。

このお姫様、案外警戒心ていうものがないのかな?

などと思いながら、ぼんやりと自分の荷物を見ているとようやくさっきの違和感に気が付いた。

ガタッ‼

名前を言う前に勢いよく立ち上がってしまった。

『どうされました?』

ノエル姫がビックリして、飲もうとして持ち上げたカップを落としそうになる。

『えっ?あっ……すみません。私の名前は栗栖くりすエリ…です』

語尾が小さくなりながらもなんとか名前を言い、椅子に腰を下ろした。

でも頭の中は違うことでいっぱいだ。

私のリュックと一緒に置いてあるのは竹刀ではなく鞘に入った剣だ。

剣なんて私は持ってはいないけど、多分本物なんだろうとわかる。

なんで剣?一緒に置いてあるってことは私の荷物ということなんだろうか?


『エリ様?エリ様!』

『うわっ!?はいっっ!』

考え事をしていてノエル姫の話を聞いていなかった。

『エリ様、昨日は危ない所を本当にありがとうございました。

エリ様がいなかったらお前は大怪我をしていたところだ!とお父様にこっぴどく怒られてしまいました』

反省していると言うよりも、ノエル姫は楽しそうにニッコリと微笑んでいた。

女の私から見ても素敵な笑顔だな。

『ごめんなさい。昨日のこと、あまり覚えてないんです…。

もし良かったら出会った時のこと、教えてもらえませんか?』

『本当に覚えてないんですの?

女性ながらにとっても凛々しくて格好良かったですわよ。うちの護衛隊長に負けない強さで、惚れてしまいそうでしたわ』

そう言ったノエル姫は、恋する乙女のように目をキラキラ輝かせながら昨日出会った時のことを話してくれた。

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