アナザー・リアル・ワールド

鐘上菊

第1話日常の終わり(1)

 いつも通りの日常、学校に行くために電車に乗り、


座席に座りスマホを傾けゲームを開く


そこに書かれたゲーム名は


「Another online」


単調なネーミングだが、このゲームの本質をよく捉えた名前だと思っている。


 そして俺、一条直弥いちじょうなおやがハマっているゲームだ。


 日本人の間ではAnother onlineの頭文字を取ってアオゲーと海外ではonlineの後ろにgameの頭文字Gを入れAOGと呼ばれている。


 このゲームはPCとスマホアプリとしてリリースされており、ゲームコンセプトとして極限までリアリティーを追求した結果生まれたゲームである。


 リアリティーを追求した結果生まれた設定が一度死ぬと蘇生アイテムがない限りアカウントが消え二度と再ログインが出来なくなってしまうというものだ。


ゲームキャラが死ねばそのアカウントは消去され新しくキャラを再登録しなければならない。


 一度死ねば終わりというハードコアモードがこのゲームの醍醐味であり、プレイする人を選ぶ所でもある。


 ただその分画質、世界観、ゲーム設定がすべて現実チックであるため、配信当時はすごい反響を呼んだ。


 このゲームはとても自由度が高く世界観や画質が旧来のゲームよりも数世紀先を行くゲームとなっている。


 例えば世界の全てが素材として活用できるという点である。


 その辺に落ちている石ころでも投擲用として採取が可能であったり、


シャベルを使って地面を掘れば落とし穴を作れる。


「自由すぎて何をしたらいいのかわからなくなるんだよな~」


 そう一人で愚痴ってしまうほど自由を追求している。


 そしてこのゲームが数世紀先を行っている最も大きな理由として、通常のゲームには存在しないものが実装されている。


 それは同じ人間なのではないかと見紛うくらいの完璧な会話が成立するNPCの存在である。


 AIが認識して言葉を返しているのか分からないが、マイクがあればNPCに対して話しかけることが出来る。


話しかければそれに見合った会話が帰ってきたり、極端に言えば例えば見ず知らずのNPCに対して下ネタを話せば蔑まれた目で見られたり衛兵を呼ばれてしょっぴかれたりする。


 つまり旧来のゲームでは叶わないNPCとの意思疎通ができるのである。


 話は戻るがNPCとの恋愛もできる。


 アオゲー内のNPCには一人一人に好感度システムが存在する。


NPCの好感度をある一定値まで上げると個別イベントが始まったり、同性異性問わず最大まで上げると告白イベントが始められる。


 そしてこれは異性どうしに限定されるのだが低確率で子供を賜ることもできる。


 ただこのゲームの性行為システムはベットがある場所限定ではあるが、


どこでもそして好感度を気にすることなく行うことが可能である。


 そのシステムを悪用してNPCを拉致したり、家に不法侵入してベットまで連れていき、相手の合意なしに無理やり行うこともできてしまう。


ゲーム内だからとNPCを誘拐して襲うといった行為が一時期問題となったりした。


 そんなゲームAnother onlineを手掛ける運営は世界最先端の高性能AIプログラムを全てのNPCそしてモブにまで積んでいるということをゲーム内掲示板で発表した。


 一ゲーム制作会社が世界最先端のAIプログラムを使用していることに疑問はあるが、


一部プレイヤー間では海外のAI開発チームがテストプレイを兼ねてこのゲームを作ったのではないかという噂が配信直後から囁かれていた。


この説を押すプレイヤーが大多数であったが、この説以外にももう一つ押されている意見があった。


 それが異世界説である。


はっきり言って高性能AIであってもできないようなこと、例えば相手の気持ちを汲み取ったり、察したりするようなことができているので実は自分たちは異世界の住人と話しているのではないかという説もでていたりする。


 さらにその説を押すように1個体1個体ごとに強さも性格なども変わっており、もしNPCを殺してしまうと殺されたNPCは二度とリポップすることは無い。


 そして環境もひび変化していく、寒ければ雪が積もり暑さで川が干からび飢饉が起こることもある。


戦争を起こせば国が滅び、国を興せば民が集まる。


法律を作ればNPCたちはそれに従い、


宗教を作ればそれに帰依きえすることがある。


 そう言った点がリアルに創りこまれていてアオゲーが異世界説という話が希望的観測として一部勢力に押されている。


 多種多様な職業と近代のゲームなのかと言うくらいの自由度の高さ、たった一個のサーバーに約500万人を同時接続させることのできるサーバーであると運営は明言したり、ゲームであれば必ず存在するバグやチートが一つも存在しない環境、現実世界顔負けの3Dグラフィックを搭載したあまりにも現実に近いゲーム、これがAnother onlineなのである。


 こんなゲーム業界を一新するようなゲームを作ったということもありこの制作会社は世界からも注目を受けていた。がしかし、海外メディアなのでも大きく注目され様々な所でも取り上げられたが、このゲームを制作した会社はスタッフ含め誰一人としてわからなかった。


 調べてもどこの会社が制作して配信しているのか、NPC一人一人に声がついているのにその声優が誰なのかもわからない。


普通のゲームにはクレジットタイトルという誰が作り、誰が演じ、誰が支援しているのか、関係者や協力団体の情報といったことがわかるものが存在しているがこのゲームにはそういった情報がわかるものが一切存在しない。


 どこを調べても情報は出てこず謎に包まれたゲームとして一層の騒がれ方をした。


 そんな摩訶不思議ゲームとして配信当初は一切の宣伝もないのに同時接続人数が200万人も集まったりもしていたがゲームの使用がきっかけでほとんどがやめてしまった。


 そして俺、直弥なおやは今このアオゲーで古株のプレイヤーである。


リリース開始と同時にゲームを初め、毎日家ではpc、外ではスマホと両方を使い分けて遊んでいた。


中一の頃からかれこれ5年間もこの生活を続けており、気づけばアオゲーにどっぷりとハマっていた。


 ただ、ここまでアオゲーについて話してきてハマっているとも言ったが不満が無いわけではない。


  例えば今は改善されたが、それでもあくまで合意の上でなら性行為が行わえている。


それに実はカットされる部分を見ようとすれば見ることもできるのにも関わらずこのゲームは一切の規制をしていなかったり、課金システム自体はあるにはあるのだが、このゲームの課金は基本的には蘇生アイテムの購入といった感じで、ガチャというものが存在せず初めてすぐ強くなるといったことができないので、


ただ課金するだけでは強くなれずコツコツ育成した古参プレイヤーのキャラがとことん強く、新規プレイヤーが古参プレイヤーに追いつくには努力と運が必要になってくるというところだ。


 こういうところで新規が参入しずらく、また、1度死ねばデータが消えるという設定もあり、プレイ人口は世界を含めると約100万人日本だけなら20万人にも満たない数であり年々減少傾向にある。


 ゲームのキャラを見ながらスマホをいじっていると目的地のアナウンスが電車内に鳴った。


「まもなく〜須磨すま学園前〜須磨すま学園前〜お出口は右側でございます...」


 目的地のアナウンスがなり、


俺はスマホの電源を落としてバッグにしまい、


高校へ向かった。


 このときの俺はまだ知らなかった。


この後、今までの日常がたった一瞬の出来事で崩壊してしまうということを……


 直弥なおやがスマホの電源を切り、


学園に向かい登校している頃、


時間を同じくしてAnother onlineをプレイしている


プレイヤーの画面が暗転して同時にある文字が浮かび上がった。


「Another onlineをプレイしている皆様に重要なお知らせをします。


只今を持ちましてプレイヤー人口100万人、Lv120プレイヤー1000人


を双方ともクリアしたため、


Another online本来のワールドストーリーを現実世界とリンクして進行致します。


つきましてはAnother onlineをプレイしている


プレイヤーの皆様方に緊急クエストを強制受注してもらいます。


クエスト内容、クエスト報酬はクエスト受注画面をご確認ください。


これより、2時間の同期時間を持ちましてAnothe onlineはサービスを終了し、


Another Real Worldのサービスを開始させていただきます。


皆様、ご健闘をお祈りします。」


 暗転した画面に文字が流れ続け辛うじて機能したメニュー画面だけが残った。


メニュー画面にはプレイヤーキャラとほとんどの機能に鍵付きのロックマークが付いており機能しているのはクエスト確認ファイルだけ、


それを開くとたった一つのクエストがあり、


開くと地図が表示され複数のポイントに星マークと色が付いていた。


クエスト内容は星マークがある場所へ向かえというもの、


報酬は???で二時間後報酬開示の文字が書かれていた。 


 日常が崩壊し、新しい世界が始まるまで


"残り二時間"












































































































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