第3話 魔術師ってなんですか?

そして冒頭第1話のラストに戻る。


不自然にならないようにこの世界の旅人の装備を女神シルバーに貰い着替えたのちに、戦闘にならないようさっさと彼女の力で最寄りの街まで瞬間移動してきた俺たちはギルドと呼ばれる冒険者たちの集まる大きな酒場と役所を兼ねたような場所で鑑定を受けているのだった。

なお転送は最初だけ、余程のことがない限りは怪しまれるので使わないでおこうとは俺から具申した。


「いらっしゃいませこちらは貴方の冒険のパートナー、冒険者ギルド商業都市バラン支店、【森の湖畔亭】です!冒険者登録ですか?」

「ああ。」

「3名様ですねー登録と鑑定は無料ですのでどうぞこちらへ!」


ミニスカメイド服のような、大きなお山と谷間が際立つ明るい受付嬢に登録カウンターからついて行くとそこは巨大な水晶玉の鎮座する占いの館みたいな部屋だった。それにしてもホントでかいな!大の大人でも抱えきれないほどのサイズの透き通ったクリスタルの球だ。


「⋯これがこの世界での鑑定スキルを有した魔道具ですね。お2人に渡したスキルでも同等の結果が出ますが。」とは女神の談。

こういった公式の場で鑑定することで冒険者としての登録も兼ねているのだそうだ。


因みにここまで疑問に思わなかったのだが、俺たちの言葉は自動的にこの世界の言葉に翻訳されて伝わるらしい。こちらが日本語で喋ったり書いたりしてもあちらにはきちんと伝わる上に異世界の言葉や文字もこちらには普通に日本語として受け取れるのだと言う。

まさかことわざや慣用句まで?と思ったらそれはうまいことこちらでの言い回しで伝わるとの事。便利すぎやしないかこの異世界言語スキル。


「じゃあ私から!どんなジョブかなー?」


と、かえでが水晶玉に触れるとそこには魔物使いテイマーと表示されていた。


「おお、コレはレアなジョブですね。テイマーが魔物と相対すると稀に戦意を失って従うようになるそうです。この国では見た事ありませんのでステータスを確認してみてください。」

「凄い!異世界モノだと主人公クラスだ!」

「そうですね、物語の英雄にも魔物使いは存在したことがあるそうですよ?」


そんなやり取りからも言語スキルは活躍していることが伺われる、便利なもんだな。

そして次はシルバーが水晶玉に触れる。あれ、女神でも鑑定されるの?


「えーシルバーさんは⋯【魔導騎士マジックナイト】ですね。剣も魔術も使えるジョブです!」


「⋯ということにしておきました。地上の魔道具では女神を鑑定できませんので。」とコソッと教えてくれた。そのグラマラスな身体であんまり接近しないでほしい⋯、駄女神なのにいい匂いしたし。


「では最後にユウスケさんですね、どうぞ!」


そして俺が水晶玉に触れると⋯ここでおかしなことが起きる。

今まで2人が触れた時はスっと鑑定結果が出ていたのに俺の時は何も出なかったのである。


「あれ?もう一度宜しいですか?」


促されるままに手を触れると今度は表示が砂嵐になり、すぐに戻った。

そしてそこには【魔法使いクリエイター】と表示されていたのだった。


「魔法⋯使い?え、これマジで一回も見たことありませんけど⋯ちょっとお待ちくださいね!」と受付嬢さんは奥に引っ込んでいってしまった。


「⋯シルバー、どゆこと?」

「え、わたくしにもわかりませんね⋯悠介さんの身体適性として選ばれたのが魔法使いのはずです。それにしてもクリエイターとは⋯?」

「私たちの世界だと何かを作り出す技術者とかを指す言葉だね、創造者とか。」

「なるほど、ここで突然剣士だとかガンナーだとか言われても俺にはしっくり来ないから妥当だと思うわ。」


するとそこへ、お待たせしました!と受付嬢さんがヒゲをたっぷり湛えた初老のいかにも魔法使い然とした男の背を押しながら戻ってきた。


「やれやれ、ワシはこのギルドの副ギルド長を務める者でトロンと申す者。あなたがその【魔法使い】ですかな?」

「はい、何かおかしいことでもあったんですか?」

「道すがら聞いたが、ワシもこの業界に慣れ親しんだ身ではあるのだがこの歳までそのようなジョブは見たことも無いのだ。」


え?ここって剣と魔法の世界なんでしょ?

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