乙女ゲームの悪役!と思えば、ケモ耳がありました。

結魔莉<ユマリ>

転生前

プロローグ改


「?」


 突然白い空間に放り出されて頭が混乱してる中、出てきた一言が言葉にならない声だった。


 自分は何をしていたのだろうか、あまりわからない。


 ただ、ルルと言う自分の名前だけを覚えていた。


「…ここは、一体どこよ」


「……ここは天界です」


「!?」


 独り言のつもりで零した声が、まさか拾われるとは思わなくて、肩が少し揺れた。


 恐る恐る後ろを振り向くと、金髪の男性が一人佇んでいた。


「はじめまして」


 とりあえず挨拶だけはしておこうと、軽く頭を下げた。


「…はじめまして」


 男性は少し苦笑を浮かべ、控えめな声で挨拶してくれた。


 そんな男性を見て、私は疑問に思ったことを口にした。


「あのう……貴方は一体何者ですか……?」


 不躾ながらも呟いた声を聞いて、男性は数回瞬いた。


「あぁ、そう言えば名乗っておりませんでしたね。失敬。私は、貴方達の住む世界で言うところの『神』です」


「神……?」


 男性の言葉に、戸惑ってしまう。


 –––––––神様なんて、空想の中だけの存在だと思っていた。


 これまでの急な流れに頭が追いつかない。


 神…………神!? え、私死んだの?


 え…でもどうやって死んだの……?


 思い出そうと必死に頭を働かせるも、中々出ない。と言うか、もやが掛かっているような、変な感じだ。


「あ、一応言っておきますと貴方の死因は急死ですよ」


 アレコレ考えてたら神様?が死因を教えてくれた。


 急死? なぜに急いで死んだ私の体。別に死にたいわけじゃないんよ?


「貴方の魂が浄化されそうな時に私がここにお連れしました」


 腕を組んで考えている私を不思議そうに見つつも、神様?は話を進める。


「魂…浄化…。それで、他には?」


 私が相槌を打つと神様?は心底驚いた表情になった。


 おいなんだその反応。意外みたいな顔すんなよ、普通だろうが。


 私がジト目で睨むと神様?は咳払いをして口を開いた。




 –––––これが私の物語の始まりだとは、思いもしなかった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る