ヾ(。>﹏<。)ノ゛✧*。第一層目

1話♡:とりま蛇召喚します。

 どれを召喚するか。

 悩んだ末に、僕は子蛇を召喚する事に決めた。

 子猫や子犬を選ばなかったのは、それだとクラスメイトに舐められるような気がするから、という切実な理由ですかね。

 だって、猫とか犬とか傍に置いても、ただ和んで可愛いだけであって、万が一襲われた時に抑止力にならないじゃん。

 でも、蛇だったら?

 例え小さくても、見た目ショボくても、怯む可能性がある。


 と言う事で、僕は子蛇を選択した。

 すると、続いてオスかメスか選んで下さいと出たので、少しだけ考えて、メスにした。

 今の僕は女だから、それに合わせて見たのだ。

 で、性別の選択を終えると、お次は名前を決めて下さいと出た。


「……どういう名前にしようかな」


 どうせつけるなら、蛇にちなんだ名前が良いかな?

 例えば、エキドナと言うのはどうだろうか。

 確か蛇の怪物の名前だ。

 他には……あまり思いつかないや。

 エキドナにしよう。


 名前を記入し終えると、画面が少し変わった。


 ――必要事項の選択が全て終わりました。それでは召喚致します。


 そんな表記が出た。

 どうやら、これで全てが終わったらしい。

 すると、急に精神的疲労感が押し寄せて来た。

 召喚するにあたって、魔力を消費しているっぽい。

 慣れるか、もしくはレベルが上がってステータスが向上すれば、マシになるんだろうけれど、今の僕には結構キツいかも……。


 ぺたん、と僕が地面に座り込むと、まもなくして、淡い光と共に30cmくらいの蛇が目の前に現れた。

 赤と黒のしましま模様の小さい蛇だ。

 無事に召喚出来たようで、一安心であり、疲労感も時間の経過と共に徐々に薄れて行く。

 小蛇――エキドナは、するすると僕の腕に絡みつきながら登ってくると、ちろちろと舌を出したり引っ込めたりしながら、顔をこっちに向けた。


「いい子いい子」


 蛇は苦手と言えば苦手なんだけど、自分がこの子を召喚したんだなと思うと、どことなく可愛く見えてくるのだから不思議なものである。

 模様も何かお洒落に見えてくるね。

 頭を撫でて見ると、エキドナは、目を細めて満足そうな顔になった。


 さて……早速だけど、エキドナのステータスを見てみよう。

 鑑定眼的なスキルを僕は持ってないけど、配下もとい自分の召喚獣のステータスくらい、さすがに見れるよね。


 ――――――――――

 名前:エキドナ 

 性別:メス レベル:0.1

 次のレベルまで:0/50


 動体視力0.50

 基礎筋力0.35

 身体操作0.88

 持続体力0.50

 魔力操作0.62

 魔力許容0.75

 成長水準0.65


 スキル 暗視0.50 毒牙0.65

 経験値配分 均等

 ――――――――――


「見れたのは良いんだけど、ひ弱な感じが……」


 別にそこまで強いとは思っては居なかったけど、数値的には明らかに僕以下で、1を超えてるステータスが一つとして無かった。

 物理的な強さは期待出来そうにない。

 ただ、その代わりなのか、ちょっと面白そうなスキルを持っているっぽい事に僕は気づいた。


 ――――――――――

 暗視:暗闇での感知能力。距離、明度等は、スキル値に依存。

 

 毒牙:噛み付いた相手に、毒、麻痺、眠り、出血の中からランダムに選ばれた状態異常を与える。成功率、および各種状態異常の強さはスキル値に依存。

 ――――――――――


 暗視は探索に、毒牙は対魔物に効果を発揮するスキル。

 使い方によっては、かなり有用だよね、これ。

 ステータスが低いからと言って、全てが駄目、というわけではない感じ。


 ……少しは、僕の前途に希望が見えてきたね。


「おーい! 全員、ステータスの確認は終わったかー!? そろそろ探索始めるぞー!」


 ゴリの威勢の良い声が響き渡る。

 どうやら、皆でこの洞窟を探索する、という事で方針が決定したらしい。

 確かに、いつまでもここでジッとしては居られないので、それには僕も賛成である。

 異論は無い。

 この洞窟内は薄暗いけど、壁には等間隔で火の灯った松明が掛けられていて、進めない程真っ暗って程でも無いから、調べないって手は無いからね。


■□■□


 クラスメイトが徐々に集まり、列を作り始めるたので、僕も、服の中にエキドナを隠しながら、倣って並んだ。

 位置は最後尾だ。

 理由?

 クラスメイトの視線を浴びたくないからです。

 まあ、それでも、チラ見してくるヤツはいるんだけど……そいつらは無視しよ無視。


 ちなみに、エキドナを服の中に隠したのにも、理由があるよ。

 説明を見る限りでは、召喚獣を異空間にしまったり出したり出来るようだけど、その場合魔力を使うっぽくて、それを少し考慮したんだ。

 もしも、気づかない内に魔力が枯渇してしまったら、大変な事になるかも知れないからさ。

 そこらへんの感覚を掴めるか、もしくは安心して休める場所を見つけるかするまでは、なるべく外に出したままにして置きたいのですよ。


「うん? おーい、勇気! 前とか真ん中に並べよ! 今のお前は女の子なんだし、その方が安全だろ?」

「だなー。その方が尻とか揺れるおっぱい見れるしな」


 チラ見だけじゃ飽き足らなくなったのか、クラスメイトが直接的に女を意識する言葉を掛けて来る。

 さすがに、こうなっては、無視も出来ない……。

 僕は取り合えず威嚇する事にした。

 睨みつける。


「あらら、怒っちゃった」

「こえーこえー」


 うんうん。

 だから、近づかないでね。


「……ん?」


 と、ふと、近くに並んでいた男の子と目が合った。

 確かアイドルオタク……の男の子だ。

 もじゃっとした頭で、名前は、なんて言ったっけ。

 この世界に来る前から、あまり絡みが無かったから、覚えていないや……。

 取り合えず、モジャ男とでも呼ぼうかな?

 勝手にあだ名つけるのって、申し訳ない感じするけど、でも、「知らないから教えて」って言うのは、それはそれで気分悪くしそうじゃん?


「あ、あの、小桜くん、何か大変な事になったね」

「そうだね。異世界に転移なんてどこのWEB小説だよって話だよね」

「それもなんだけどそれよりほら、小桜くん体が……」


 モジャ男の視線が僕の胸と顔の辺りを行ったり来たり。

 あぁそう、ブルー〇スお前もか状態なワケね……。

 僕が呆れ眼でモジャ男を見ていると、モジャ男の顔が一瞬でぼうっと真っ赤に染まった。

 いやいやいやいや……。


 モジャ男って、大人しそうで害は無さそうに見えるんだけど、一方で年頃の男の子の性もきちんと持っていると言う事なのか……。

 心の中に獣を飼っているに違い無い。

 念のために牽制しておこうか。


「言っておくけど、僕は、元々は男だからね? 今は体が女かも知れないけど、そうなんだよ?」

「ご、ごめん」

「もしも変な事しようとしたら……毒持ちの蛇をけしかけるからね?」


 と、僕は、服の中に隠してたエキドナを呼んだ。

 すると、背中から脇腹を通り腹筋の辺りから上に進んで来て――エキドナは胸の谷間からぴょこんと顔を覗かせた。


 いや、どっから出て来てんの。

 それは駄目でしょ。

 一体誰へのサービスなのかな?


「ひっ」


 まぁ、ともあれ、エキドナを見てモジャ男の顔がひくついた。

 牽制成功である。


「女の顔とか胸とかジロジロ見ないようにね。……元男の僕だから、まだこの程度の注意で済んでいるけど、普通の女の子だったら顔と胸を執拗に見られたらドン引きだからね」

「……気をつけるよ」


 モジャ男がしゅんとする。

 童貞と言うのは、かくも脆い生き物のようだ。

 少し言葉でつついただけで、こんなにも落ち込んでしまうとは……。

 まぁ、僕も人の事言えた経験なんて持ってないけどね。



 さてはて、こんなやり取りをしつつ、再び行進に気を向ける。

 クラスメイト達が、懲りずに、チラッチラッと僕を見てくるけれど……しっしっと手を振ると顔を逸らすので、まぁそれは大きな問題では無く、そんな事よりも、歩き始めて分かった事が実は一つあった。


 それは、なぜ、世の女性が胸にまで下着をつけているのかって事である。

 それが無いと胸が揺れるからなのだ。

 今の自分が、それなりに巨乳な事もあってか、ぶっちゃけこれが凄い気になる。


 取り合えず、ジャージの上着を脱いで胸の下辺りで結んで、一時凌ぎする事にした。

 すると、揺れが少しマシになった感じがした。

 もっとも、逆に胸を強調するような形にもなったけれど……。

 まあ、揺れないようにって言うのが目的だったから、そこらへんは気にしてもしようがない。


 ……うーん。

 少し恥ずかしいけど、女性用の下着が欲しい。

 わりと真面目に重要事項。

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