この出会いは間違いじゃない

山谷希望

プロローグ

「えーっと、ここの…」

 カタカタ…

 スラスラ…

 教授の声、パソコンのタイピング音、ノートをとる音のみがこの講義室の中に響き渡っていた。

 講義が終わり、俺はしばらく次の講義までに時間があるので、キャンパスを後にする。と言っても俺の向かう先は決まっていた。

 大学の近くのカフェだ。

 中に入ると、空いている大学生や、社会人、家族など様々な人がいた。すると、俺の方へ手を振っている一人の女子大生がいた。俺はそいつのもとへ行く。

「ごめん、待たせたな」

「いやいや、私も今来たところ」

「そっか」

 俺はそいつの向かいの席に座る。こいつは俺の彼女で、俺が大学で初めての合コンの時、しつこく猛アピールをされ、付き合うことにした。と言っても俺は特に不満もなく、楽しく過ごしてるし、何度かデートにも行った。

「何頼む?」

「じゃあコーヒーで」

「え、ブラック?」

「あぁ。なんか変か?」

「えー!ほんとに?何の目的?」

「別に何もないよ」

 各々頼むものを決めを決め、店員に注文する。

「そう言えば涼太、第二外国語何取った?」

「俺か?まぁ無難に中国語だな」

「そっかぁ、私はスペイン語にした」

「どうしてだ?なんかやりたいことでもあるのか?」

「なんか、かっこいいじゃん!」

「お前らしいが、もうちょいマシな理由なかったのかよ?」

「だって、英語とか取ってるし、別に中国語とかいいやって感じでさ。」

「やりたいこともないのか?」

「まぁね!」

「そのくせして、お前は文一受けたのかよ」

 文一というのは俺の大学は受験する時にいきなり学部は選べないので、文系理系でまず別れ、そこからコースを選ぶ。俺と彼女は同じ文系で、俺は文系の中では二番目に難しい文二を受け、彼女は最も難しい文一を受けた。

「そうそう!」

「落とせばもっと受験勉強楽になってたと思うぞ」

「そうだけど、なんか落とすのって、プライドがさぁ」

「気持ちはわからんでもないが、よくそんなモチベーションで受かったな」

「まぁね、私ってやっぱ天才だから」

「・・・・」

「ちょっと、聞いてる?」

「ごめん、ぼーっとしてた」

「わざとしたでしょ!」

「ばれてた?」

「当たり前でしょ!ほんと、この男は」

「じゃあ、こんな男となんて付き合いたくないよな?」

「違うよ!別に嫌いだなんて言ってないじゃん」

「ふっ、こういうのお前弱いよな」

「最低!」

 するとそこに店員が、注文した品を俺たちのテーブルに置く。

「あんたどうせ高校時代彼女なんていなかったでしょ?」

 ガムシロップを入れながら俺に言う。

「いや、それは違う」

「え!?」

「驚きすぎだろ」

「だって、あんた高校時代彼女いなかったって聞いたけど」

「あ、そういうのわかってて聞いたんだ。なかなかひどいな」

「それで、どんな子だったの?」

「んー、一言で言うなら」


「今の俺の生みの親、かな。」

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