第4話 夜は、暗いからこそ美しい

「ご苦労様」と言ったのは、断罪所に控える騎士団達だった。彼らは部屋の中に少年達を迎え入れると、何処か虚ろな顔で少年達の動きを眺めていた。少年達の事(「捕まえるのが襲い!」や「たかが一人に何てこずっている」など)を批難するわけでも、自分達の立場を主張するわけでもなく、ただ「精鋭集団」と言う意識だけを持って……今回はいつもと少し違っていたが、眼前の光景をじっと眺めている。少年達が部屋の片隅にレウードを置いた時も、その堕天使に哀れみこそ抱いたが、顔自体には何の表情も浮かべていなかった。

 

 騎士団達は感情の読めない表情、その視線にすら仮面を付けて、堕天使の少年をしばらく見ていたが、やがて少年達に視線を戻すと、穏やかな声で少年達の労を改めて労った。


「大変だったでしょう?」


 少年達はその言葉に瞬いたが、すぐに「いや」と微笑んだ。


「これも、俺らの仕事だからさ。アンタらに労われるような事は、していねぇ。俺らは、俺らの役を果たしているだけだ。アンタらだって同じだろう? 大天使様のお裁きを上手く回すためにね。毎日、懸命に働いている。今日だって」


「はい」と応えたのは、堕天使の前に立っていた少女だった。「お裁きがあります。社会の秩序が崩れて以降、罪人の出現は後を絶ちませんから。払っても、払っても、湧いて来る。まるで渇きを知らない湧き水のようです。水源を絶たない限り、彼らの出現は収まらない。彼らの出現を抑えるには、。どんな手段を使っても」


 少女は、少年達の顔にそっと目をやった。


「大天使様は今日も、その難敵と睨み合っています」


「……そうですか」と、礼儀正しそうな少年。「それは、本当に難儀な事ですね。他の方々は、マクマート様のご葬儀に行かれたのに。お一人でお裁きをなさるのは、やっぱり辛いモノがあるでしょう」


 少年は大天使の心中を察したが、少女の方は至って冷静だった。


「胸が痛みます」の言葉も、何となく嘘臭い。まるで周りの空気に合わせたような言い方だった。「私なら絶対に耐えられません」


 少女は「クスッ」と笑って、堕天使の少年にまた視線を戻した。


 観客達の歓声が聞こえたのは、正にその瞬間だった。壁の厚さを無視して、「ワーワー」と響く歓声。その声は、天使でありつつも、天使である事を忘れた、獣達が吠える雄叫びのように思えた。


 騎士団達は「それ」に声に眉を潜め、少年達は顔を強ばらせた。


「お裁き、ですか?」


「はい」


「罪人の男は、確か」と、また礼儀正しそうな少年。「『モラン』と言いましたね? ウェステリアの法に従わなかったとか?」


「はい」と、先程の少女が頷く。「何とも情けないお話ですが。私達の生活は、そのすべてが『保障されている』と言うのに。彼は、『それ』に噛み付いたんです。何が不満だったのかは分かりませんが、『とにかく納得行かない』と、自分で自分の人生をふいにした。私達には、到底分からない行いです。自分の立場をきちんと弁えてさえいれば」


「裁かれる事もなかったのに。僕も、貴女と同意見です。僕達は住む家にも困っていないし、それに」


「はい、生きる意味さえも与えて頂いた。普通なら一生気づけないかも知れないそれを。この国は、初めから与えて下さったのです。私達が生まれた瞬間から。私は、『それ』を『幸せだ』と思います。意味も無く生きつづけるのは、やっぱり辛いですから。天使が天使として生きるためには、その目標がどうしても必要です。しかもそれは、社会的に有意義なモノでなければならない。無意味な行為は、その周りにも悪い影響を及ぼします。それは、生きる意義にも反する事ですから」


「『命は、集団の為に使え』ですね?」


「そう、『命は、集団のために使え』。有名な聖典の一節です。私は、その一節がとても好き」


 少年達はその言葉に微笑んだが、次の大きな歓声が聞こえて来ると、互いの顔から視線を逸らし合って、眼前の騎士団達に頭を下げた。


「そんじゃ! 俺達は、これで」


「はい」


 少年達は騎士団達にもう一度頭を下げたり、隣の仲間と仲良く笑い合ったりして、部屋の中から楽しげに出て行った。


 騎士団達は、その背中を見送った。最初はやはり、感情の読めない顔で。だが少年達の姿が見えなくなると、それまでの空気が嘘のように、ある者は床に唾を飛ばし、またある者は部屋の壁を殴ったりして、自分の感情を次々と表しはじめた。


 彼らは先程の少女に目をやり、呆れ顔で溜め息をついた。


「命は、集団のために使え……か。ふん、何とも素晴らしい言葉だ。己を殺して、集団のために尽くす。統一国家には、最高の言葉だろうよ? あらゆる者が、国家を第一に考えているんだからな。理想郷以外の何モノでもない。誰も国家を疑わず、それを『ただ正しい』と信じる。妄信的な馬鹿には、天国みたいな所だ。自分で考える必要もないし、その本質を」


「ダメ」と、先程の少女。「それ以上は、いけない。批判は、術の力を弱らせる」

 

 少女は、青年の言葉を制した。


 青年はその言葉に「ハッ」とし、慌てて少女に頭を謝った。


「すまない」


 周りの騎士団達も、その謝罪に口を閉じた。彼らは互いの顔を見合うと、真剣な顔で観客達の声に眉を潜めたり、それを見下ろしているだろう大天使に苛立ったりした。


 大天使は、罪人の顔を睨み付けた。罪人の顔は……一言で言えば、いやらしい。色恋を主食とするような不潔さは感じられないが、「ニカッ」と笑った顔や、胸元が露わになった服からは、何処か権力に対する挑戦、塩の入ったスープで首に繋がった鎖をじっくり錆びさせるような雰囲気が感じられた。

 大天使の眼光にまったく怯んでいない様子からも、その雰囲気がしっかりと伝わって来る。罪人は(20近い若者であった事もあるが)自分が罰せられる立場でありながら、その立場自体を何処か楽しんでいるようだった。


 大天使はその態度に苛立ち、声の怒気をより一層に強めた。


「貴様の言い分など知った事ではない! 貴様は、ただの堕天使だ! 堕天使は、黙って」


「はい、はい」の返事も軽い。大天使の事を完全に舐めている。「『下界へ追放されろ』って言うんでしょう? ふん、上等じゃないですか? アタシは、下界の知識をちょいとばかりかじっていましてね。別に怖かぁありません。大天使様がとして、世に出されている書物を読んでも。下界は、本当に良い所だ。下界に住む者、アタシらは『人間』と呼んでいますが。奴らには、自由が与えられている。自分で自分の好きな商売をはじめても良い、才覚がある奴は国の官吏に志願しても良い。『基本は、どんな事をしても良い』って自由です。ウェステリアに、その自由がありますか?」


「そんな物は、必要ない! 先程も言った筈だ! 貴様の言い分など、知った事ではないと。貴様は、ふんっ! これ以上話しても、時間の無駄だな」


 大天使は臣下達に代って、直属の部下達に命を出した。


「やれ!」の言葉から、すぐさま現れる騎士団達。彼らは罪人の周りを取り囲み、例の儀式をやりはじめた。その光景に興奮する観客達。大天使も得意げな顔で「それ」を見下ろしていたが、当の本人は慌てるどころか、その光景を楽しんですらいた。「ふん」と笑った顔からも、その余裕が窺える。「お得意の公開処刑か。素敵な光景だね。まあ、アタシとしては最低だが」

 

 罪人は「ニヤリ」と笑い、両目の瞼を閉じた。


「さらば、我が愛しき故郷よ」


 を最後に消える罪人の姿。


 観客達はその光景に狂喜したが、大天使はその声を制した。


「次の罪人を呼べ!」


 騎士団達はその命に従い、部屋の中で眠る堕天使を叩き起こして、意識がまだはっきりしていない彼を審議場まで引っ張り、その頬をもう一発殴って、審議場の中心に彼をしっかりと立たせた。


 レウードは頬の痛みに苛立ちつつも、周りから聞こえて来る観客達の怒声や、自分が今立たされている場所、断罪席の中央に立つ大天使を見て、今の自分が置かれている状況をすぐさま理解した。


 ……俺は、と同じ場所に来たんだ。


 言葉では言わなかったが、きつく握られた彼の拳には、その思いがはっきりと見えていた。

 

 レウードは地面の上に目を落とし、それからまた、大天使の顔に視線を戻した。


 大天使は、眼下の少年を嘲笑った。


「先程、治安部隊の者から報告があった。『町の中で現行者を捕まえた』と」


 観客達は、その言葉に響めいた。特に「現行者」の部分には、強い興味を抱いたらしい。「なに?」の声が、いつも以上に震えていた。「『現行者』だって!」


 他の観客達も、その驚きに続く。


「そいつは、本当に珍しいな。『現行者』と言えば」


「同胞の前で堕天使になった者。あるいは、その姿を現した者。現行者の堕天使は、我々の髪とは違うからな。一発で分かってしまう」


「なのに捕まってしまうとは。大方、町の中心部にでも逃げたんだろう?」


 彼らは、少年の短慮さを笑った。


 レウードはその声に苛立ったが、それに対して言い返す事はしなかった。彼らから言われなくても、そんな事は充分に分かっている。金髪しかいない天使達の中に居て、自分の黒髪は正に異質な存在だ。どんなに上手く隠せても、その黒だけは決して誤魔化せない。単色の世界に違う色が混ざれば、その色は絶対に目立つのだ。


 レウードは、自分の足下に目をやった。彼の足下にはまだ、「紋章」は描かれていない。審議場の中央まで彼を引っ張って来た騎士団達も、彼から少し離れた場所でこちらをじっと眺めてはいたが、それ以上の事はまだ何もしていなかった。


 レウードは、心の中で思った。逃げるなら今しかない、と。騎士団達は治安部隊よりも数倍強い相手だが、今の状況から何とか逃げ出したい彼としては、その絶望的な低確率にどうしても賭けざるを得なかった。身体の神経を研ぎ澄ませ、その瞬間を何も言わずにじっと待つ。


 レウードは最初の一歩に全力を込めて、今の場所から勢いよく走り出そうとした。


 だが、「うっ!」


 現実はそう、甘くはない。最初の数歩も走らない内に、自分の足が何故か動かなくなってしまった。足への命令が突然遮られ、身体全体が石になったような感覚。その理解し難い怪現象の中で数少なく動かせたのは、動揺を隠せないでいる目と、「どうして?」と驚くばかりの口と、何故か向きだけが変えられる身体の筋肉だけだった。


 レウードはギコチなくなった動きで、大天使の方にゆっくりと向き直った。


 大天使は、その有様を嘲笑った。


「捕縛の秘術。貴様も聞いた事があるだろう? 相手の動きを制し、その行動範囲を縮める。これでもう、貴様は動けない。俺が術を解かない限りは、な。己の醜態を晒しつづける」


「くっ」


 レウードは、大天使の顔を睨んだ。身体の自由はもちろん、自分の尊厳を踏み付けられても、その抵抗だけは決して止めない。眼前の敵から視線を逸らすのは、自分の信念に嘘を付くのと同じだった。自分は何も間違っていない。何も間違っていないなら、そこから視線を逸らす必要もない。


 彼が今の状況で考えているのは、ただ一つ、自分の信念を曲げない事だった。


「それがどうした?」


「なに?」


「俺の身体を縛ったからって、その心までは縛れやしない。お前は、心の力を甘く見ている」


 大天使は、彼の言葉に目を細めた。どうやら、かなり不遜な子どもらしい。


「ほう。では、その心の力とやらで」


 それをどうにかしてみろ、と、大天使は言った。


「貴様の言葉が真なら、俺の力からも逃げられる筈だ」


 レウードは彼の術から逃れようと足掻いたが、その術からは結局逃れられなかった。


 大天使は、その結果に溜め息をついた。


「まあ、現実とはそんな物だ。心の中では、どんな理想も語れる。それがたとえ、どんなに叶わぬ夢であっても。花畑を作れるのは、何も庭に限った事ではない」


「くっ」


 二人は、互いの目を睨み合った。


「少年」


 無言の返事。


「諦めよ」


 慈悲に溢れた言葉。「すべての反抗を棄てて、世界の枠に収まれ」と言う助言。天使達にとっては最高の恩赦だったが、それを受け入れない少年にとっては、最大の侮辱に他ならなかった。


 レウードは両目の涙を必死に抑えつつ、大天使の目をじっと睨みつづけた。


「諦めるわけには、いかない。俺には、まだ」


「『何だ?』と言うのだ? ええ?」


「それは……くっ」


「どうした? 答えられないのか? それとも、答えたくないのか?」


 レウードは、彼の挑発に舌打ちした。


「くそっ」


 考えろ! 考えろ! 考えろ! ここままじゃ、俺は下界へ追放されてしまう。

 そうなったら、「くっ」

 ここへはもう、戻って来られない。自分の夢を叶える事も……。アレは、俺のすべてなんだ。自分の一生を賭けても良いくらいの。


「俺は」


「まあいい、貴様の考えを知った所で。貴様は、下界へ追放される。その運命からは決して、逃れられない」


 レウードは、今の言葉に腹が立った。今の言葉は、どうしても許せない。


「そんな事は、ないよ! 自分の運命は、自分の手で切り開く。お前だって昔、の言葉を聞いていたじゃないか? 『未来は、自分の手で掴み取らなくちゃいけない』って。俺は、その言葉を信じて戦って来た。何年も、何年も、お前が帝国くにの民を裁いている間に」


「俺が堕天使を裁いている間に?」


 大天使は、少年の顔をまじまじと見た。


「貴様は一体」


「レウード」


「その姓は?」


「ウィル」


「レウード・ウィル、か。ふむ、聞いた事があるぞ。ウィルの姓は……まさか!」


「そうだよ! お前に仕えている文士の、くっ! 俺は、そこの息子だ!」


 大天使は、少年の正体にせせら笑った。


「なるほど。その話が本当ならば、貴様は実に親不孝だな。貴様の親がどれだけ尽くしてくれているか、感謝の言葉も無い。貴様は、その心を踏みにじった。自分勝手な思いで。貴様のような」


「『クズ』って言いたいんだろう? お前から見れば……俺は、確かに救いようのないクズだろうさ。堕天使にもなって。けど! そんな俺でも、今をこうして生きている。自分の心をちゃんと持って。お前にも、相手を思う心はあるんだろう? 相手が何を思っているのか、それを感じ取る力が。お前には」


「それで? だから、『貴様の事も考えろ?』と。下らない。誰が堕天使の事など考えるか。堕天使はウェステリアの社会に背いた罪人、つまりは『生きる』に値しない存在だ。全体の調和を乱す者は、早急に取り除かなければならない。それがたとえ、何者であっても」


 大天使は、眼下の騎士団達に命じた。命令の言葉はもちろん、「やれ」の一言である。その言葉で騎士団達は動き、少年の足下に紋章を描いて、例の呪文をゆっくりと唱えはじめた。


 レウードはその光景に脅えたが、視線の方は決して逸らさなかった。彼にはまだ、最後の希望が残っている。ほんの小さな希望では、あったけれど。その希望には、彼の魂が書き残されていた。その魂を大天使に向かって叫ぶ。


「机の上!」


「なに?」


「俺の部屋には、今の社会を考察した資料がある。帝国の歴史書や、断罪所の裁判記録も。それらの資料には」


 そう言っている間も、光の鱗粉はキラキラと舞いつづけた。


「お願いします! 一度で良いから、その内容を読んで下さい! あのヒトが居ない今、帝国くにを変えられるのは貴方しかいないんです。それには、俺のすべてが書かれている。俺が今まで必死に集めて来た……。その資料を使えば、帝国くにの未来をきっと変えられる筈です!」

 

 それが最後の言葉だった。本当はまだ、何やら喋っていたようだけれど。鱗粉が彼の声を掻き消して仕舞ったので、その部分しか上手く聞き取る事ができなかった。

 

 観客達はその光景に歓喜し(少年の言葉に共感したわけではない)、大天使の護衛を仰せつかっていた兵士も、観客達程でないが、楽しげに「クスクス」と笑っていた。


「帝国の未来を変えるとは、かなり傲慢な資料ですね。大天使様、そんな資料は見るに値しませんよ? 文字通り、時間の無駄です」


 大天使は、兵士の声に応えなかった。兵士が言う通り、それは時間の無駄だろう。自分は帝国のあるじとして、保つべき事が山程ある。だがその一方、彼にもやはり「情」と言う物があった。「帝国の反逆者には非情でも、その反対には寛容」と言う風に。彼は「お利口ちゃん」には優しいが、「悪ガキ」にはとことん厳しい男なのだ。


「あんな悪ガキでも、ウィル夫妻にとっては大事な子どもだ。その子どもを失う悲しみは、計り知れない」


「大天使様……」


「今日の夕刻……少し遅れるかも知れないが、ウィル家の屋敷に向かう」


「承知しました。では、馭者の方にもそう伝えて置きます」


「頼む」


 大天使は悲しげに笑い、審議場の騎士団達に向き直った。


「次の罪人を呼べ!」



 夕刻よりも遅い時間。


 馭者は兵士の言伝に従い、断罪所の前に馬車を停めて、大天使がそこに現れるのを待った。


 大天使は、数分程で現れた。


「行き先は、分かるな?」


「ウィル家のお屋敷、で御座いますね?」


「そうだ」


 大天使は馬車の中に乗り掛けたが、アダムスと……あれは聖天騎士団の団長か? 二人が彼の前に現れると、地面の上に足を戻して、二人の顔にそっと目をやった。


「今日の断罪は、終わったぞ?」


「その様ですね」


 アダムスは「ニコッ」と笑って、大天使の前に歩み寄った。


「観客達の声が聞こえて来ない」


 大天使は、彼の目を見つめた。


「葬儀の方は、良いのか?」


「はい。私にできる事はもう、無いので。後の事は、家の者達に頼みました。先輩も皆様も、我が家の持てなしに喜んでおられますし。今頃は、亡き父との思い出話に花を咲かせていると思います」


「そうか、それは」


 良かったな、とは言えない。自分の臣下が愛されていたのは嬉しいが、それに微笑んで「良かった」と評する事はできなかった。同胞の死は、やはり悲しい。普段は無愛想な騎士団長も、この時ばかりは何処か陰鬱な表情を浮かべていた。


 大天使は、団長の顔に視線を移した。


「ガリスタも、すまなかったな。騎士団の代表とは言え、葬儀の参加を頼んでしまい」


「いえ」


 ガリスタはアダムスの顔に目をやり、また大天使の顔に視線を戻した。


「生前、私もマクマート様にお世話になったので。そこは、『天使の義理』と言うヤツです」


「そうか」と頷きつつも、大天使は眼前の青年に感心していた。「この青年は無愛想に見えて、本当は情に厚い男である」と。自分と似た印象を持つ彼は、「何処までも己の役目に従順な男だ」と思っていたが、その恵まれた体躯には、20代の青年らしい熱いモノを持っていた。


 ガリスタは、宮殿の馬車に目をやった。


「何処かに行かれるのですか?」


「ああ、ウィル家の屋敷に。今日の事を伝えようと」


「今日の」と言いかけた所で、ガリスタは言葉を飲み込んだ。話の内容は何となくだが、察せられる。沈鬱に俯く大天使の顔からは、言葉にできない感情、怒りとも悲しみとも言えない雰囲気が感じられた。

 

 ガリスタは、その表情に口を閉じた。

 

 アダムスは優しげな顔で、眼前の大天使に話し掛けた。


「大天使様」


「ん?」


「私達も、ご一緒して宜しいですか?」


「予期せぬ自体が起きるかも知れませんし」と、ガリスタもうなずく。


 大天使は、二人の厚意に微笑んだ。この厚意は、流石に無視できない。


「分かった。宜しく頼む」


 三人は大天使から順に、馬車の中に乗り込んだ。

 

 アダムスは馭者の男に命じ、宮殿の馬車を走らせた。

 

 馬車は、町の道路を進んだ。それこそ、天馬が夜空を駆けるように。道路の曲がり角では速度が若干落ちたが、それから真っ直ぐな道路に出ると、馭者が馬の尻に鞭を入れて、また元の速度に戻らせた。

 

 大天使は、馬車の窓から外を眺めた。窓の外には、美しい町並みが広がっている。良質の煉瓦で造られた資料館から、美しい形容の美術館まで。正に天界の理想郷だ。美術館の前には、若い天使達も集まっている。彼らは各々に学門書を持って、「ウェステリアの社会がどんなに素晴らしいか」を語り合っていた。

 

 大天使は……彼らの声は聞けなかったが、その光景に胸を打たれた。「なんて素晴らしい光景だ」と。彼らが居れば、帝国の未来も明るい。彼らは帝国の未来を照らす、掛け替えの無い松明なのだ。

 

 彼はウィル家の屋敷に着くまで、その感覚にずっと酔い痴れつづけた。

 

 屋敷の召使いは、大天使の訪問に仰天した。


「だ、大天使様! このような時間に」


「まだ、それ程でもないだろう? ウィル夫妻は、おるか?」


「ダリッシュ様とラフィア様ですか?」」


「ああ、そうだ。二人に会って、話がしたい」


「……畏まりました。少々お待ち下さい」


 召使いは屋敷の奥に向かい、大天使達が待つ玄関まで二人を連れて来た。


 ウィル夫妻は彼らの来訪に驚きつつも、穏やかな顔で彼らに頭を下げた。


「お久しぶりです、大天使様。お元気そうでなりよりです。本日は、どのようなご用件で?」


 大天使は、わざと声を潜めた。


「中で話せるか?」


 夫妻は彼の口調から何かを察し、慌てて屋敷の応接間に来客達を案内した。


 ラフィナは応接間の長椅子に客達を座らせると、今度は自分と夫もそこに座って、眼前の来客達にもう一度頭を下げ、怖い顔で屋敷の召使いに目をやった。


「皆様にお茶を」


「はい」


 召使いは彼女の命令に従い、応接間に人数分のお茶を運んで、テーブルの上にそれらを置き終えると、彼らに頭を下げて、応接間の中から出て行った。


 ダリッシュは、大天使の目を見つめた。


「それで、ご用件は?」


 大天使も、彼の目を見つめ返した。


「今日の昼間、貴様の息子を下界へ追放した」


「……そう、ですか。それは」


 言葉に詰まったのか、ダリッシュの声が一瞬止まった。


「うちの息子がご迷惑を」


「いや」からの沈黙。

 沈黙は、数秒程で終わった。


「息子が堕天使になった事は?」


「知っておりました。今朝、この目で見ましたので」


「そうか」


 また、数秒の沈黙。


「それは、残念だったな。なってしまったら、もう」


 大天使は長椅子の上から立ち上がり、優しげな顔で彼の肩に手を置いた。


「気を落とすなよ?」


「い、いえ! 僕……私達のために、そんな」


「貴様は、良く働いている。これは、当然の事だ」


 ダリッシュはまた、彼の言葉に頭を下げた。その隣に座っているラフィナも。二人は大天使の慈悲に感動したまま、眼前の彼に何度も頭を下げつづけた。


 大天使は、その態度に微笑んだ。


「実に素晴らしい夫婦だ。皇帝への礼儀と言い、その言葉遣いと言い、己の立場を良く弁えている。それに比べて! 貴様らの息子は、いつからああなったのだ?」


 夫妻はその答えに戸惑ったが、やがて「実は」と話しはじめた。


 大天使は長椅子の上に座り直し、それから二人の眉を潜めた。


「思想家に影響された?」


「ええ、『ヘジューイ・シモ』とか言う思想家に。息子はその思想に感化されて、あのような。私も不安に思っていたんです。アイツが堕天使の真似事をはじめたのは、今から一、二年前の事ですが。私達は、アイツの行動に驚きました。最初の頃は、何をしているのかまったく分からなかった。毎日、毎日、町の断罪所に出掛けて。アイツの雑記帳は、ご覧になられたでしょう?」


「雑記帳? いや、見ていないが。その雑記帳がどうかしたのか?」


「アイツは、そこに裁判の内容の書き留めていたんです。昨日の朝だって! 内容の方は、私達も見た事がありませんが。しかし」


「大凡の察しは付く、か?」


「はい、その通りです。アイツは頭も良く、行動力もあるんですが。何処かこう、『ずれている』と言うか。とにかく、『普通』ではないんです。私達の価値観とは、まるで違う。見えている世界がまったく違うんですよ。天使の『個性』だの『自立心』だの。そんなモノが、『何だ?』と言うんです? 私達の先祖は、その呪いに苦しめられて来ました。周りの欲望に翻弄されて」


「確かに。俺も、先代の大天使から良く聞かされたよ。『我々は、平和な時代に生まれたのだ。それに感謝できぬ者は、そこに生きる資格は無い』とね。先代の言葉は、尤もだった。己の心を極めた先に待っているのは、破滅。そこには、一つの救いも無い。俺達は、犬畜生ではないのだ。その理性を以て、天使の命を真っ直ぐに生きている。『今の現実に不満がある』と言う理由だけで社会に反するのは、理性の欠片も無い猿のする事だ」


「私達も、そう思います。だからこそ、私達は恥ずかしくて堪りません。『死ね』と命じられれば、今すぐにでも死んでしまいたい気分です。明日からどう生きて行けば良いのか?」


「貴様達の気持ちは分かる。だか、死んではならんぞ? 罪人の為に死ぬ事はない。貴様達には、貴様達の命があるのだ。この帝国に必要な。貴様達に死なれては、俺も悲しい」


「大天使様……」


「生きよ、ダリッシュ。それにラフィナも。二人は俺にとって、掛け替えの無い存在だ。身分の線引きが無ければ、正に『友人』と言って良いだろう。友人の幸せは、俺の幸せだ。そして同時に、不幸は俺にとっての不幸でもある。国の統制が甘いばかりに。明日からはもっと、その統制を強くしよう。国の社会に逆らうのは、『愚か者がする事だ』と、な」


「申し訳ありません、大天使様」


「そんな事は、ない。俺はただ、先代達がやって来た事を引き継いでいるだけだ。『世襲』の制度を廃し、己の資産や……ふっ。先代の大天使が俺を選んだ時、俺はまだ14歳だった。社会の事は、ほとんど分からない。貴様達の息子も?」


「はい、14歳です。先月、誕生日を迎えたので」


「ふふふ、そうか。俺は、先代の大天使から教育を受けた。帝国の歴史から、現代(当時)の社会まで。俺は、必死だった。先代の大天使は妥協を許さないお方だったが、その熱意にも並々ならぬモノがあった。俺は、それを『苦しい』とは思わなかったな。『自分は、とても意味のある事をしている』と思っていた。今の頑張りはやがて、多くの天使の救いになる」


「今も、私達を救っておられますよ?」


「ありがとう。そう言って貰えると。今の俺があるのは、貴様達が力を貸してくれたからだ。何が正義で、何が悪か。あの少年は」


「息子は?」


「『罪』に魅せられたのだな。反逆者の声に唆されて。あの少年が作った資料は」と言った瞬間だ。大天使の中でふと、ある考えが浮かんだ。


 大天使は「それ」に従って、長椅子の上から立ち上がった。


「すまないが、息子の部屋を見せて貰っても良いか?」


「え?」と、顔を見合わせる夫妻。「それは、構いませんが」


 二人は、大天使の顔に視線を戻した。


「しかし、何故?」


「貴様らの息子が言っていたのだよ。『俺の作った資料を読んで下さい』とな。俺はこの目で、その資料とやらを見たくなった」


 アダムスは、彼の好奇心に目を細めた。ガリスタも、それと同じ反応を見せた。二人は大天使の態度に倣い、夫婦の答えをじっと待った。


 夫婦の答えは、「分かりました」だった。


「では、お部屋の方にご案内します」


 三人は夫婦の案内で、少年の部屋を訪れた。少年の部屋は、暗かった。燭台の蝋燭はもちろん、机の灯りも点けられていない所為で。部屋の窓から月明かりが差し込んでいなければ、自分の手さえも見えなくなる程の暗さだった。


 ダリッシュは慌てて、蝋燭の先に灯りを点けた。


「申し訳ありません。普段でしたら、息子が」


 大天使は彼の謝罪を無視し、何処か子供じみた顔で、部屋の中を見渡した。


「ほう。こいつは、凄いな。部屋中に資料が散らばっている。床の上にも、そして」


 アダムスも、彼の動きに倣った。


「机の上にも」


 アダムスは、机の資料をじっと眺めた。


 大天使は少年の机に歩み寄り、その椅子に座って、机の資料に手を伸ばした。最初に開いたのは、ウェステリアの歴史書。次に「社会に対する考察」と題された資料を開いて、それを読み終えたら「改善点まとめ」の頁を捲り、最後に断罪所の裁判記録を開いた。


 大天使はそれらの資料を黙って読んでいたが、裁判記録の内容を読み終えた所で思わず吹き出してしまった。


「ふふふ、これは」


「どうなされました?」と、アダムス。「何かおかしな所があったとか?」


 アダムスは、好奇心の発露はつろを必死に抑えた。

 

 大天使は彼の視線に首を振りつつ、彼に少年の裁判記録を渡した。


「とても14歳の少年が作ったとは思えない。裁判の内容を一つ一つ、その感想や考察も含めてしっかりと書き留めている。まるで宮殿の記録簿を見ているようだ」


「そこまで……」


 アダムスは少年の努力に目を見開き、真面目な顔でその内容を読みはじめた。


 大天使は、椅子の背もたれに寄り掛かった。


「アダムスが読んでいる途中で悪いが。そいつは、正に机上の空論だな。そんな物を発表しても、ウェステリアの社会は変わらない。下界へ追放して正解だった。その方が奴にとっても幸せだろう。下界には、天使を崇める人間も多い。それがたとえ、『堕天使』であっても。屋敷の一つくらいは、与えてくれる筈だ」

 

 数秒の、と言って良いだろう。

 沈黙よりは短いが、それでも呼吸を忘れるには充分な時間だった。


「ありがとう、実に面白い資料だった。そこからは何も得られなかったが、良い暇つぶしにはなったよ」


 ウィル夫妻は、彼の言葉に頭を下げた。


「そ、そうですか! それは、本当に嬉しいです。その内容がどうであれ、我が息子の道楽を」


「ん? どうした?」


「あっ! いえ。うちの息子は、どうしようもないバカ息子ですが。そんな息子でも」


「ラフィナの気持ちは分かる。だが、案ずる事はない。下界へ追放された天使は……。ダリッシュ、ウィル家の天術は?」


「は、はい。ラウント……で御座います。相手に催眠効果のある光を当てて、心地よい夢を見せる。それから」


「中毒性のある夢……」


「どうした? アダムス?」


「い、いえ、何でもありません」


「そうか」


 大天使は、屋敷の主人に向き直った。


「息子は、その事を?」


「ええ、まあ。一応は知っていると思いますが、それを扱えるかどうかまでは」


「そうか。なら、心配は要らないな。完全武装の兵士よりも安全だ」


 大天使は椅子の上から立ち上がり、連れの二人にも退室を促した。


「それでは、失礼する。しつこいようだが、あまり気を落とすなよ? 息子の事は、仕方ない。あんな奴は、元から居なかったのだ。『レウード』と言う名の少年も存在しない。貴様達の息子は……そうだな、宮殿の記録係で良いだろう。都の常備軍でも良いが……。聖天騎士団の事はもちろん、知っておるな?」


「はい」


「その中には、奴と同じくらいの少年もいる。そいつらの事を息子だと思って、これからも俺のために励んで欲しい」


「はい!」


 夫妻は大天使達に続く形で、応接間の中から出て行った。


 大天使は夫妻を隣に、屋敷の廊下を歩いた。


 アダムスは三人の少し後ろを歩いて、見送り役にやって来た召使いの男と歩調を合わせた。


 彼らはガリスタの身体を壁にしつつ、前方の三人には聞こえないように小声で話しはじめた。


「どうして話してくれなかったんです? レウード君の事を。彼はわた、にすらなれたかも知れないのに」


「あの子は、暴力を嫌っていたからね。同族殺しには、したくなかった」


「なるほど。相変わらず」


「私は、優しくはないよ? ただ、あの子の事が好きだっただけだ。彼と同じ目をした、あの子の事を。ヘジューイは、偉大な思想家だった」


「地上へ追放された親友ですね?」


「ああ。彼は、私の師匠だった」


「僕にとっても、ですよ? は、僕達に道を示してくれた。『このままでは、いけない』とね。今でも鮮明に覚えています。母の気まぐれで偶々見せられた……。あの覚悟に魅せられたのは、レウード君だけではないんです」


 アダムスは大天使の後に続いて、屋敷の中から出て行った。


 大天使は馬車の中に乗り、アダムス達もその後に続いた。


 馭者はアダムスの命で、宮殿の馬車を走らせた。


 大天使はまた、窓の外を眺めはじめた。


「美しい世界だ。すべての調和が……一部にはおかしな物も混じっているが、綺麗に保たれている。それを壊そうとする者は……レウードよ! 貴様の夢が『ウェステリアの社会を変える事』なら、俺の夢は『それ』を叩き潰す事だ。夢には、己の為にあってはならない。広く世間のため、公益のために、『それ』を使わなければならないのだ。レウードよ! 貴様の夢に『それ』があるか? 己の家族を泣かせて、その家名にも泥を。レウードよ! 俺は、貴様の夢を認めない。貴様も俺の夢を認めないだろうが……それでも!」


「大天使様」


「アダムス……すまない。つい、熱くなってしまった」


「大天使様のお気持ちは、良く分かります。彼は、確かに不遜な少年だ。社会の秩序を乱して。今回の事は、当然の報いです。堕天使になるのが、如何に愚かな事か。彼は、相応の罰を受けたんです。上手くやれば、隠し通せた筈の罰を」


 大天使の顔が変わったのは、決して偶然ではない。彼は青年の発した言葉を、そこに込められた真意を、刹那に理解してしまったのだ。


「アダムス、貴様は」


「はい?」の返事を聞けたのは、一瞬。

 次の瞬間には、ガリスタに身体の動きを封じられていた。


「くっ!」


 大天使は、アダムスの顔を睨み付けた。


「いつからだ?」


「え?」


「いつから、を狙っていた?」


「それを知ってどうなります?」


「くっ!」


 大天使は、馭者の男に叫んだ。


「馬車を停めろ!」


 男は「それ」に応えて、馬車を停めたが……。ゴロンと転がる、馭者の首。それに続いて、残りの部分も地面に転げ落ちた。


 大天使は、その光景に目を見開いた。


「馬鹿な! 何故?」


「天術は、貴方だけの専売特許ではない」


 アダムスは、馬車の御者台から大天使の顔に視線を戻した。


「僕も、天術が使えるんです」


「なっ、くっ! そんな事は、有り得ない。貴様達の力は」


「パプリルースが封じた、ですか?」


「……ああ」


「物事には必ず、『例外』があります」


「……貴様がその、『例外だ』と言うのか?」


「はい。『それ』に気づいたのは、随分前の事ですが。僕には、三つの天術があります。相手の天術を封じ、その力を弱らせて……馭者の首を落としたのは、ガリスタですが。本来の姿を、偽りの姿で覆い隠す。僕の髪は、『黒』になっていないでしょう?」


「貴様も、堕天使なのか?」


「はい。ちなみに団長かれも。彼は、僕の親友です。今日も、先輩殺しの策に」


 ガリスタは、大天使の喉元に短剣を近づけた。


「そう言う事だ」


 大天使は、相手の脅しに怯まなかった。


「アダムス」


「はい?」


「貴様は、他人の正体も隠せるのか?」


「ええ、もちろん。その範囲には、限界はありますが」


「そうか」


 アダムスは、馬車の壁に寄り掛かった。


「降参して下さい」


「『嫌だ』と言ったら?」


「こうする」と言ったのは、ガリスタ。彼は何の躊躇いもなく、大天使の鳩尾を殴った。


 大天使は、その痛みに悶えた。


「う、ぐっ」


「流石は、大天使。一発では、やはり無理か」


 そう言いつつ、大天使の鳩尾にもう一撃。


「ぐっ、うっ」


 まだ、落ちない。だから、もう一撃。


「ガハッ」


 これで、ようやく落ちた。


 ガリスタは、倒れ掛けた大天使の身体を支えた。


「やれやれ。『男を抱く趣味は、ない』って言うのに。このジジイは、どうする?」


? 当然じゃないか? そうでないと何も変わらない。舞台の観客は、僕が集めるよ」


「了解。なら、騎士団の方は俺に任せてくれ」


「ああ」


 二人は互いの言葉に頷き合い、一方は大天使の顔に視線を移し、もう一方は夜空の月に目をやった。


「今夜の月は、満月か。満月は正直、好きじゃない。夜は、暗いからこそ美しいんだ。そこに光を与えるなんて」

 

 アダムスは不満げな顔で、夜空の月を眺めつづけた。

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