ホテル・スーサイド

大豆

序章  ~ホテル シーサイド~

そのホテルは、世間的にはラブホテルに分類されるモーテルだ。


軽薄なピンク色の壁は褪せ、男女の素敵な夜を彩ると言うより物悲しさが勝っている。


二階建てで計十部屋あるが、従業員は三人(厳密に言えば二人)。


ラブホテルと言えばとかく高速のインター近くに密集していたり繁華街から歩いてすぐの所に建っていれば客に事欠くことはないのである。


が、ここは県中心部から数時間離れた糞田舎である。どう言ったマーケティングでここにラブホテルを建てたのかオーナーを問いただしたいが、既に他界している。


このラブホテルの唯一の売りは日本海を見渡せること。


そう。手を伸ばせばもうそこは日本海なのである。


かと言ってロケーションを期待して訪れる客など皆無である。

くどいようだがここはあくまでなのだから。


こんなJRからもネクスコからも見離されたような僻地のラブホテルに訪れるのはどんな客なのか?


それこそが本題である。


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