第8話 魔性の女な優美さんの内情 「一部訂正」

 「え、オムライス?」

  優美さんは「そんなのでいいの?」と言いたげな様子で俺をみる。

 現在、俺と優美さんは朝の忠告通りに昨日と同じ場所で二人隣同士お弁当を食べていた。そして朝出された宿題を俺が答えたという状態。

 

 「はい。なんか無性にオムライス食べたくなって。ダメですかね?」

 ちなみになんでオムライスなのかと言うと、授業中に拓真がーー「昨日めっちゃふわふわなオムライスがインスタに載っててさ〜今度行こうぜ」とかいかにも陽キャな話をしてきたから無性に食べたくなったから。まぁでもオムライスなら安上がりだしね? それに手間もかからないし気を遣える男子感あるよねこれなら!


 「うーん……いいんだけどなんかもうちょい手間のかかるものじゃないとしっくりこないというか……」

 優美さんは微妙そうな顔をしてお弁当を食べ進める。あれ? 思ってた反応と違うんだけど? 料理にしっくりこないとか味だけの問題じゃないの?

 俺が優美さんを数秒見つめていると優美さんはいつもの閃いたような顔をして俺の方に勢いよく顔を向けてくる。


 「あっ! そうだ! じゃあオムライスだけじゃ味気ないしロールキャベツも作ろう!」

 ロールキャベツかぁ。確かに最近食べてないな。ヤバイお弁当食べてるのにまた別の食欲湧いてきそう……


「いいですねそれ。でも面倒じゃありませんか?」

 俺が少し様子を窺うように聞いてみると優美さんは小悪魔のような笑みを浮かべて俺に近づき囁くように

 「知ってた? 好きな男の子のためならいくらだって努力できるのが乙女ってもんなんだよ?」


 「………っ」

 だから不意打ちずるいって……マジで優美さんいろんな属性ありすぎて対応できないって……

 俺が必死に心を落ち着かせようとするとまるで見抜かれたように優美さんが俺の胸に手を置いてきた。


 「あっ、ちょっ?! 優美さん?!」

 や、ヤバイってこのタイミングは?! ドキドキしてるの思いっきりばれてて恥ずかし過ぎるんだけど?!


「……ふふ。ドキドキしてくれてるんだ〜嬉しいな〜」


「い、いやそりゃドキドキしますよ誰だって……それに何が嬉しいんですか……」

 あーあ……なんだこの俺のありふれる童貞感。やかましいわ。

 俺がぐったりした様子で聞くと優美さんは胸に置いていた手を今度は俺の頬に移して撫でるように触りだす。

 顔ちっか……俺はそんなことを思いながら気づけば優美さんの唇に目を奪われていた。俺この唇に朝キスされたんだよな……って頬だし?! べ、別に意識なんかしてないんだからねっ! はい需要のないツンデレ要素が失礼しました…… 

 俺が頭の中で雑念を振り払うのに必死でいると優美さんは穏やかな笑みを浮かべながら


 「だってドキドキしたってことは私のこと「女」としてみてくれてるってことでしょ?」

そんなことを言ってくる優美さんの表情は告白の時と同じようにお姉ちゃんの顔じゃなく「女の顔」だった。俺はさらにドキッとして顔を逸らしてしまう。

 「そ、それは……」

 言われてみればここ二日の優美さんの異常なまでのアタックにより確かに以前よりは意識するようになっている。だけどここまでされたら恋愛感情関係なしに意識するのが普通じゃないの……? それとも俺が女絡みなさ過ぎるからってだけ? 

 俺が口籠っているとタイミングよく予鈴のチャイムが学校に響き渡る。

 何事もなかったのようにすぐさま離れて「じゃあ、授業終わったら連絡するね。待ち合わせは玄関で! じゃあ後でね〜」とそそくさと先に行ってしまった。


 「はぁ……本当このままじゃ身が持たない。てか優美さんこういうの手慣れてるよな……はぁ魔性の女怖っ」



 



 優美side



 「あぁぁぁあ! 攻めすぎた! 完璧に攻めすぎた! あれじゃただの肉食女だよ……絶対手慣れてるとか思われたよね……? もぉぉおネットに書いてある事を鵜呑みにするんじゃなかったよぉ……」

  私は授業が始まるなりさっきの自分の恥じるべき行為を懺悔していた。にしても春樹くんの動揺してドキドキしてるあの表情……たまらんかったなぁ。ってダメダメ! そういうことじゃないの! いやでもやっぱり思い出して……あぁ! にやけが止まらない……!

 私は心の中で身悶えながら春樹くんのことを考えてまた胸の鼓動が早くなる。だってこんな風に春樹くんと話せるのが夢みたいで現実感がないんだもん。早く授業終わらないかなぁ。

 


 

 

 



 


 

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