第6話 波乱の予感
「ほら〜起きて? そろそろ朝だよ?」
おかしい。何で優美さんの声が俺の部屋なのに聞こえてくるんだ? あっそうか夢か。まぁ最近優美さんとは色々あったから出てきたのか。まぁもう一眠りすれば覚めるだろ……
「もーっ! 二度寝する子にはこうだっ! えいっ!」
俺がまた眠りにつこうとすると、なんだろう顔に柔らかい感触が…………ん? 何か息苦しいんだけど……?! 俺は勢いよく酸素を求めて起き上がった。するとそこには制服の上からエプロンを着ておたまを片手にしている優美さんがいた。
「もーっお寝坊さんなんだから早く起きないと学校間に合わないよ?」
いやそのスタイルでそのセリフはもうど定番ラブコメとかギャルゲーに居そうなヒロインだよなほんと……てかさっきの感触……まさか、おp……いやいかんいかん。そんなことより聞くことがあるだろ!煩悩は捨てろ俺!
「いや何で俺の部屋にいるんですか……」
「えっ春樹くんの顔を見たかったから……?」
優美さんは小悪魔のような笑みを浮かべてそんなことを言ってくる。この魔性の女め。ちくしょう確かに可愛いけどさ、おかしいだろこの状況。
「いやそんな風に言われても騙されませんからね……もう一度聞きます。何で居るんですか」
俺が呆れ口調で言うと優美さんはぶぅっと頬を膨れさせて「春樹くんの意地悪」と言いながらも経緯を話し出した。いや意地悪と言われましても……
「春樹くんのご両親って共働きで朝も忙しいじゃない?」
「そうですね。朝とかも俺基本食べなかったりコンビニで買ってから行きますし」
「そこで私は閃いたのです!」
優美さんは腰に手をついて俺におたまを向けて探偵のように閃いた的なノリでドヤ顔をする。朝から元気だなぁ……
「私がどのみち春樹くんのお昼ご飯もこれから作るんだから朝ご飯作るのも変わらないんじゃないかって」
ん? なんだろうこのデジャブ感。昨日のお昼にもこんなこと聞いたような……
「それでまた春樹くんのお母さんに相談したら「ぜひそうして! なんなら夜ご飯も!」って言ってくれたの!」
母さん余計なことを……忙しいのは分かるけど少しは遠慮って言葉を覚えろよ……
「だから私はこれから実質的に春樹くんの家に通い妻になるわけです!」
「か、か、通い妻?!」
俺は優美さんの発言に動揺してしまう。いきなり妻とかしかも通い妻って……カップルでもないのに。てか優美さん俺に告白してきた時はこんな感じじゃなかったやん……まさかこんなグイグイ系だとは。
「どうしたの〜照れちゃったっ?」
「照れるというより正直、頭の整理が追いつかないってだけです……」
「大丈夫! これから慣れてくから! ねっ! じゃあもう朝ご飯できてるから着替えたら下降りてきてね? あっ、なんなら着替えの手伝いしてあげよーーあっ、ちょ、ちょっと押さないで! あっ! 」
俺は優美さんが言い切る前にさっさと背中を押して自分の部屋から出した。
「いや、美香に振られてからそのお姉ちゃんにお世話してもらうってなんか複雑だよな……」
俺が溜息をつきながら愚痴を溢すと、玄関の方からドアが開く音がする。優美さんなんか忘れ物したのかな?
俺はとりあえず着替えて1階のリビングに向かうと、そこには俺の最愛の幼なじみで見事に失恋をかました美香がテーブルに座っていた。
「み、美香……」
「あっ、おはよう春樹」
美香はまるで何事もなかったかのように告白する前のトーンで俺に挨拶してくる。振った側は気にしてないってこういうことなのか……
俺は重い足取りで美香の向かい側に座り、恐る恐る話しかけてみる。
「な、何で俺の家にいるんだよ」
「お姉ちゃんが春樹のお世話してるから私はお姉ちゃんを求めてここにきただけ」
「あぁそういうことね……」
お姉ちゃん大好きっ子だもんな。そりゃそうなるか。だけど何で普通のテンションで振った幼なじみの家に上がれるんだよ。俺ってそんなみじんこ程度の存在だったの? それだったらまじ無理リスカしょ…………自分で言っててキモいなこれ。
俺が頭の中で思考を巡らせると優美さんがキッチンから味噌汁とご飯をお盆に乗せて持ってきてくれた。
「はい。これ春樹くんの」
「あ、ありがとうございます」
「ねーお姉ちゃん私のは?」
美香が携帯をいじりながら優美さんに聞くと、優美さんは妹に接する態度とは思えないような冷たい声で
「……それくらい自分でやりなさい。あんたももう高校1年生でしょ」と言って優美さんは俺の隣に座り、「いただきます」と言って黙々と食べ出した。美香は優美さんの言葉を聞いて「そっか……そうだよね」と悲しそうな表情をしている。
あ、あれ? この二人仲良かったよな? なんか優美さんめっちゃ美香に敵対心向けてない?! しかもとてつもない修羅場なんだけど俺。告られたお姉ちゃんと振られた幼なじみに挟まれて俺地獄なんだけど?!
「あっ、じゃあ俺が取ってくるよ」
俺は気まずさのあまりとりあえず席を立ちその場から離れようとすると「いいよ。甘やかさなくて」と優美さんが俺の手を掴み立つのを止めた。
すると美香は黙って立ち上がり家から出て行こうとする。その時の美香の表情はとても悲しそうで俺は急いで美香の後を追った。そして玄関の前で美香を呼び止める。
「おい美香。お前一体優美さんと何がーー」
「春樹が悪いんだよ全部……」
美香はドアの前で立ち止まってかすれるような小さい声で言い出て言ってしまった。
「……どういうことだよそれ」
俺は美香の発言の意味が全くわからずその場で立ち尽くしてしまった。
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