2020年6月24日

 人を信じるのは難しい。とりわけ距離(この場合物理的或いは精神的距離は問わない)が離れている人間に対して、猜疑心が際限なくこんこんと湧き上がるようで、気付けば誰かが自分を貶めようとしているだとか、自分がいない場所で酒の肴に嘲笑されているだとか、だいたいこういうような証明のできないパラノイアがこもごもに頭の中を渦巻くのである。


 そういうときは風呂だったり散歩だったり料理だったりをするのが良い。手や足を単調な作業に就かせることは、精神を分散させてちょっといい感に平らに均す。寝たり本を読むのはダメだ、こういうのはパラノイアの始まった脳をより刺激して盛り上げてしまう。


 距離の離れてしまった友人たち、元友人たち、そしてそのまま離れていってしまった人たち、そういう人たちと会うことがなくなったというのに、ときどき箱から取り出すように思い出しては昔のことを考えて、あのときどうするべきだったのかとか、詮無きことを思う。


 今日という日がそういう思い出の延長線上にあるというのは、何とも心許ないようで不思議な気がする。私自身、この干からびたような日々がまた何処かで熱を帯びて、その熱に浮かされて人々が踊ってくれる日が来てくれれば良いと願っている。


 尻を掻きながら寝ている場合ではないのだ。

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