2020年5月24日

 今日も今日とて殆どの時間を寝て過ごしたのだが、その理由が朝日が登るまでゲームをやっていたからであって、完全に自己責任による生活リズムの乱れであった。眠りの質もあまり良いものではなく、多く夢を見て、そのどれもが面白くないもので起きてもひどく疲れていて、なかなかベッドから出ることができないという始末である。


 そうしているうちに夕方近くなり、日が少し傾いた時分にようやく起き上がって、歯を磨き顔を洗うと、スーパーへ食料品を買いに出かけたのである。というのも冷蔵庫の野菜室が綺麗サッパリとなくなってしまったので、買い足しに行く必要があったのだ。


 我が家の冷蔵庫は肉類が何故か残りやすく、野菜は次々に姿を消してしまう。私は野菜も好きだが、肉のほうが多く食べたいというような人間だからこれはおかしい。野菜が自然とどこかに消えていると思ったほうが合点がいく。そのような原因不明の不思議のせいで、私はよくスーパーへ行く必要に駆られるわけだ。


 スーパーへと行く道すがら、ふと見ると小さな木の枝に洋蘭一輪咲いている。私は花の名に詳しくないから、それがなんという花の名なのかわからずも興味を惹かれて観察してみると、それは洋蘭などではなく、なんとより珍しいアンケル ヴァニラ ランモドキ(Orchidiopsis rapax)だった。


 トビハナアルキ類ランモドキ属であるこの生物は花びらのように平たい鼻器にヴァニラの香りのする分泌物を塗りつけて、昆虫類を誘い捕食するという。昔本で読んだことのある珍しい生き物なのでよく覚えている。


 基本的にはハワイはミタディーナ島で生息している生物のはずなので、誰かが飼っていたものが逃げ出したと考えるのが妥当であろう。非常に興味はあったが、生物に触れることに多少の恐怖心があるため、捕まえることなどはせず、iPhoneでこれを何枚か撮影して好奇心を満足させた。


 珍しい生物を見つけたことに興奮しすぎたせいか、ネギを買うのを忘れてしまった。

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