第2話 暴落と懲りない人々02
みなさんは、FX(エフエックス)というのはご存じだろうか?
ものすっごく簡単に言うと、「通貨の先物取引」で、例えば「米ドル円」だと、米ドルが上がる下がる・日本円が上がる下がる、といった具合に、「価格が変動」する。
株と同じように売買益を狙えるが、株との最大の違いは「自己資金の25倍、レバレッジ(借金)をして投資ができる」、というハイリスクハイリターンを地で行く商品であるということだ。
今回はそのFXヘビーユーザーである、「カトウさん」にご登場いただこう。
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「いやぁ、こんだけボラがあるとやりやすいっすねー」
「ボラ」とは「ボラティリティ」の略語で、「変動率」のことを指す。
投資の短期売買というのはものすっごく乱暴に言うと、「上がるか、下がるか50%ずつ」である。世間はこれを「投機」言って攻撃するが、「そういったギャンブルである」と割り切ったうえで行うなら、そう悪いものでもない。
実はこの投機、市場価格の形成にも役に立っているなくてはならないものなんだが、今回はそれが本題ではないので割愛する。
「ハイリスクハイリターンを地でいってますからね。っというわけで、先月分の投資レポート、いただけますか?」
ここでいう投資レポートとは、顧客であるカトウさんがどのような取引をしたのか?またどのように利益確定・損失撤退をしたのかの記録である。第三者がこれを確認することで、「普段の勝てている取引から外れたことをやってしまっていないか」、ダブルチェックすることで、投資リターンの安定性を図るという意図がある。
「はいはい。ちょっと社長に相談なんですが、大きく損を出してる取引がいくつかあるんですよねー」
「なるほど?なるほど??」
確かに、レポートにはそんな取引が何件か記録されている。
「そーなんですよー。トータルでは勝ててるんですけど、こういうのが続くとですねえ」
「んー・・・見た感じ、損失をバシッと認めて撤退しなかったのが理由っぽいですが、なんかあったんですか?」
「いやぁ、ロスカット狩りがきつくてついつい。」
ロスカット狩りとは、「○○円になったら撤退する」というロスカットを「狩りとる」取引をさす。近年のAI取引普及の影響で、こういったロスカット狩りが年々増加している。いま、こういった状況を念頭に置いて映画「ターミネーター」を再視聴すれば、いろいろ視点が変わること請け合いであろうと思われる。
何にせよ、リスクを恐れてマイルールを変えるというのは良くない。
「選択肢は二つですね。相場状況に合わせてカトウさんの取引マイルールを調整するか、ロスカット狩りが許容範囲で発生するのを承知で回し続けるか」
「やっぱその二択ですかね?」
「もうひとつ。自分にとって不利なフィールドで無理に戦う必要はないので、取引をいったん完全にやめて、アロハでもきて南の島にでも飛ぶかですね」
「妄想バージョンのジベールばりに、イケメンになれますかね?」
「知ってます?人の夢と書いて、儚いって読むんですよ?」
「冗談きついですねw」
「お互いにw」
こうやって軽口でもたたかないと、かたっ苦しくていけない。
まぁもっとも、冗談が時に冗談でなくなるのが、金融経済というものであるが。
「まぁ、冗談はさておきー・・・釈迦に説法ですがカトウさん、普段と違うことをやるってのはそれなりにリスクがあるんで、その辺留意の上での行動決定をおすすめします!」
「了解です!僕は、リーマンショックで痛い目見た口なんで、大丈夫ですよ!」
そう願いたいものである。
人の夢にならなければよいのだが。
とはいえ皆様が何となくお察しの通り、このカトウさんはセルフマネジメントができる、「セミプロ投資家」なのである。
次、不動産投資家(自称)の「フドウさん」、行ってみよう。
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